ポテトチップスの袋、畳んでいますか? ~カルビーが進める、ゴミ袋削減「折りパケ」運動とは~

暮らしのおへそ
2025.09.28

普段何気なく手に取るポテトチップス。おいしくて、ついつい手が伸びてしまいますよね。今回、ポテトチップス国内シェアNo.1の株式会社カルビーの商品に隠された、驚きの企業努力を深掘りする機会をいただきました!
きっかけは、『暮らしのおへそ』のポッドキャスト番組「暮らしのおへそラジオ」に寄せられたお便り。「ポテトチップスの袋を折ってから捨てる」というリスナーさんの習慣に興味をもった「おへそ」編集部の二人が、カルビー本社を訪ね、取材しました。


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(右)お話を伺った、カルビー株式会社 Calbee Future Labo CXチームマネジャー・関口洋一さん、(中)『暮らしのおへそ』編集ディレクター・一田憲子さん、(左)編集担当・木村


一田さん: 関口さん、本日はお忙しいなか、ありがとうございます。実は今回の取材は、「ポテトチップスの袋を畳んで捨てています」というリスナーさんからのお便りがきっかけで、「折りパケ」運動なるものを知り、ぜひカルビーさんにお話を伺いたいと企画させていただきました。

木村:プラスチックごみを切ったり、折ったりするという習慣が、リスナーさんの間で話題になっているんです。

〈リスナーさんからのおたより〉
プラごみを切って処分するというお便り、とても共感しました! 私も切ったり折り畳んだりしていますが、お便りにある通り、本当にごみ捨ての頻度もプラごみを入れるポリ袋の量も格段に減ります。
私の場合は、カルビーのポテトチップスの袋に「折りパケ」運動なる取り組みについて書かれていたのがきっかけです。ポテチの袋を折り折りしてみると、手のひらに収まる大きさになったことに小さく感激し、その後切るようにもなりました。考えてみれば、私にとっては一生続くであろう良い習慣ができた瞬間です。嬉しいことです☺︎
面倒な方もおられるかとは思いますが……。「おへそラジオ」がきっかけで、折りパケ&切りパケが広まれば嬉しいです。

関口さん: ありがとうございます。そう言っていただけて、大変嬉しいです。

お客様との絆を深める「折りパケ」運動と「ルビープログラム」

一田さん: 「折りパケ」運動は、そもそもどのようなきっかけで始まったんですか?

関口さん: もともと、カルビーはお客様との距離が非常に遠かったんです。メーカーがものを作って販売する先は小売店さんですが、その間には卸の会社さんがいらっしゃるので、お客様の声を直接聞く機会はほとんどありませんでした。そこで考えたのが、スマートフォンのアプリケーションを通じてお客様と直接繋がることだったんです。

一田さん: なるほど、お客様とのコミュニケーションを求めていたのですね。

関口さん: はい。当初は、お召し上がりいただいたお客様にポイントを付与する、航空会社のマイレージプログラムのようなものを考えていました。しかし、飲料品などによくあるQRコードやシリアルコードをパッケージに後から貼ろうとすると、製造ラインで袋が破れてしまうという問題があったんです。

一田さん: ええ! そうなんですか。製造現場ならではの課題ですね。


「QRコードを後からパッケージに貼ろうとすると、袋が破れてしまう恐れがありました」と語る関口さん。


関口さん: そこで注目したのが、もともとパッケージの裏側にあった製造管理用のコードでした。このコードを読み取れば、どの工場でいつ作られた商品かが特定できます。たとえば、あってはいけないことですが、加工の途中で異物が入ってしまったと仮定しましょう。お客様からお問い合わせがあったときに、ここのコードを教えていただければ、いつ、どこの工場のどのラインで作ったのか全部わかります。

一田さん:このコードが品質管理に繋がっているんですね。

関口さん:もともと、品質管理に使っていたものなんです。じゃあ、これをアプリで読み取れるようにすれば、お客様が召し上がった商品が特定できる、と気づきました。

一田さん: 既存の仕組みを活用する、素晴らしい発想ですね! でも、コードだけだと店頭で未開封の商品を読み取れてしまう、という問題もありませんか?

関口さん: まさにその通りです。お客様が本当に商品を召し上がったかどうかをどう判断するか、という課題が残りました。その頃、別の部署で「輸送効率を上げる」ことや「食べた後のゴミ問題」に取り組んでいたメンバーがいたんです。彼は、ゴミを減らすために袋を折りたたんで捨てる方がいらっしゃることに着目していました。

一田さん: それが「折りパケ」に繋がるのですね!

関口さん: はい。「折る=中身が入っていない=食べた」と紐づけられると考えました。さらに、袋を特定の形に折ることで、お客様がカルビー商品を食べたことをスマートフォンアプリで判断できるのではないか、という発想が生まれたんです。そうして、この「折りパケ」の形が生まれ、コードを見える位置に移動させました。折ることで、ゴミの嵩を減らすことができるので、ゴミ袋の削減にも繋がります。


赤丸で囲った【折りパケ運動】のマークがある商品が対象。パッケージの形状によって、7種類の折り方があり、特設サイトでは、動画でも解説しています。

 

 

関口さんが「折りパケ」を実演!

一田さん: 実際に「折りパケ」運動に参加した方からの反響はありましたか?

