森 万恭さんが手がけた究極の一着「アルモリュクス」のブルトンシャツ

名作と呼ばれる映画には、必ずといっていいほど実力派の脇役が存在するもの。それは、おしゃれも一緒です。一見何げないのに、実は丹念にこだわって作られたアイテムたちは、主役を引き立てるための十分な腕前を持ち合わせています。この連載では、そんな“おしゃれの名脇役”にスポットライトを当て、王道のものから隠れた逸品まで、幅広くリポートしていきます。

1938年に、フランス北西部に位置するカンペールで創業した「アルモリュクス」。生地から縫製まで自社工場にて一貫生産していて、安定した高品質を保っています。アイコン的存在なのが、ブルターニュ地方の漁師たちが愛用していた、ボートネックのボーダーカットソーの“ブルトンシャツ”。フランス海軍や鉄道、郵便局といった公的機関のユニフォームに採用されていることからも信頼性の高さがうかがえる、フランスを代表する老舗ブランドのひとつです。
今回ピックアップするのは「アルモリュクス」の“ブルトンシャツ”。2022年春にスペシャルな日本別注モデルとして誕生し、早くも多くのボーダーラバーから注目されています。

「アルモリュクス」ブルトンシャツ＜森 万恭氏監修＞¥19,800
※商品の価格は2023年3月現在のもので、表示は税込みです。

手がけたのは、長年日本のファッション界に携わり、「ドレステリア」ディレクター時代にも多くの名品を生んだことで知られている森 万恭さん。現在は写真家、インテリアデザイナーとして活動しています。
「ファッション由来ではなく、作業着やユニフォームとしての認識をベースにデザインしていただいた“ブルトンシャツ”は、細部までこだわり抜いた究極の一枚。そのディテールから、ファッションにこだわりのある幅広い年齢の方々に支持されています」と語るのは、アルモリュクス事業部の林 直洋さん。それを象徴するように、メンズ、レディースでカテゴライズしないユニセックス展開。2XS から2XLの7サイズで、ボーダー以外に無地タイプもあります。

「アルモリュクス」ブルトンシャツ＜森 万恭氏監修＞各¥19,800

PRの和田かおりさんが、少しオーバーサイズで着るとこんな感じ。
「流行に左右されない、スタンダードなシルエットと丈感です」

少し肩が落ちるドロップショルダーで、きれいめにもカジュアルにも着られます。ネックの開きは、大人が上品にカッコよく見えるよう、少し狭めに設定。

「そして、なんと言ってもこのしなやかな肌触りがたまらなくいいんです」

やわらかさの秘訣は、繊維長の長い上質なコットンで大切に編みたてられたから。
「洗濯をしても縮みにくく、この風合いが持続するのも魅力のひとつです。現在はフェアトレードコットンを使用していますが、来シーズンからはオーガニックコットンに変わります」

袖下を見ると、トップスではあまり見ない切り替えのようなものが。

三角マチを設けることで裁断効率が上がるうえ、腕の可動域も広がり、動きやすくなるのだそう！
着心地のよさを追求すべく、タグの位置も考慮。後ろの首ぐりではなく、裾脇につけられています。

タグをよく見ると、ブランドロゴが現在のものとは違う様子。
「アーカイブの中から、あえてクラシカルなものを選びました」

ボーダー柄のカットソーはバスクシャツと呼ぶことが多いですが、実はこれ、日本でしか通じない和製外来語なのだそう。
「一説によると、ヘミングウェイの小説『海流のなかの島々』の翻訳で、“ブルトンシャツ”をバスクシャツと書かれていたことから広まったようです」と和田さん。「ボーダー柄が起用されたのは、漁師さんが海に落ちてしまったとき目立つようにデザインされた、という説もあります」とも。なにげなく着ていたアイテムに、そんなストーリーが潜んでいたとは！

今回ご紹介した“ブルトンシャツ”の世界観を森さんが撮り下ろしたWEBのスペシャルページもとても素敵なので、ぜひご覧ください。

また、アルモリュクス 中目黒店は、桜の名所でもある目黒川沿いという好立地。ワンちゃんと一緒に入れるカフェも併設しているので、お花見がてら立ち寄ってみて。

photo：花田 梢　text：三宅桃子

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