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まだ見ぬ美しい‟色”との出会い三笘修さんの器

今日のひとしな

2020.05.02

～「岡の」より vol.2 ～

わが家の食卓に欠かせない、三笘修さんの器。

14年ほど前、初めて手にしてから毎年個展がある度に少しずつ集めてきました。憧れの作家さんであったので、初めてお会いした時は大変緊張しました。

一つとして同じものがない。
色、濃淡、釉薬が作る模様全部が違う。

陶芸家の作品はみんなそう、と言われるかも知れません。ですが、三笘さんの器は、全てが同じ作り手の同じ意識の下に作られていながら、そのどれもが特別な、性格というか、個性を持っているような気がするのです。

三笘さんから届いた作品を開けた時、個性ある子どもたちの顔を見るような、そんな感覚がありました。くるんである包装紙を開ける度に、小さな嬉しい驚き。

灰粉引湯呑み

普段は器を選ぶのに時間をかけない方なのですが、三笘さんの器はなんというか、同じデザイン、同じ釉薬のものでも、それぞれが見どころと愛嬌を持っているので、個展へ伺っても「これ！」となかなか決断できないのが悩みどころです。

黄石釉角皿輪花皿

黄石釉角皿（大）

円錐形の美しい器など、ロクロの仕事に見えるのですが、三笘さんの器は型による成形か手びねり。ロクロを使うことはほとんどないそうです。なんとも言えない、手で触りたくなるようなこの形は、型成形ならではのもの。

魅力の一つとも言えるのが、美しい‟歪み”。

同じ型を使っていても、窯の中で炎の仕事が加わり、そこに作家が意図した表現と想像を超えるものが生まれるのです。そのワクワクが伝わってくるようです。三笘作品のファンが年々増すばかりなのが、器を見ているとよくわかります。

三笘さんは釉薬の表現にも力を注ぐ陶芸家です。玄釉の黒色の表現の中にも、独自の表情が見られます。

玄釉五花形皿　

この、圧倒するような艶やかな黒。優美な美しい花の模様の中に、ぽつぽつとした肌が出てくることで、この器の迫力が増すのです。三笘さんの色と土の肌のバランスが絶妙だと思います。

さらに心憎いことに、輪郭にうっすらと赤味がかった色が透けて見えるのです。粒々とした土の肌の感触と輪郭にわずかに見える赤色。黒一色と思っていた一つの器から多重の表現、作家の狙い……。自分の目の前に置いて初めて気が付く美しさが見えてくるのです。

黄石釉の濃淡の魅力。

黄石釉の表現は彩り豊かです。縁の釉薬が流れていくさまが大変美しい。流れて薄くなったところと溜まりのあるところでグラデーションができ、色彩の変化が楽しめます。釉薬の流れが美しい模様を作り、自然を感じさせ、無心になって器を眺めてしまいます。

朧釉の淡く大気を纏う水色。

この水色の、グッと心に迫る美しさは格別です。朧（おぼろ）と表現されているように、大気の揺らぎを感じさせるような、ぼかしの色合いの変化が楽しめます。

水色というと、ひんやりとした冷たいイメージがありますが、三笘さんの水色は湿度があり、しっとりとした柔らかい質感を感じます。心落ち着く色合いでありながら、色の美しさだけでなく感触の柔らかさもあり、使わない時も目の触れるところに置いておきたい器です。

お料理の器としてもいつもとは違う食卓の変化を楽しむことができます。この柔らかい質感は、イカや長芋などの白の食材はもちろん、お刺身やサーモンのピンク色、人参のオレンジ、そして緑色のお野菜も、きっと様々なお料理に合う器だと思います。今、お店では茶海（中国茶の道具ですが、日本茶にもピッチャーとしても使えます）しかないのですが、様々な器でこの色の表現を見てみたいです。

確かな美しいものへ近づいていく意識と、そのための試行錯誤の時間と労力を惜しまない作家の静かなエネルギー。私たちが知らなかった、多彩な色はまだこの世にあるのです。

三笘さんの作品を通して美しい色に出会って頂きたいです。そして特別なこの器を、日常の器としてぜひ食卓で楽しんで頂けたらと願っています。

灰粉引湯呑み　径約10㎝高さ6.5 ㎝ 4,400円（税込）
黄石釉輪花皿　径約21.5㎝16,500（税込）
黄石釉角皿（大）約26.5㎝×27㎝　17,600円（税込）
玄釉五花形皿（大）径18㎝　6,050円（税込）
玄釉五花形皿（小）径15㎝　4,950円（税込）
黄石釉平碗（大）径16.5 高さ4.5㎝　6,050円（税込）
朧釉茶海　径8㎝高さ8㎝　7,700円（税込）

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