日本からフランス、そしてフランスから再び日本へ Vol.1 パトリス・ジュリアンさん
「ル・クルーゼ」の鍋や南仏プロヴァンスのハーブを初めて知ったのは、パトリス・ジュリアンさんの本だったという人も多いのでは? そんなパトリスさんが、一時帰国していたフランスから4年半ぶりに再来日。一昨年の2月から、日本を拠点に活動を再開しています。
「日本からフランスに引っ越すとき、オープンハウスでほぼ全部のものを手放しました。そしてまた、日本に来るとき、フランスで揃えたものは手放すか一部実家にキープして、持ってきたのは最低限のもの。2度の引っ越しで、多くのものを手放したからこそ、本当に大事なもの、心地いいものがはっきり見えてきました」
もともと外交官として3年から6年というサイクルで各国を渡り歩いてきたパトリスさんは、ものを手放すことに対してまったく抵抗感がないのだと言います。
「手放すということはゼロに戻るイメージ。リセットすることなので、悪いことじゃない。そもそもすべてのものは私の持ちものではなく、あくまで借りもの。どんなに素晴らしいものでも、返すときが必ずきます」
とはいえ、借りものだからといって何でもいいわけではなく、ものを選ぶときには、当然パトリスさんなりの美学がありました。
「ものにはそれぞれ風土に似合ったものがある。例えばアフガニスタンで揃えたものはタイに持って行っても似合わないし、タイの家具は日本の暮らしにはそぐわない。その土地のライフスタイルに合ったものと暮らすほうが心地いいし楽しい。それが私の美学です。小さなことでいえば、ワインならワイングラスで、ビールならビアグラスで飲みたい。そのほうが美味しいし気持ちいいでしょ? そこにこだわらない人もいるけれど、それはいい悪いということではなく、美意識の問題なのです」
『暮らしのおへそvol.21』より text:和田紀子 photo:馬場わかな
Profile
パトリス・ジュリアン
1952年モロッコ生まれのフランス人。1988年にフランス大使館文化担当官として来日。東京日仏学院副院長を経て、複数のレストランのオーナーシェフを務めた後、「パトリス・ジュリアン・ライフスタイルデザインオフィス」を設立。2010年よりフランスに一時帰国していたが、2014年2月、4年半ぶりに再来日。日本を拠点に活動を再開した。www.patricejulien.com
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