身近な人の死はつらいもの。けれどあなたは最後まで「一人」ではない【大谷翔平も学んだ天風哲学】
今週連続でお届けしている特集『中村天風 人生の「主人公」になる教え』。新刊の中から、私たちがつまずきがちな悩みや迷いを解決する教えを5日間にわたりご紹介します。だれにも振り回されず、自分らしく生きるヒントがきっと見つかるはずです。
私たちは森羅万象と
「心」でつながっている存在
人生も中盤を過ぎると、人生の行く末がなんとなく見えてきます。一人、また一人と、身近な人がこの世を去っていき、新しい出会いも少なくなってくると、耐えがたい孤独感に襲われることもあるはずです。
そんなときは、夜空を見上げて、果てしなく広い宇宙を感じてみませんか? きらめく星が無限にあり、さまざまな惑星や衛星も無数に存在しています。そして、これらは一定の法則のもとに動きつづけ、消滅や誕生を繰り返しています。
明治生まれの思想家・中村天風(以下・天風先生)は、森羅万象を生み出したエネルギーを「先天の一気(せんてんのいっき)」と呼びました。
広大な宇宙も、この地球も、私たち人間も、森羅万象の一部です。同じ先天の一気から生まれた私たち一人ひとりの人間は、決して孤立しているわけではなく、森羅万象と「心」でつながっている存在だというのです。
「自分よりも大きな存在と
常に一緒にいる」と感じて
また天風先生は、人間と世界の関係を次のように「運河と大海」にたとえています。
「運河だけ考えてみると、水量はわずかしかないようにしか見えない。しかしあれが大海とつながって存在している現在の状態を考えてみるなら、運河は無限の水量とつながっているのだ」
人工的な水路である運河には、限られた水しか流れません。けれど、運河は必ず海へとつながり、その海は地球全体へ広がっています。そして、地球は単体で無秩序に移動しているのではなく、太陽系を構成する惑星の一つとして、宇宙とつながっているのです。
こう想像してみると、自分はちっぽけな存在かもしれないけれど、「自分よりも大きな存在と常に一緒にいる」と感じませんか? すると、孤独感が和らぎ、生きている奇跡に、感謝の気持ちが湧いてくるはずです。
生かされていることに感謝し
自立した心を持とう
天風先生は「一人でいても淋しくない人間になれ」という考えにも共鳴しています。これは、孤独や不幸を耐え忍びなさい、ということではなく、生かされていることに感謝し、自立した心を持とうということです。
人は皆、宇宙や大いなる存在とつながって生かされている――そのことに気づければ、たとえ一人でいても決して孤立してはいないのです。
身近な人の死に直面したときも、「最後まで一人ではない」という確かな感覚が、私たちの心を支えてくれるはずです。
文/堀田孝之 イラスト/村山宇希
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Profile
堀田孝之
1984年生まれ。横浜国立大学中退。日本映画学校卒業。20代のほとんどを施設警備員として過ごす。その後、いくつかの出版社勤務を経て、ライター・編集者として独立。中村天風から直接教えを受けた「最後の弟子」合田周平氏の著書『晩節の励み』を編集したのを機に天風哲学に出会う。当初はその真髄を理解できなかったが、人生経験を積むにつれて傾倒していく。難解な天風哲学をわかりやすく紹介すべく、合田氏と共にまとめた『決定版 中村天風の教えがマンガで3時間でマスターできる本』(明日香出版社)がベストセラーに。著書に『こども天風哲学』(オレンジページ)、『気がつけば警備員になっていた。』(笠倉出版社)、共著に『時をかける貯金ゼロおじさん』(KADOKAWA)などがある。
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