片岡義順さん(ジェリーデザイナー) 片岡亜紀子さん(ショップマネージャー) vol.2

ふたりのおしゃれ
2016.02.14

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子育てや

夫の仕事の手伝いのために

手放したものを思うと

ふと切なくなることも。

s-20160205_亜希子さん

 

やがて亜紀子さんは長女を出産。その頃義順さんは独立を決意。会社を辞めて、ご自身のブランド「kataoka」を立ち上げ、ショップもオープンしました。亜紀子さんは、子育てをしながら、ショップでの接客を担当することに。

 

義順——もちろん不安はありました。当時家も買ったばかりでしたし。でも、自分が我慢しながら生きていくことは、家族にとってもよくないなと思ったんです。たくさんの部下がいながら退社した上、お客様はまったく来てくれないし、オレ何をしちゃったんだろうって、落ち込んだりもしました。でも、得意の開き直りで徐々に気持ちが楽になっていって。それから少しずつお客様もきてくださるようになったんです。

 

亜紀子——お店を手伝うことになった時、自分の作品づくりを続けるのはもう無理だと、機を手放すことにしました。小さな子どもがいると、大がかりな機織りはなかなかできないってわかっていましたし……。自分ではきっぱりけじめをつけたつもりだったんですが、夫婦喧嘩をする度に、手放した機のことを思い出します。機織りに夢中だった頃の自分は、好きな音楽は何? と聞かれたらすぐに答えられたし、どんな本が面白いとか、どんなことにワクワクしたとか、いくらでも話ができました。でも今は音楽なんて全然聴いていないし、ひとりで本を読む時間もない……。40代の女性ってみんな忙しくて、子育て中は自分の時間なんてないのは当たり前とわかってはいるんですけど。忙しさがちょっと一段落してふっと息をついたとき、切ない気持ちになるんです。

 

 

僕の理想は、

商店街で

小商いをしている

老夫婦なんです。

 

s-20160205_義順さん

 

それでも義順さんにとって、亜紀子さんは妻としても仕事のパートナーとしても欠かせない存在のよう。

 

義順——あっこにしかできない接客があるんです。セールストークができないところが逆にいいんですよね。僕のジュエリーをお客様に伝えてくれるのは、あっこがいちばんだと思っています。僕は会社でも、どこかに「家業」の部分を残したいと思うんです。作っている僕がいて、マネージメントしている奥さんがいて、そして、一緒に打ち上げを楽しめるような6~7人のスタッフがいればいい。海外にもファンを広げつつ、ふたりで商店街あたりをベースに小商いをしている……それが理想の夫婦かなあ。

 

 この日の亜紀子さんは「アーツ&サイエンス」のワンピースに「ワイズ」のカーディガンでした。義順さんは「ジョセフ」のパンツにシンプルな黒のロングジャケット。きちんとした靴を履くのがふたりのおしゃれのこだわりなのだとか。結婚して、義順さんがプレゼントしたのが「アーツ&サイエンス」のワンピースだったそう。亜紀子さんは、それから1年に1着ずつ買い足すようになったのだといいます。胸元にはもちろん「kataoka」のジュエリーを。

 

 子育て、仕事、ライフワーク……。ふたりはそのバランスをまだまだ模索中のよう。喧嘩をした時は、子どもたちをおいて夫婦でおいしいものを食べに行くそうです。日常を少し離れて話をして、またいつもの日々へと戻って行く。今のふたりにとって、急いで結論を出すよりも、そうやって行ったり来たりする時間が必要なのかもしれません。

 

亜紀子——いろいろ悩むことはあるけれど、理想の夫婦のイメージは、一緒に二人乗りの自転車に乗っている姿かな。彼にはそのまま走り続けて欲しい。そして君はそっち、私はこっち、じゃ夫婦でいる意味がないと思うんです。周りの景色は移り変わっていくだろうけれど、昨日は雨が降った、今日は晴れたっていいながら一緒に走り続けられればいいですね。

 

s-20160205_片岡2

 

『ふたりのおしゃれ』より

photo:和田直美 text:一田憲子

 

 

 

Profile

片岡義順 片岡亜紀子

Yoshinobu Kataoka  Akiko Kataoka

義順さんは、1970年生まれ。ジュエリーブランドのデザイナーとして活躍した後独立。「kataoka」を立ち上げる。亜紀子さんは1973年生まれ。機織りを学んだ後作品づくりを。結婚後個展を開催。現在は「kataoka」のマネージャーを勤める。長女、長男と4人暮らし。

http://kataoka-jewelry.com/

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