カフェラテの朝ごはん
「ろばの家」福江洋子さんvol.2
「ろばの家」の“ママろば”こと福江洋子です。11月の「器店主の朝ごはん」連載を担当させていただき、今回はその2回目。お店の営業日は毎朝バタバタで、ゆっくり朝ごはんを食べられた記憶がほとんどないのですが、どんなに忙しくても、遅刻して開店準備が間に合わないような時ですらも、欠かさない朝の儀式。それは夫の“パパろば”が淹れてくれる一杯のカフェラテです。
「ろばの家」には小さなカフェスペースがあり、お買い物しがてら、ひと息ついていただくことができます。ドリップコーヒーはなく、コーヒーメニューはすべてエスプレッソがベースです。お店のエスプレッソマシーンは60年代のアンティーク。「Faema(ファエマ)」というイタリアのメーカーの名機「E-61」というモデルです。エスプレッソに使っている豆は、イタリアはヴェローナにあるジャマイカ・カッフェ焙煎所のオリジナルブレンドで、実はここのオーナーのジャンニ・フラージ氏が最も愛するマシンが「Faema E-61」なのです。古いものなので、これまで幾度もポンプなどが故障し大変な思いもしてきましたが、昔の機械は構造自体はシンプルで頑丈なもの。修理や調整を繰り返しつつなんとか危機を潜り抜けてきた、とても愛着のあるマシンです。
それが本当にマシンの性能によるものなのかはわかりませんが、確かにエスプレッソはイタリアで飲むのと同じか、それ以上の味がする気がします。もちろん、豆の質と焙煎によるところも大きいと思いますが、淹れる人の腕も問われます。パパろばは、若い頃カフェで働いていた経験があり、短期間ですがバリスタの講習を受けたことがあるのです。その日の豆の状態を見て手でプレスの圧力を変えたりしているので、ちょっとわたしには真似できそうにありません。「ろばの家」でエスプレッソやラテを頼む方は、店番がパパろばの時を狙うのがおすすめです。
メニューはエスプレッソ、カフェラテのほか、お店で茶葉を販売している「Uf-fu(ウーフ)」さんの紅茶などがあり、作家さんのマグカップや漆のカップで提供しています。カップはエスプレッソマシンの上部で温めておくため、使うのは常時6~7種類ですが、時々メンバーを入れ替えて気分を変えています。
朝、たっぷりラテを飲むときによく使うのは、写真手前中央 村上雄一さんの湖水マグ、右奥の持ち手が大きい壷田亜矢さん&壷田和宏さんのびょーんマグなど。
漆コーヒーカップ 白溜め:小林慎二さん(左が2年使用、右が同色の新品)
漆のコーヒーカップでお出しすることもあり、皆さんいざ飲もうとするとその軽さに驚かれるようです。漆は保温性が高く、唇に吸い付くようなや柔らかい口当たりと、結露しにくい点からも、温冷問わず飲み物には最高なのです。使い込めば込むほど透明度が増し、透き通るような明るい色合いに変化してゆくところも漆の楽しみのひとつです。この漆のコーヒーカップは茨城県鹿嶋市の小林慎二さんによるもの。漆離れが進む現代に、より身近なアイテムとして日常使いできるものをと、定番で作るようになったシンプルなデザインです。
わたしが毎朝選ぶのはダブルショットラテが入る大ぶりのカップで、夏でも冬でもホット一辺倒。朝、このたっぷりのカフェラテで身体を温め、甘いものをちょこっとでもつまめば心も身体も大満足です。逆にそれがないといつまでもボーっとして始動できません。わたしは大の甘党で、イタリアの典型的な朝食であるカプチーノと甘いパンやクッキーだけ……カフェインと糖質で脳を目覚めさせるという、身体に悪そうな習慣から抜け出せないのです。
ショートブレッド:Cookie.Gさん
スクエアプレート:鯨井円美さん
鎬カップ、ソーサー:加藤かずみさん
実は『おやつの時間』という企画展が、先週終了したばかり。毎年秋に開催しているティータイムに使えるうつわとお菓子の展示です。普段はお店に並ばないお菓子がたくさん届く“危険な”企画でもあります。今年は料理家の岸本恵理子さん、目黒のCookie.Gさん、笠間のcayaさんにお願いして、20種類以上の焼き菓子やプリンを並べていました。撮影と称しては何かしら試食できるので、毎年ものすごく楽しみにしているのです。
この期間は朝ごはんどころか、朝昼晩お菓子しか食べないような日もあるという、スイーツ三昧の日々。そしてなぜかこの時期に限って、手土産でさらにお菓子をいただくことが多く、そうなるともう三食+おやつで、一日四食お菓子という恐ろしい日まで出てきてしまいます。だんだん飽きてきそうなものですが、間にちゃんと塩味のおやつも挟んだりしているので平気なものですよ。
マルコ・デ・バタサンド(「おやつの時間」限定品):Cookie.Gさん
砂鋳込み楕円鉢、カップ、小皿:渡辺隆之さん
おやつというものは、その響きだけでも心が躍るものですよね。仕事や勉強を中断できる上に、食事以外に何かを食べることができる。こどもも大人も等しく、もともと楽しみであるはずの時間なのです。そこへお気に入りのうつわを合わせてさらに気分を盛り上げちゃおうという企画なのですから、テンションが上がらないわけがないのです。ああ、写真を見ていると、あのフワッと軽いバタークリームの食感がよみがえってきそう……。思い出すだけでシアワセな気分になれます。
この、そこらへんでとってきた葉っぱや河原に転がっている石のような、独特のテクスチャーを持つ印象的なうつわたちは、静岡県伊豆にお住いの渡辺隆之さんの作。「おやつの時間」の企画展中、定休日を利用して訪問した際に選ばせていただいたものです。数日後、恐ろしく丁寧に梱包されて届いた箱から出したばかりの、ほっかほかの新着。「ろばの家」では初登場です。HPでもご紹介していますので、この他の作品たちも見ていただけると嬉しいです。そしてぜひ、店頭で実際に作品に触れてみていただきたい。そのなんとも表現しがたい不思議な存在感のなさ……空気のように、静かな水の流れのように……心地よく漂う感覚を、皆さんはどうとらえるのかが楽しみでなりません。
なんだか朝ごはんという内容から、相当脱線してしまったみたいですね。張り切りすぎて随分長くなってしまいました。いつもこうなんです。お店で試食してもらった料理のレシピを聞かれ「HPにレシピを載せていますよ」と教えると、後日「見つけられなかった」と言われることが多いのです。あまりに長い前置きの文章に、いつまでスクロールしても肝心のレシピにたどり着けずあきらめたと……。あ、また脱線してしまいました。それではまた来週!
茨城県つくば市天久保2-11-1 コーポりぶる1F
TEL:050-3512-0605
営業時間:9:00~18:00(展示会中は12:00~18:00)
定休日:月・火曜(イベントなどで変更になる場合があるので、インスタグラムなどで確認のうえご来店ください)
http://robanoie.com
オンラインショップ https://68house.stores.jp
Instagram「@robanoie」
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