【特集】アニメーション監督・堤 大介さんspecialインタビュー vol.3 アメリカから見る日本、トンコハウスにできること・したいこと

”つくる人”を訪ねて
2017.04.29

アカデミー賞ノミネート作品「ダム・キーパー」を生み出した
アニメーションスタジオ・トンコハウスの想いとこれから

短編アニメーション「ダム・キーパー」のアカデミー賞ノミネート、「ダム・キーパーの旅」展、日米コラボレーション作品「ムーム」、最新作「丘の上のダム・キーパー」など、ピクサー独立後、さまざまに活動の場を広げる堤 大介さんとロバート・コンドウさん。

2人が立ち上げたアニメーションスタジオ・トンコハウスの想いやこれからについて、本web連載「“つくる人”を尋ねて」の特別編として、堤さんにお話を伺いました。

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photo:成田由香利 text:大塚美夏

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暮らしとおしゃれ編集室(以下、編):ピクサーというアメリカの大きな会社の一員としてずっと仕事をされてきた堤さんですが、世間的には“安定”と見られる職場を投げ打ってまで同僚のロバートさんとトンコハウスを立ち上げたのはなぜだったのでしょうか? 

堤さん:もちろんピクサーには、アニメーションをつくる者としてはこれ以上にないいい環境でしたが、それは僕らの尊敬する先輩たちが築いてきたものです。そこで沢山勉強させてもらいましたし、ピクサー全盛期の時代にも関わることができたことは誇りに思ってます。今存在するCGアニメーションの業界はスティーブ・ジョブスを始めとするピクサーを創ってきた人たちの恩恵です。ただ、僕ら個々の旅を考えると、その恩恵に乗っかっているだけでいていいのか。彼らが育ててくれたこの業界を、僕らの次の世代に渡すために、僕らは何をしてきたのか。そして何より、自分たちがそもそもアニメーションをしている理由は何なのか。自分たちに対する疑問が溢れ出てきた時、この世界最高の環境から離れないとダメだと思ったんです。

:それは、なんだかわかるような気がします。 

堤さん:僕は日本人で、当然小さい頃から日本の文化に触れてきて、大人になってアメリカに渡り、仕事はずっとアメリカでしてきました。 世界の二大アニメーション文化は、アメリカと日本であり、その間で生きてきた僕にできる事ってないのかなと思いました。日本人の血を持ちながらアメリカで生まれ育ったロバートも僕とは違った形で両国の間に生きてきました。抽象的ではありますが、トンコハウスの武器の一つはそこにあるのかな、と。 ただ、それを観てくれた人がとりわけ頭で理解しなくてもいいと思います。 楽しんでもらえるかどうか、なにかを感じてもらえるか、考えるきっかけにしてもらえるか……。 アニメーション制作では技術的なことや作法的なことだけではなく、表現や根底に置きたいメッセージなどにも日米のいいところをバランスよく融合したものをトンコハウスではつくっていけたらと思っています。

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:小回りがきくぶん、存分に「なぜか?」を突き詰められるということもあるのでしょうか。 

堤さん:そうですね、自分を見つめて自分に忠実であるということを、自らの責任においてできるのが、トンコハウスの存在意義。 ものをつくるって勇気がいることだと思うんです。周りからなにか言われて自分が変わってしまうのではなく、なにか言われてもそれをはね返すぐらいの図太さがないとものづくりは難しい。 自分というのは世界にたった一人でかけがえのないオリジナリティなんです。 「人の意見を聞かない」ということとはまた別ですし、ビジネスとして成立させることとのバランスは難しいですが「できるかわからないけど挑戦する」がトンコハウスの武器であり、役目であり、永遠の課題であると思っています。

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:「自分というのは世界にたった一人」というのは、クリエイターでなくてもなんだか勇気づけられますね! 

堤さん:そうですよ! ものをつくる仕事でなくても、たとえば“お母さん”にとって子どもは一番のクリエイションです。お母さんが自分を持って自分を信じて子どもに接することができれば、子どもも幸せ、旦那さんも幸せ(笑)。 周りがみんな幸せでいられると思います。 

:では、次は堤さんが“イクメン”であるかどうか? のお話も(笑)

 

vol.4に続きます

Profile

堤 大介(つつみ・だいすけ)

東京都出身。School of Visual Arts卒業。Lucas Learning、Blue Sky Studioなどで「アイスエイジ」や「ロボッツ」などのコンセプトアートを担当。2007年ピクサー入社。アートディレクターとして「トイ・ストーリー3」や「モンスターズ・ユニバーシティ」などを手がけている。2014年7月ピクサーを退社し、トンコハウスを設立。71人のアーティストが一冊のスケッチブックに絵を描いて、世界中に回したプロジェクト「スケッチトラベル」の発案者でもある。

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