身体にふれることで、ありのままの姿を観察し認識するセラピー ~今回の先生:「てあてやcokiu」香川夏未さん~ vol.3
さて香川さんから、施術の手順を伺いました。①足②骨盤と膝③腰と下腹部④腰と横隔膜⑤胸膜⑥両肩⑦胸鎖乳突筋(きょさにゅうとつきん:鎖骨と頭蓋骨の耳の後ろをつなぐ、首の太い筋肉)⑧舌骨(ぜっこつ:下あごと喉の間にある骨)⑨耳⑩顎関節⑪前頭骨(頭蓋骨のひとつで、ひたいの部分)⑫蝶形骨(ちょうけいこつ:頭蓋骨のひとつで、こめかみのあたり)⑬頭頂骨(とうちょうこつ:頭蓋骨のひとつで頭頂の部分)、⑭大脳鎌(だいのうがま:右脳と左脳の継ぎ目)⑮後頭顆(こうとうか:頭部と首をつなぐ部分) という15か所を、時にはふたつの手を横に並べて、時には両手のひらで身体を挟むようにして、当てていきます。
「田中さんの場合3番目くらいまでは、身体もとても静かだったのですが、4番目の腰と横隔膜をさわったとたん、身体に大きな変化が訪れました。ごおおおっという感じで、身体全体がゆるみ始めたのです。特に目と、あごがすごかったです」
言われて思い当たるふしがあります。昨年からコンタクトレンズを止め、メガネ生活に切り替えたのですが、いまだに裸眼からメガネ、メガネから裸眼のチューニングが下手で、いつも「視神経が凝っているな~」という感じでした。そして昨年あたりから、ストレスも関係しているのか? 夜眠っているうちに歯を噛みしめてしまうクセができてしまっていて、「何とかならないかなあ」と、自分でも思っていたところなのでした。聞くところによると、パソコンに長時間向かうような仕事はやはり、横隔膜が委縮しやすいそうです。
「横隔膜は、呼吸に使うだけでなく、耳やあごとも密接にかかわっているんです。だからといってすぐさま、『横隔膜を動かすために、常に深呼吸しなきゃ!』と気負うのではなくて、『横隔膜って、深く息をすると動くんだなあ』『肺って実は背中のほうまであって、こっちまで息を入れることができるんだ』と、自覚するだけでも、自然に呼吸は変わっていきます」。
目も、例えば目の表面で見ようと思わないで、後頭部のほうから見ようとすると、視界も広くなり、目の疲れも軽減すると言われているそうです。そんな風に、「自分の身体を意識すること」を習慣にすると、気になる症状も少しずつ変化していくと言います。クラニオセイクラルには、そんな「意識の変革」も療法の一部に組み込まれているのです。
「私はフリーダイビングをしていた時期があったのですが、海に深くもぐり、海底から海面を見上げると、まわりはしんと静かで、海面はキラキラと輝いていて、何とも言えず神聖な気持ちになれるんです。私がクラニオで人の身体にふれさせていただくとき、いつも思い描くのは、そのシーン。人の身体の奥底にはそれぞれの命の輝きがあって、その静けさや力強さみたいなものをいつもイメージしているんです」。
「ふれさせていただく」という表現を使う香川さん。彼女の中には、常に命や生命力への敬意がいつもあり、それを信じているようです。だからこそ、身体の奥底に響くセッションを行うことができるのかもしれません。確かに、あの施術を受けているときの心地よさは、温かな海や湖の水面にぽっかり浮きながら、ゆらゆら浮かんでいるようなイメージと重なります。そしてセッションを受けたあとは、深い眠りから目覚めたあとのように、身体はすっきり。そして不思議と身体の奥底から、どっしりとした落ち着きのようなものが感じられました。
クラニオセイクラルの施術のあとは、「アロマリーディング」なるものも受けました。タロットカードのようにラベルが見えない、ふたをして香りもかげないアロマオイルのボトルを4本引き抜くのですが、それぞれが①潜在意識の欲求②欲求にブロックをかけている注意点③スムーズに行動を起こすために必要なこと④未来の自分のイメージ を表しているというのです。最後はそれらのオイルをミックスしてアロマスプレーにしてもらい、それを持ち帰ることができます。
「不思議と今の自分にぴったりのオイルを選ばれているので、これから何か新しいことを始めたり、自分を見つめ直したいときなどに、おすすめです」
クラニオセラピーだけでなく、身体と心、両方から人を癒していきたい。そんな香川さんの思いから、始まったというアロマリーディングのサービス。現在はさらに西洋占星術の学びも深めている最中で、より総合的なケアを行っていくことが目標だそうです。
香川さんのゆったりとした人柄と手が、これからもきっとたくさんの人を癒していくのだろうな……そんなことを実感させてくれる、温かなひとときでした。
後日談。施術を受けた3日後、春の毒出しシーズンだからなのか(?)、すさまじい下痢と嘔吐でしばらく寝込んでしまいました。香川さん曰く、「クラニオを受けることで、毒出しが促されることはよくある」とのことで、今まで頭(理性)でふたをしていた疲れなどが、どっと出たのかもしれない……とのこと。う~む。しかし、それが終わった今、身体はいつにも増して、すっきりしている気がします。
(施術の印象は、あくまで個人的な感想であることをご了承ください)
photo:砂原 文 text:田中のり子
第1回「頭も心もとろんとろんになるヘッドマッサージ」はこちらから
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田中のり子
衣食住、暮らしまわりをテーマに、雑誌のライターや書籍の編集を行う。『ナチュリラ』(主婦と生活社)は創刊当初からのスタッフ。構成・執筆をした『これからの暮らし方2』(エクスナレッジ)が好評発売中。
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