【後藤由紀子さん連載】実はぐっすり眠れないことが悩みです【前編】

後藤由紀子さん 専門家の力をお借りします
2020.01.14

50代になった後藤由紀子さん。二人の子どもたちも社会人となり、長らく手放していた「自分の時間」が戻ってきました。家族中心の生活を送ってきましたが、これからは自分をもっと慈しみ、広げ、豊かで健やかな毎日を送りたい! そんな後藤さんの思いを実現させるため、新連載がスタート。いままで気になっていたこと、悩んでいたことについて、その道のプロにアドバイスをいただく連載を不定期でお届けしまーす!

text:鈴木麻子

後藤由紀子さんとともに学び、楽しむこの連載。第一回目、編集部から届いたお題は「睡眠」でした。私、ライター鈴木は布団に入ったら1分以内には眠り、朝まで一度も起きない快眠生活。眠れない方の苦労が分からず、なんだかピンとこないまま、後藤さんとの待ち合わせ場所へ。

「後藤さん、睡眠に困っているんですか?」。すると後藤さん、にっこり笑っていいました。「私、かれこれ20年間、不眠に悩んでいるんです」

なんと!! 会う度に周りにいる人のことまでもにこやかにしてしまう、いつも朗らかな後藤さんですが、実はちゃんと眠れていなかったんです。「布団に入ってから、寝るまでが長い。1~2時間、のたうち回ってやっと寝ても、夜中に目が覚めてトイレに行って、またそこから眠れないなんていうことがしょっちゅうで……」。結果、朝からだるく、一日中覇気がないまま過ごしてしまうこともあるというから驚きです。

何はともあれ、心地よい睡眠を手に入れたい! 後藤さんの切実な願いを解決するため、快眠セラピストの三橋美穂さんを訪ねました。

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三橋さんは、寝具メーカーの研究開発職を経て独立。睡眠のスペシャリストとして、眠りの大切さや、睡眠のメソッド、寝具の選び方などを提案しています。さて、後藤さん、事前に2週間にわたり毎日記録してきた「睡眠日誌」を見ていただきつつ、カウンセリングのスタートです。

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三橋さんオリジナルの「睡眠日誌」は、入浴時間、寝る前のお酒の有無、布団に入ってから入眠するまでの時間など、おおまかなスケジュールを棒グラフで記入するためのシート。お酒やカフェインの有無、途中トイレに起きた回数なども細かく書き入れます。

後藤さんは23時くらいに横になり、そこから1~2時間後に眠りに入り、6時の起床1時間ほど前に目が覚め、そこから寝付けないまま、起きる時間に突入……ということが多いようです。

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このシートを見るなり三橋さん、「うーん、睡眠効率があまりよくないですねー」と眉を寄せます。

三橋さん(以下、)「お布団に入ると、不安や緊張って出ます?」
後藤さん(以下、)「はい。寝なきゃ! って少し焦ってしまうというか……」

「寝る前は、何をしていますか?」
「家事と自分の仕事をしているんですけれど、早くお布団に入らなきゃって、後半は駆り立てられるようになっています。いままでは寝酒を飲んでいたのですが、先生の本を読んで寝酒はよくないと知り、極力控えました」

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「アルコールが分解される睡眠後半になると、交感神経の活動が高まり、眠りが分断されてしまうんですよね。後藤さんは入眠までに時間がかかっているので、睡眠も浅くなっていると思われます。眠れないのに横になっていると、悶々として、さらに睡眠を遠ざけてしまうことも。寝る前は、灯りを暗めにしてゆったり過ごし、眠くなってから寝床に入るようにしてみてください。寝床にいる時間は『実際に眠っている時間(実質睡眠時間)+30分』くらいが目安。そうやって、いったん睡眠不足の状態を作ると、夜まとめて眠れるようになっていきますよ」

「なるほど。では具体的にはどのようにすればいいでしょう?」

「この2週間の記録を見ると、後藤さんの実質睡眠時間は平均5時間なので、まずは寝床にいる時間が5.5時間になるように調整してみてください。しっかり眠れるようになったら、少しずつ寝床にいる時間を延ばしていきます。もし眠れないときは、寝床から出て本を読むとか、ゆるやかなストレッチをするなど気分転換をしましょう。後藤さんの脳には『寝床=眠れない恐怖の場』と刷り込まれてしまっているようなので、『寝床=眠る場所』となるように脳のシナプスを繋ぎ変えていく必要があるのです」