関口さん: お客様の中には、以前から袋を折って捨てていたという方も多くいらっしゃいました。日本には折り紙文化もありますし、抵抗なく受け入れられたのかと思います。カルビーでは、お客様に会社に来ていただいてインタビューすることがあるのですが、お帰りになるときに、こちらからお伝えしなくても自然と袋を折ってくださる方が多いんです。カルビーファンの間ではこの「折りパケ」がすっかり習慣として定着していることがわかって、とても嬉しく思っています。「折りパケ」の画像を読み込むためのアプリ「ルビープログラム」のダウンロード数は100万を超え、お客様との大きな繋がりになっています。

一田さん: アプリで「折りパケ」画像を読み込むと、ルビー(ポイント)が貯まるんですよね? 貯まったポイントでどのような体験ができるのですか?

関口さん: ルビープログラムは、お客様に喜んでいただくことを第一に考えております。そのため、現金化するものではなく、工場見学やファンミーティングなど、カルビーのファンの方々に特別な体験を提供しています。

木村:ファンの方と直接のコミュニケーションが生まれているんですね。

関口さん:はい。お客様が「変わらない品質」や「信頼」を大事に考えているといった声を、直接聞くことができる貴重な機会にもなっています。

畑から食卓まで~カルビーのじゃがいもへの情熱と品質管理~

一田さん: ファンの方は、おいしさだけでなく、カルビーさんの「品質」や「信頼」を重視しているんですね。

関口さん: カルビーグループには「カルビーポテト」という会社があり、じゃがいもの品種作りから関わっています。ポテトチップスに適した品種を独自に開発しているんです。

一田さん: ポテトチップスに適した品種があるんですか?

関口さん:はい。一般家庭で料理として使用される男爵(だんしゃく)やメークインは、貯蔵・保管すると、糖分が増えやすく焦げやすい品種のため、カルビーでは 焦げにくい 「ポテトチップス」に適した品種 を使用しています。例えば「ぽろしり」はカルビーポテトがはじめてポテトチップス向けに開発したジャガイモです。

一田さん: それは驚きです! おいしさを追求する上で、逆の発想で品種開発をされているのですね。

関口さん: そうなんです。国内で生産される加工用じゃがいもの約19%をカルビーが使用しており、約1700戸もの契約生産者の方々と共に、じゃがいも作りを行っています。

一田さん: 驚くほどの規模ですね。じゃがいもの管理も大変そうです。


小学校の体育館くらいの大きさの倉庫の中にじゃがいもが保管されている画像を見て、驚くふたり。


関口さん: カルビーは、創業家から受け継がれる「10プロセス」という考え方を大切にしています。これは、原材料からお客様の手に届くまでの全ての過程をきちんと管理し、やり切るというものです。そのため、じゃがいものトレーサビリティも徹底しています。パッケージに記載されたコードの一部をウェブサイトで入力すると、そのじゃがいもが「どこの生産者さんが、どの品種を作ったのか、どこの工場で作られたのか」まで分かる「じゃがいも丸ごと!プロフィール」という仕組みもあるんです。

木村: ええ! そこまで分かるのですか!? すごい、徹底されていますね。

関口さん: やっぱり加工のところだけでなく、原材料のところが大事だよね、という思いがあります。じゃがいもは、北海道だけでなく、旬の時期に合わせて全国各地の産地から調達していて、大規模な貯蔵庫で大切に管理されています。「フィールドマン」と呼ばれる担当者が生産者さんの畑に足を運び、育成のサポートも行っています。今(取材が行われた7月上旬)は、主に九州のじゃがいもですね。九州、本州ときて、最後に北海道の方へいくんです。

一田さん: 「桜前線」ならぬ「じゃがいも前線」! ポテトチップスって、私たちが思っている以上に、大地と繋がっているんですね。

パッケージの裏には、膨大な情報が隠れている!

一田さん: 普段、パッケージの裏がわって、アレルギー表示くらいしか見ないけれど、実はじゃがいもの産地や製造工程など、様々な情報が詰まっているんですね。

関口さん: そうですね。店頭でたくさんの商品が並ぶ中で、私たちの伝えたい思いがお客様になかなか届かないという課題も感じていました。だからこそ、アプリなどを通じて直接コミュニケーションを取れる場は非常に大切だと考えています。

一田さん: 今回の取材で、ポテトチップスの袋を折るという行動の裏に、こんなにも深い企業努力とお客様への想いが込められていることに驚きました。じゃがいもの品種開発から、生産者さんとの繋がりまで、カルビーさんの奥深さに触れることができました。本当にありがとうございました!


「折りパケ」運動、「ルビープログラム」の責任者・関口洋一さん。酵母をつかったパン作りが習慣で、眠れないときなど、深夜にパンを焼くこともあるそう。

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今回の取材は、リスナーさんの何気ないお便りをきっかけに、カルビーさんの知られざる企業努力を深掘りすることができました。私たちはこれからも、皆様の日常に隠された「小さな発見」を大切にし、読者やリスナーの皆様と一緒にコンテンツを作っていきたいと考えています。ぜひ、これからもご意見やご感想をお寄せくださいね。

9月28日(日)20:00~配信の「暮らしのおへそラジオ」では、一田さんと木村が今回の取材のふりかえって、おしゃべりしています。そちらもぜひ、お聴きくださいね~。

撮影:有馬貴子

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