第1回 Swedenのフィーカスイーツの定番といえばやはりこれ!カネールブッレ(シナモンロール)
はじめまして! 北欧・スウェーデンのダーラナ地方に住む、マツバラヒロコと申します。ダーラナ地方はスウェーデンの真ん中あたりに位置していて、ストックホルムから2時間程の距離ながら、「スウェーデン人の心の故郷」と表現されるほど、伝統が色濃く残るエリアです。
ちょうど20年前、初めての北欧旅行でスウェーデンにすっかり魅せられ、3度の北欧旅行を経てテキスタイル留学を決意。その留学先の学校で出会ったスウェーデン人の夫、娘と、ダーラナの片田舎の黄色い家に住んで17年になります。
今は手工芸の雑貨を扱うWebショップを運営していますが、私がスウェーデンに住むきっかけともなった田舎の素朴さの残るあたたかい暮らしと、食べ物にまつわるお話などをお伝えできたらなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
森の中にポツンと立つ冬のわが家。
こちらは春のわが家。
北欧のヴィンテージがブームになってから、日本でも北欧の住まいやインテリアなど暮らし方にも興味が広がり、さらには北欧の食べ物のことも目にする機会が増えてきました。スウェーデン語でコーヒーブレイク、ティータイムという意味の「Fika(フィーカ)」という言葉も、最近では随分と浸透してきた感がありますね。
世界の中でもコーヒーをよく飲むと言われる北欧諸国ですが、なんとコーヒーの個人消費量で世界トップの6位までに、北欧4か国が入っているのだそう。
企業などでも10時と3時が休憩時間になっていることが多く、私の留学していた学校でも、10時の休憩は少し長めの30分でした。10時が近づくと「ああコーヒー飲みたい…」と言いながら、大の大人がソワソワしているのを見るのは紅茶党の私にはおかしくもあり、新鮮な驚きでした。
「Ska vi fika(フィーカする)?」という言葉には、小さな子どもたちも「フィーカぁ!!」と反応するほど、スウェーデンの人たちはフィーカが大好き。フィーカには焼き菓子などが添えられることが多いので、フィーカする、というと何か甘いものを食べることとほぼ同義語になっています。コーヒーを飲まない子どもたちにとっても、ふわっと甘い焼き菓子の記憶は、きっとその後のフィーカ人生に影響を及ぼしているのではないかしら。
そんなスウェーデンのフィーカスイーツの定番中の定番は、やはりKanelbulle(カネールブッレ)でしょう。「シナモンロール」と訳することが多いのですが、アメリカのお菓子という印象のシナモンロール、実はスウェーデンのカネールブッレがその起源と言われています。
スウェーデンのカネールブッレは、グレイズの代わりに粒状のパールシュガーがかかっていて、パン生地もしっかりしたかみごたえのものが多いように思います。今ではこちらでもわざわざ「アメリカンシナモンロール」という名前で、グレイズたっぷりのレシピが紹介されたりしていて、逆輸入みたいになっているんですよ。
スウェーデンのブッレの2大勢力、シナモン(写真右)とカルダモンのブッレ(左)。シナモン味のカネールブッレは、パールシュガーのトッピングがお約束なので、カルダモンのブッレにはカルダモン&シュガーがトッピングされていることが多いです。見分けやすいのも◎。
ブッレというと、味つきの甘いパン全般を指します。ねじっていない丸いだけのものもブッレと言います。フィリングも多彩で、ちなみに右下はレモン&ココナッツ味。
こんがりとした焼き目がたまらないブッレたち。黒こしょうのように点々と見えているのは砕いたカルダモンで、カルダモンはどの味のフィリングの時でも生地に入っているくらい登場回数が多いです。
ブッレは1ポーションサイズにねじって丸くするほかに、長ーく編んで大きく焼くタイプも大人数のフィーカの時などによく登場します。左のようにスライスしていただきます。
また隣国フィンランドにも、ほぼ同じレシピで「Korvapuustiコルヴァプースティ(つぶれた耳)」と呼ばれるおもしろい形のブッレ(フィンランドではプッラ)があります。
上が最近日本で「スウェーデン巻き」と呼ばれる、φ型の巻き方。下はフィンランドの「耳つぶし型」。
左がφ型の巻き方。カルダモンシュガーがたっぷりかかっていますよね。ちなみに右は「カールスバーデル」と呼ばれる、ブリオッシュ風のリッチな生地にフィリングを入れた、この店のオリジナル。
ストックホルムでおそらく日本人にもいちばん有名な老舗のカフェベー
日本より1.2倍大きい国土に、全国民でもやっと1千万人(うち移民が2割)という人口のスウェーデン。そうすると、片田舎の小さな町ではカフェも1、2軒しかありませんし、お菓子の品揃えも確実に売れるものに絞られてゆくことも多かったはず。
しかし、そのおかげでいわゆる<定番もの>が生まれることになりました。そうして残った定番たちは、派手さはないけれど、この先も消えることのない味。しっかりとバターを使い、小麦やアーモンド、スパイスをふんだんに使って焼き込んだ昔ながらのお菓子は、どれも間違いのないおいしさなのです。
田舎のカフェにて。焼きたてにはキッチンクロスがかけられていて、1つずつ紙袋に入れてもらえるのです♪
昔ながらの「パン焼き小屋」を改装した田舎のカフェ。いかにもホームベーカリーという感じの焼き菓子たちはどれもおいしそうで、選ぶのが大変! いつもイートインと同時に、持ち帰り用を注文してしまいます。
【マツバラさんのフィーカ通信、次回は5月にお届けする予定です】
Profile
マツバラ ヒロコ
神戸出身。大阪のテキスタイル商社に10年勤めたのち、北欧への興味が募り、2003年よりスウェーデン・ダーラナ地方のテキスタイルコースで2年半学ぶ。現在はダーラナ地方在住で、アンティークや手工芸品を扱うWebショップ<happy sweden>を運営、スウェーデン人の夫、娘、柴犬と暮らす。日本帰国時には、北欧に伝わる編み物の祖先のような手芸「ノールビンドニング」のワークショップを行い、時にはワークショップと同時進行でカネールブッレを焼くことも。著書に『はじめてのノールビンドニング』(共著/グラフィック社)。
スウェーデン暮らしのinstagramは@happy_sweden
趣味で始めたお菓子作りのinstagramは @fikateria
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