自分を知った大人服 森脇ひろみさん ギャラリー「モリス」勤務
好きな生地で
好きな形に仕立ててもらう
オンリーワンのおしゃれを
会うたびに、ハッとする着こなしで、おしゃれの上級者っぷりを感じさせる森脇さん。さぞかしいろいろな服に袖を通してきたのかなと思いきや……。「いや~、私はめったに洋服を買わないんですよ」と笑います。スカートはご自身で縫ったもの。ジャケットは、生地を選び、知り合いのパタンナーさんに作ってもらったもの。
「仕立てるといっても、上質なのにお手頃価格の生地を見つけて頼むから、リーズナブルなんですよ」と教えてくれました。
古くから、貿易港として栄えてきた神戸市海岸通の真ん中で育ったそうです。当時から背が高かったので、自分の着丈に合うように、洋服は知り合いに縫ってもらっていたのだとか。
38歳のとき、病気でご主人をなくし、器の店をオープン。2人の娘さんを育ててきました。54歳になったころ、娘さんたちが留学したイギリスで「私も暮らしてみたい」と渡英したといいますから、その決断には驚くばかりです。
「夫は生前『好きなことをしたほうがいいよ。そして僕を髪結いの亭主にしてよ』と語っていました(笑)。それなのに、あっという間に逝ってしまって……。人はいつどうなるかわからない。好きなことはすぐにやらなくちゃ、と思うようになりました」
帰国後は店舗を持たずに、あちこちで器の企画展を開催。そして、2年前に娘の今日子さんが、器をはじめアートなどを紹介するギャラリー「モリス」をオープンしました。今は時折お店に立って、その手伝いをしています。今年68歳。でも「自分の年齢なんて考えたこともありません。私、スーパーポジティブなんです」と笑います。
今日子さんと、まるで友人のように洋服談義に花を咲かせたり、「あの店がおいしい」「あの美術館の展示がいいらしい」と聞けば、持ち前の行動力で、ピュッと出かけたり。
そうやって心をワクワクさせるものに出会い、見て、触れて、感じたものによって磨かれたアンテナこそ、森脇さんのおしゃれの源泉のよう。時には悲しいこともあるけれど、「いいこと」だけを拾い上げ、自分のポケットに入れて歩き続ける……。そんなハッピーな連鎖が、年を重ねるごとに美しくなる秘訣なのだと教えていただきました。
photo : 和田直美 text : 一田憲子
『大人になったら、着たい服 2016春夏』より抜粋
Profile
森脇ひろみ
短期大学を卒業後、結婚。38歳のときに陶器の専門店をオープン。54歳で店を閉めイギリスで2年半を過ごす。帰国後は器展などを企画、プロデュース。2014年より、娘の今日子さんが立ち上げたギャラリー「モリス」を手伝う。
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