【フランスのパンと粉もののお話②】〜フランスのパン屋さんで必ず売っているお菓子「シューケット」について

池田愛実さんのフランス滞在記
2021.09.28

湘南でパン教室クラムを主宰しています、池田愛実です。
フランスのパンと粉もののお話、第2回はフランスのパン屋さんで売っているお菓子にまつわる思い出です。

パン屋さんでお菓子?と思われるかもしれませんが、フランスのパン屋さんには大抵お菓子も売っています。「ブーランジュリ・パティスリー(パン屋・菓子屋)」の看板を出しているところが多く、お店のオーナーシェフもある程度お菓子を作ることができて、かつパティシエを雇っている人が多数。私がフランスで働いていたお店2軒も、ブーランジュリ・パティスリーでした。


私がパリで働いていたお店の店内。左にパン、右にお菓子が並んでいます。

菓子専門店の繊細できらびやかなお菓子ではありませんが、エクレア、タルト、フラン(かためのプリンのようなお菓子)、そしてミルフィーユなどは必ず置いてあるメニューです。

私もこれらのお菓子作りをやらせてもらっていたのですが、ミルフィーユには苦労した思い出があります。さくさくパイやおいしいクリームを作ることに、ではありません。上につける模様が、何回やってもうまく描けないのです。

模様とは、チョコレートのフォンダンを小さなコルネ(三角の絞り袋)に入れて、まっすぐの横線を何本か描いた後、つまようじで縦線を入れて葉っぱのような模様にする、クラシックなものです。

いつも線が曲がってしまって、シェフにため息をつかれるのが悔しくて、仕事後にオーブンペーパーの上に何回も描いては消してをくり返していましたが、練習ではうまく描けても、ケーキの上に描く本番はいつも曲がってしまいました。簡単そうに見えるのになぜ…今でも不思議に思う、ちょっと苦い思い出です。

働いていたお店ではありませんが、ミルフィーユの上の模様とはこんな感じです(左端)。

他にもパン屋さんに必ずあるお菓子といえば、「シューケット」は欠かせません。シュークリームの皮を小さく焼いたもので、クリームは入っておらず、上にはあられ糖がまぶしてあります。カゴに積まれて売られていて、フランスの子どものおやつの定番ですが、粉もの好きの私にとっても大好物でした!

働いていたお店のシューケット。右隣は小さいサイズのチョコチップのヴィエノワとベニエ。こちらもおやつの定番です。

当時、厨房でシューケットを焼くのは私の日課でした。オーブンシートを敷いた天板に、絞り袋に入れたシュー生地をリズミカルに絞っていきます。

最初は同じ大きさに絞るのに苦戦しましたが、こちらはほどなくしてマスター。上にのせるあられ糖は、大量生産の場合は1つ1つのせている暇はありません。天板の奥にバケツからあられ糖をざーっと流して、天板の両端を持ってふることで、整列したシュー生地の上に1列、1列とあられ糖がのり、素早くまぶすことができます。端まできたあられ糖は、次の天板のシューケットの上にジャンプさせます。

文章で説明するのは少し難しいですね。簡単なシューケットのレシピをご紹介します。
ポイントは、薄力粉を入れたあとに鍋でしっかりと炊いて水分を飛ばすことと、卵を入れる際の生地のかたさです。パン屋さんの厨房を想像して作ってみてくださいね。


シューケット


【材料(直径5cmのもの17個分)】
薄力粉…40g
卵(M玉)…2個(100g)
バター(食塩不使用)…40g
水…60g
グラニュー糖…小さじ1
塩…ふたつまみ
あられ糖…適量

【下準備】
・卵は溶き、80gと残りに分けておく。
・天板にオーブンシートを敷く。
・オーブンを190℃に温める。
★ガスオーブンの場合は10〜20℃下げてください

【作り方】
①  小鍋にバター、水、砂糖、塩を入れて中火にかけ、沸騰させる。バターが完全に溶けたら火から下ろし、薄力粉をふるい入れ、木ベラで混ぜる。

② 
再度中火にかけ、木ベラで混ぜながら2〜3分、鍋底に膜が張るまでしっかり加熱する。
③  火から下ろし、溶き卵80gを少しずつ加え、そのつど木ベラで混ぜる。生地を木ベラで持ち上げて、ボウルに落ちたあと木ベラに残った生地が逆三角形にたれ下がるくらいまで卵を加える(卵は少し残ってOK)。

  直径12mmくらいの丸口金をつけた絞り袋に入れ、オーブンシートを敷いた天板に直径2.5〜3cmに丸く絞り出す。生地が互い違いになるように絞ると火通りがよく、生地どうしがくっつきにくくなる。

  残しておいた溶き卵を表面にハケで塗り、あられ糖をまぶす。

  190℃のオーブンで22分ほど焼く。

フランスのパンと粉もののお話①〜フランスの国民食「バゲット」について】はこちら

Profile

池田愛実

MANAMI IKEDA

1988年、神奈川県藤沢市生まれ。5歳と3歳の子ども2人のママ。 慶應義塾大学文学部で食育をテーマに学び、大学在学中にル・コルドン・ブルー代官山校パン科に通い始め、卒業後は同校のアシスタントを務める。26歳の時に渡仏し、現地のM.O.F.(フランス国家最優秀職人賞)のブーランジェリー2軒で経験を積み、帰国後は都内レストランのパンのレシピ監修・製造・販売に携わる。2017年から地元・湘南でフランスパンと暮らす教室「crumb-クラム」を主宰。初心者から学べるフランスパンとフレンチ惣菜を教えている。著書に『こねずにできる ふんわりもちもちフォカッチャ』(家の光協会)、『レーズン酵母で作るプチパンとお菓子』(文化出版局)、新刊『ストウブでパンを焼く』(誠文堂新光社)は10月5日発売予定。
https://www.ikeda-manami.com/
Instagram:crumb.pain

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