フランス・アンティーク便り vol.2 アンティークの楽しさを伝える仕事
~ 「histoire(イストワール)」青木ともみさん
◇アンティークとの出会い
私のフランス生活のスタートは、フランス西部のブルターニュ地方でした。ブルターニュは、海があって、塩のきいたバターのお菓子やそば粉のガレットが有名です。私はそこで初めて、蚤の市の楽しさを教わりました。毎週木曜に街の中心で蚤の市があり、週末には隣町までバスででかけたり、海辺の町まで遠征したり。最初は、全くフランス語が話せませんでしたが、親切に教えてくれるお店の人の言葉をひとつでも理解したい、知らない道具の使い方やきれいなレースの年代を知りたい、さらに値段交渉もしてみたい、そんな思いから、少しずつ言葉を覚え数字の数え方を覚えました。興味を持つって凄いことです(笑)。
その後、夫の仕事の都合でアルプス地方、フランス南部、そしてパリ、といろいろな地方で暮らす機会がありましたが、どこの町や村にもアンティーク屋さんや蚤の市がありました。古いものを大切にし、それを受け継ぐという思いは、ごく当たり前のように人々の暮らしの中にあり、それを直に知る機会でもありました。海には海の、山には山のアンティークがあり、陶器の違いやカゴの使い方、気候や風土の違いは、そのまま道具の違いでもあります。アンティークを通してそれらを知ることが、とにかく楽しくて仕方ない。そんな延長線上に今があります。たくさんの人にこの楽しさを伝えられたら、そしてフランスのことを知っていただけたらいいなと思っています。
◇週末は、仕入れにでかけます。
さあ、今週末はどこをまわろう。雑誌やインターネットなどで蚤の市の開催情報をチェックします。もし、旅行でフランスの地方へ行くという場合でも、県別・地方別に情報が載っているので便利です。ちなみに、8月のパリは蚤の市の出店者さんたちもヴァカンスに出てしまうことが多く、逆に海辺やリゾート地、南仏などでは蚤の市が多く開催されています。パリで蚤の市が多いのは春と秋で、朝から蚤の市を何か所もはしご、なんて日もあります。
◇今週末の仕入れ品
自分が素敵と思えるものを、たくさんの物の中から選ぶというのは、意外と集中力が必要です。蚤の市の中にはガラスを扱う人、シルバーを扱う人、またレースやリネン類をたくさん持っているマダムなど、それぞれ得意としている物を扱う専門店のようなブースもあるので、もし欲しいものが決まっている場合は、そんなブースを見つけながら歩くといいかもしれません。
この日は、リネンとジャムビンを同じマダムからまとめ買い。ガラスのお皿とクリスタルのグラスは、ガラスものをたくさん扱うおじさんから。カゴは編み方が美しくて、ひとめぼれ。
◇商品になるまでの大事な作業
仕入れたものは、汚れをとったり洗ったり、磨いたり、ときには修理したりします。日本でも生活の知恵として、いろいろな方法がありますが、フランスにも同じようにおばあちゃんの知恵袋的なものがあって、時々蚤の市の出店者さんに教えてもらうことがあり興味深いです。今日は、たくさん仕入れたガラスビンを、粗塩とビネガーで洗います。こうした作業を経て、ようやく商品として送り出せるのです。
◇インターネットがあるけど、専門書
仕入れたものの年代や窯元や用途などなどを知るために、ついつい本を買ってしまいます。専門書ではありますが、写真が多くて見やすいものも多いです。ほしいものがたくさん載っているので見ているだけでも楽しめます。アンティーク好きだけでなく、アンティークってどんなものがあるの?という方にもおすすめです。
◇パリで見つけたフレンチアンティーク、おすすめ商品のご紹介。
フレンチアンティーク、ヴィンテージ、といっても時代もジャンルもいろいろあります。ひっくるめてフランスの古いもの(笑)、おすすめ商品をいくつかご紹介します。
・クリスタルのグラス
1900年代初めのものです。花の模様は、ハンドペイントです。食前酒や日本酒などにもおすすめです。
・ヴィンテージのアクセサリーその1
古いものなのにどこか新しさすら感じるデザイン、色や質感はなんとも雰囲気があります。素材はガラスパール、シェル。手前はルーサイトのブローチです。1930年代のものから50年代まで。普段使いできるもの、年代に関係なく長く使っていただけそうなものを選ぶようにしています。
・ヴィンテージのアクセサリーその2
1960年代のヴィンテージ。きれいな色のかわいいブローチたち。大人の女性にこそ、ぜひ身につけてほしいアイテムです。ブローチは、洋服だけでなく、帽子やストールやバッグのアクセントにも。
左側の2つは、プラスティックとギャラリット。その他は、メタルにエナメルをかけて高温で焼くという方法で作られていて、つやのあるとてもきれいな色が特徴です。
・古いポストカード
切手の種類や消印などから年代がよくわかります。昔々の街並みや建物、馬車が走り、100年前のその景色をポストカードを介して見ることができます。切手やポストカードは、コレクションされる方もいらっしゃいますが、インテリアとしてお部屋に飾っても楽しめます。
photo&text:青木ともみ
→Vol.3はこちらから
Profile
青木ともみ
フランス生活十数年。普段づかいのアンティークやヴィンテージをご紹介するため、日本での企画展やイベントなどに参加している。次回は11月、東京でのイベントに出店予定。「histoire(イストワール)」
肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。