心を伝える、美しき和紙「榛原(はいばら)」
●江戸時代から和紙のある暮らしを提案
手紙を書くことがとても好きです。相手のことを思いながら、白い紙を前に一文字を書きはじめるときの心地よい緊張感。ちょっとワクワクした気分をさらに高めてくれるのが、榛原(はいばら)の美しい便箋やかわいいハガキです。
木版手摺りと刷毛引きの手法でつくられた「色ふちレターセット」(1,200円)/©HAIBARA
江戸は文化三(1806)年に創業。滑らかで光沢のある雁皮紙を江戸の人びとに広めた店として知られています。“和紙のある暮らし”を提案する榛原には、和紙や和紙小物、奉書や水引、金封などの紙製品がずらり。たくさんの便箋やハガキのなかでも、幕末から大正にかけての榛原製品の図案はとても人気あります。
●粋から浪漫まで織り込んだ復刻シリーズ
幕末から明治にかけては柴田是真や河鍋暁斎、大正のころは竹久夢二にも作画を依頼。彼らの絵を取り入れた商品は、当時とても話題になったそう。特に美人画で知られる夢二と榛原の四代目店主の親交は深く、ほかでは見ることが少ない花や果物、風景などを描いた図案が店には多数残されているとか。大正時代には絵封筒になった夢二の作画は、今では愛らしい一筆箋として復刻されています。
さらに「木版手摺りのよさを広く伝えたい」との想いから、木版手摺りのハガキや便箋なども手掛けています。私のお気に入りは、桜、麦、竹を描いた「夢二の旅」という木版手摺絵ハガキ。絵柄の美しさはもちろんですが、手に触れたときの風合いがなんともあたたかいこと。このハガキは、言葉以上の想いを伝えてくれる気がします。
●使い勝手抜群、巻紙発想の蛇腹便箋
筆まめさんにぴったりなのが、2012年にグッドデザイン賞を受賞した「蛇腹便箋」。蛇腹状の便箋は、各折り目にミシン目が入っていて、好きなところで切り離せます。ひと言ならば一枚だけ、思いを込めた長い手紙には何枚も、と巻紙の仕様でつくられた便箋は使い勝手抜群です。
蛇腹便箋は封筒とセットで販売。吉祥模様のパッケージは、ちょっとした贈り物にも。かわいい「跳びうさぎ」や「千鳥」、モダンな「千代見草」(500円)。
書き損じが多い私は、新たな一枚から書きはじめずにすむのがうれしい(笑)。そういう意味では、時代をとらえたエコ便箋かも。縦書きのみでしたが、数年前に横書きが発売。レトロモダンな横書きデザインも好評だそうです。
横書きタイプは便箋がやや厚めなのでカード風に使える(700円)/©HAIBARA
もうすぐ師走、江戸の粋、明治のモダン、大正の浪漫を織り込んだ、美しい便箋やハガキで今年のごあいさつをしてみませんか?
*商品すべて税抜、2018年11月現在のものです。
☏03-3272-3801
営業時間 10:00〜18:30(月〜金曜)、10:00〜17:30(土日曜)
休日 祝日、年末年始
https://www.haibara.co.jp/
Profile
森有貴子
編集・執筆業。江戸の老舗をめぐり、道具と現代の暮らしをつないだ『江戸な日用品』を出版、『別冊太陽 銀座をつくるひと。』で日本橋の老舗について執筆(ともに平凡社)。落語、相撲、歌舞伎、寺社仏閣&老舗巡りなど江戸文化と旅が好き。江戸好きが高じて、江戸の暦行事や老舗についてネットラジオで語る番組を2年ほど担当。その時どきで興味がある、ひと・こと・もの、を追求中。江戸的でもないですが、instagram morissy_edo も。
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