【自分を知った大人服】山下美智子さん パタンナー
自由な発想で服をリメイク。
“自分だけ”の
形や色をまとうのが楽しい
「私なんかで大丈夫かしら?」
そういいながら撮影スタジオに現れた山下さん。なのに、一旦カメラを向けると、そのポージングの見事なこと! 物おじせずに、その場の空気をワクワク楽しんでしまう……。それが、歳を重ねてなお輝き続けていられる理由のよう。
実は山下さんは、以前小誌でご紹介した、アクセサリーと洋服のお店「エミック・エティック」を営む山下公子さんのお母さまであり、仕事のパートナー。公子さんがデザインした洋服のパターンを起こし、サンプルの縫製までを手がけています。
「忙しく働きながらも、工夫を凝らしたおしゃれを楽しんでいた母の姿は、“着こなす”ということの意味を教えてくれました」と公子さんが語るとおり、若いころの写真を見せていただくと、まるで女優さんのようなおしゃれっぷり。高校卒業後、日本橋三越本店で、エレベーターガールとして働いていたそうです。手を動かすことが好きで、会社を辞めて、文化服装学院へ。既製服を縫う仕事を請け負ったり、アクセサリーショップで働きながら、2人の娘を女手ひとつで育て上げました。
「オードリー・ヘップバーンが大好きで、よく真似をしてワンピースを縫いましたね。買った服でも、襟をカットしたり、紅茶で染めたりと、何かしら自分で手を加えます。それは今でも変わりませんね」と語ります。
今、ワードローブの中心は、ご自身がパターンを引いた「エミック・エティック」のものです。今年で78歳。35歳近く年の差がある娘世代と同じ洋服を着て楽しめるなんて素敵! ストレートデニムに胸元が大きくあいたシャツ、そしてリネンコートをまとい、さっそうと歩く姿の格好いいこと!
「娘が独立して、お店を始めるといったときにも、大変かもしれないけれど、好きなことをやって輝いてほしいと思いました」と山下さん。年齢は、おしゃれを、そして人生を楽しむブレーキにはならない。何歳になっても、何を着るかは「好き」が基準。そんなしなやかさが、胸を張って、自信を持ち、歩き続ける力となっているようでした。
photo:中川正子 text:一田憲子
『大人になったら、着たい服 2016春夏』より抜粋
Profile
山下美智子
1938年生まれ。百貨店勤務を経て、文化服装学院で服飾縫製を学ぶ。その後、パターンの短期コースへ。縫製の仕事やショップ勤務を経て、15年前から、娘の山下公子さんが立ち上げた「エミック・エティック」でパターンや縫製を担当。
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