管理栄養士に聞いた「60歳からの料理の10か条」【後編】
管理栄養士、医学博士として、食と健康を長年研究してきた本多京子さん。同世代の女性に提案したいのは、毎日の料理に対する考え方をこれまでと少し変えることなんだそう。今回は、栄養バランスのいい料理を楽しく作る、10のコツを教えていただきました。
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7か条
料理は誰かのためではなく自分のために
いつまでも楽しんで台所に立ち続けるために
ずっと専業主婦だった方は特に、夫が亡くなったあと、急にやる気をなくしてしまうことが多いと耳にします。子どものため、夫のためにと心を込めてごはんを作り続けていると、その〝誰か〞がいなくなった途端、料理を面倒に感じてしまうようなのです。そうならないよう、日々の料理は〝自分のため〞と思って作るようにしてみましょう。それだけで、気持ちが前向きになるし、脳の活性化にもつながります。
また、楽しく料理をしていれば、自然と食についての情報にも敏感になりますよね。おいしいものの話は、性別や年齢に関係なく盛り上がれるテーマ。より多くの人と、おしゃべりを楽しめるようにもなりますよ。
8か条
簡単だしを常備
ストックがあれば、すぐに一品プラスできる
だしがあれば、さっとスープができたり、煮物に使えたりと献立が豊かになります。そこでおすすめなのが、簡単だしをペットボトルに常備しておくこと。作り方は簡単。500㎖サイズのペットボトルのミネラルウォーターに、昆布5g (5×8㎝くらいを細くカット)、かつおぶし5g(ミニパック1〜2袋。煮干しや干ししいたけでも可)を入れて冷蔵庫に。ひと晩でおいしいだしができます。使う時に一からだしをとらなくていいのでラクですよね。使わなかったぶんは、ペットボトルのまま3〜4日間、冷蔵庫で保存できます。使い切ったら、昆布とかつおぶしを取り出し、水とともに鍋に入れて煮立てれば、二番だしがとれますよ。
9か条
たんぱく質は積極的に
60代は野菜より肉や魚の量に注意
「栄養面でこれから何に気をつけたらいいですか?」という質問をよく受けます。でも、中途半端な知識で判断するのはとても難しいのが栄養です。ですから私は「いろいろな種類の食材をまんべんなく食べることが一番です」と答えています。
積極的にとってほしいのは、野菜よりもたんぱく質。60代くらいの方は、野菜は元々たくさんとる習慣があるので、あまり心配はいらないのです。それよりもたんぱく質。加齢で筋肉量が低下する〝サルコペニア〞を予防するためにも、たんぱく質の摂取と適度な運動が大事。肉や魚、卵はもちろん、豆腐や豆などをしっかり食べるよう意識してくださいね。
10か条
総菜はアレンジして
家庭の味に近づけるため
ひと手間かけて薄味に
今はレトルトでも様々な総菜が売られていますね。保存性が高く、買いおきがきくので、買い物に出かけられない時のストックとして、とても便利。ただし、そのままだと味が濃いので、アレンジして使うのをおすすめします。たとえば、レトルトのきんぴらごぼうなら、薄切りにしたれんこんと一緒に炒めたり、細かく刻んで酢飯に混ぜてちらし寿司にしたり。また、根菜の炊き合わせのレトルトは、だし汁に入れれば具だくさんの根菜汁になります。
こういったアレンジは、長年料理をこなしてきた、私たちの世代向け。基本を知っているからこその〝大人の手抜き術〞なのです。
「“これから”の暮らしと食卓」より
illustration:はまだなぎさ text:鈴木麻子
Profile
本多京子
管理栄養士、医学博士。健康や栄養を考えたヘルシーレシピを提案。食育、スポーツ選手への栄養指導など活動は幅広い。著書に『60代からの暮らしはコンパクトがいい』(三笠書房)などがある。
肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。