第2回 Swedenではポピュラーだけれど…?外国の都市名がついた謎のお菓子たち

マツバラさんのSwedenフィーカ通信
2022.05.12

こんにちは、北欧・スウェーデンのダーラナ地方に住むマツバラヒロコと申します。今回もスウェーデンのフィーカ(コーヒーブレイク)のお菓子について、ご紹介させていただきます。よろしくお願いいたします。

スウェーデンのカフェやペストリーショップへ行くと、おなじみのKanelbulle カネールブッレ(シナモンロール)やKardemummabulle カルダモンのブッレなどのほかにも、見慣れない焼き菓子がたくさん並んでいます。パッと見てわかるチョコ系や「りんごの〜〜」などの名前ならよいのですが、味の想像がつかない変わった名前のお菓子もいっぱいあって、私たちを悩ませます。

どちらかといえば生ケーキというカテゴリーのものは少なくて、しっかり焼いた茶色いお菓子が断然優勢という感じですが、中でも外国の国名や都市名がついたものが多いことに気づきます。よく見る定番お菓子のうち、都市名がついたものを書き出してみました。

・Brysselkex ブリュッセルケックス(=ブリュッセルクッキー)

縁に食紅でピンクにしたグラニュー糖をまぶしてあるバタークッキー。このピンク色があると、一気にフィーカの場が華やぎます。

・Strassburgare ストラッスブリヤレ(=ストラスブール)

いわゆるサブレヴィエノワ風の絞り出しクッキーです。でもなぜかウィーンではなくて、スウェーデンではアルザス・ロレーヌ地方の都市の名前がついています。

・Budapestrulle ブダペストルッレ(=ブダペストロール)
 
ヘーゼルナッツパウダーを混ぜ込んだメレンゲでロールケーキ仕立てにした、軽いお菓子(でも大きいんです)。中に入れるフルーツは、ベリーやオレンジ、バナナなどのことが多いです。

・Katalan カタラーン(=カタルーニャの、という意味)

右側の白いグレイズのお菓子Mazarin(マサリーン)がタルト底なのに対して、カタラーン(写真中央)は底がパイ生地。見分けのためか、ラズベリーのジャム、もしくはピンクで色づけされたグレイズが定番です。

・Holländare (=オランダの)

クッキーやスポンジケーキの余り生地を無駄にしないように、お菓子に作り替えたもの。しかしそんな「余りもの再利用」的なお菓子に、なにも他国の国名をつけなくても、、

・Finska pinnar フィンスカピンナル(=「フィンランドの棒」という意味の、棒状のお菓子)

フィリングが違うだけのMilano stänger ミラノ ステンゲル(=「ミラノの棒」)というお菓子まであります。

・Franska pepparkakor フランスカペッパーカーコル(=フランスのペッパーカーカ)

このほかにも外国の都市名のみならず、スウェーデン国内のストックホルムやヨーテボリの名前を冠したお菓子などもあり、店頭はまさに都市名のオンパレード。当然なにか由来と関係があるのかな、と思いますよね? 

それがなんとここに挙げたお菓子はすべて、都市名とまったく関係がないのだそうです(余談ですが、英語でBrussels cookiesと検索すると、これまた全然違うアメリカの薄焼きクッキーが出てきました。一応ブリュッセルで出会ったお菓子だそうですが、、)

ほかにもおもしろいのは、デニッシュといえば英語でも日本でもデーニッシュ(=「デンマークの」)と呼ばれているのに、本場のデンマークではWienerbrød「ウィーンの」と呼ばれていること。スウェーデンでもWienerbröd ヴィエネーブロードなので、文字通り「ウィーンのパン」。

ちなみにドイツではKopenhagener「コペンハーゲンの」、一方フランスは「ヴィエノワズリー」で、やっぱり「ウィーンの」。これは、1850年にデンマークのパン職人がストをした際に、ウィーンからパン職人を呼んだら、その人がバターたっぷりの折り込みパンを作り始めたため「ウィーンの」と呼ばれているのだそうですが、よほどデンマークで盛んに作られたのでしょう。今では世界中で「デンマークの」ということになっているのがおかしいですね。

ティータイム、コーヒーブレイクという意味の「フィーカ(Fika)」が習慣化しているスウェーデンですが、そもそもコーヒーや紅茶を飲むということが一般家庭にまで広まったのは、意外にも遅くて1950年代。
18世紀に紅茶やコーヒーがスウェーデンに入ってきた当初はとても高価な輸入品で、いずれも上流階級の人たちの嗜好品でした(これは日本も同じですけれどね)。そのせいでコーヒー禁止令(1756〜1823年)まで出ていたという驚きの過去すらあるスウェーデン、フィーカの習慣は、元々は限られた特権階級の人のものだったのです。

昔は国民のほとんどが農民で、小麦粉はごちそう、ライ麦が主食だったスウェーデン人。「世が世なら、現代の私たちが食べているフィーカは王様のフィーカ」と聞きました。おいしいお菓子で気軽にフィーカができる私たちは幸せなのですね。

そうそう、日本とスウェーデンの共通点を見つけました。くるくると丸めてアップにした髪型を「お団子にする」と言いますよね? あれはスウェーデンで何というと思いますか? 

もちろん、「Bulle ブッレにする」です!!

【マツバラさんのフィーカ通信、次回は6月にお届けする予定です】

Profile

マツバラ ヒロコ

HIROKO MATSUBARA BRÄNNHOLM

神戸出身。大阪のテキスタイル商社に10年勤めたのち、北欧への興味が募り、2003年よりスウェーデン・ダーラナ地方のテキスタイルコースで2年半学ぶ。現在はダーラナ地方在住で、アンティークや手工芸品を扱うWebショップ<happy sweden>を運営、スウェーデン人の夫、娘、柴犬と暮らす。日本帰国時には、北欧に伝わる編み物の祖先のような手芸「ノールビンドニング」のワークショップを行い、時にはワークショップと同時進行でカネールブッレを焼くことも。著書に『はじめてのノールビンドニング』(共著/グラフィック社)。

https://www.happysweden.net/ 

スウェーデン暮らしのinstagramは@happy_sweden
趣味で始めたお菓子作りのinstagramは @fikateria

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