たたずまいのいい服 「サイ」の定番コート
「Scye(サイ)」のコートを着ていると、必ずや「それ、どこの?」と聞かれます。特別何かを主張しているわけでもなく、スタンダードでシンプルなのに何かが違う。なぜだか気になる。その秘密に迫るべく、デザイナーの日高久代さんにお話をうかがいました。
“デザインとして認識されない
全体の雰囲気を作り出したい “
「昔からメンズのアイテムが好きで、影響を受けているのは19世紀のイギリス紳士服。機能的で普遍的で美しいですから。なので、実は女性用のコートの合わせも左上。そのほうが服としてのバランスがしっくりくるんです」とデザイナーの日高久代さん。もともとメンズのデザイン経験があり、「サイ」ではレディースとメンズを同時にスタートしました。そんな日高さんが服作りで大切にしているのは「たたずまいのよさ」なのだそう。
「パッと目を引くデザインとして認識される部分というよりも、全体の雰囲気を作り出せたらいいなと思っています」
それは、生地の色や質感はもちろん、パターンやカッティングから縫製にいたるまで、デザイン画だけでは表現できない部分も含めたあらゆる条件が整って、初めて実現できること。素材はほとんどが日本製で、縫製もすべて国内生産にこだわっているのも、そうした細部のニュアンスのコミュニケーションを取りやすいからだそう。
「私の服は一見違いがわかりづらいですが、『なんかいいね』と言ってもらえたら、それでいいんです」
そう控えめに話す日高さんこそが、まさに“たたずまいの美しい人”でした。
photo:和田直美 text:和田紀子
『大人になったら、着たい服 16-17秋冬』より抜粋
Profile
日高久代
文化服装学院卒業後、数社のアパレル企業でデザイナーとしてキャリアを積む。2000年に独立し、パタンナーの宮原秀晃氏とともに「サイ」を立ち上げる。
肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。