「ストレッチがおすすめなのですね。私にもできる簡単な方法があれば、教えていただけますか?」
「では、こちらのベッドの上で実際にやってみましょう」

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「まずバスタオルを4つに折り、それをくるくる丸め、高さ10㎝くらいの筒状にします。ストレッチポールなどを使ってもいいですよ」

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「次に、バスタオルを背骨に沿うように当てて横たわり、頭は床につけます。仰向けに寝たままで、両腕を横に伸ばしてひじを曲げ、外回りに20回軽く回します。その後、手のひらを上にして腕をラクな位置に戻し、目を閉じて深呼吸を10回。息を吐くときに体が重くなり、布団に沈み込んでいくイメージで。これを5分ほど続けてからバスタオルを外すと、胸の筋肉が開いて肩甲骨が正しい位置にくるため、背中が布団に吸い付くような感覚になっているはずです。全身が深くリラックスしているので、そのまま自然に眠れますよ」

さっそく後藤さんもトライ。その様子を動画で撮影してみました!

このまま眠ってしまいそうな表情の後藤さん。この簡単なストレッチで、相当リラックスできるようですね。

「これなら熟睡できそうです! ちなみに睡眠時間はどれくらいとるのがベストですか?」
「加齢とともに必要な睡眠時間は減っていき、50代なら7時間前後が目安です。不眠ぎみの場合は、やや短めに。個人差もありますので、日中の体調のよさをバロメータにしてみてください」

「いままで布団の中でスマホを見るのが習慣になっていましたが、先生の本に眠る前のスマホは厳禁とあったので、最近はしないように心掛けています」
「ブルーライトには脳を覚醒させる作用があるので、眠る1時間前からはNGです」

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「お風呂に入る時間は、いつごろがいいですか? 私はいつも寝る前に入っていますが」
「お風呂に入って体温が上がったまま寝床に入ると、寝つきにくくなることも。体のメカニズムとして、深部の体温がストンと下がる瞬間に眠りはやってきます。年齢を重ねると体温が下がりにくくなることもあるますし、もう少し入浴時間を前にしてもいいかもしれませんね」

「体の冷えはどうですか?」
「冷え症だと思います」
「冷え症の人は寝つきが悪い傾向にあります。末端が冷えたままだと、深部体温が下がらず、深く眠れなくなります。また、副交感神経を働かせてリラックスするためには、お腹と手足がポカポカと温かい状態をつくることが大切です」

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「腹巻きやレッグウォーマーなどを使うのがいいのでしょうか?」
「そう、体を締め付けない緩やかなものがおすすめです。これは私が開発に携わっている『nelne』のものなのですが、締め付け感がないよう上下にゴムを入れずに作りました。ぜひ試してみてください」

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「わあ、お腹がポカポカしますね。包まれている安心感があるので、気持ちの面でもリラックスできそうです。そのほかに、おすすめはありますか?」
「眠る1時間前から、だんだんと照明を落としていくようにしましょう。トイレに起きた時も、パッと電気がつくと頭が覚醒してしまうので、明るくしすぎないことがポイントです」

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「あとは、アロマオイルなど心地よい香りでリラックスするのも、ひとつの方法です。ラベンダーには鎮静作用や安眠作用があるのでおすすめ。ディフューザーなどを使うのが面倒なら、枕や布団にひと吹きして使うミストなどが気軽に使えていいと思いますよ」
「いろいろな方法があるのですね。私にはどの方法が一番合うのかを、ひとつひとつ試してみたいです」

【後編】ではいよいよ、自分に合う枕選びについて教えていただきます!


→後編に続きます

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Profile

後藤由紀子

Yukiko Goto

静岡県・沼津で器と雑貨の店「ハル」を営む。最近は「出張hal」として日本各地で期間限定の出店も。二人の子供は社会人となり、子育てもひと段落。暮らしの工夫や気づきを綴った飾らないエッセイも好評。近著に『50歳からのおしゃれを探して』(KADOKAWA刊)
Instagram「@gotoyukikodesu

 

三橋美穂

Miho Mihashi

快眠セラピスト・睡眠環境プランナー。寝具メーカーの研究開発職を経て2003年に独立。講演や執筆、ベッドメーカーのコンサルティング、快眠グッズのプロデュースなど、「眠り」に関わるさまざまなことを行っている。『眠トレ!ぐっすり眠ってすっきり目覚める66の新習慣』(三笠書房)、日本語版を監修した『おやすみ、ロジャー魔法のぐっすり絵本』(飛鳥新社)など著書多数。昨年、監修を手掛けた『“日本人の頭の形”に最もフィットした「極」快眠まくら』も大ヒット。
https://sleepeace.com

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