随筆家・山本ふみ子さん【前編】「元気に見えるように、手首、足首を見せて颯爽と」
日々の暮らしは、「もの」に支えられ、彩られ、形作られています。暮らしと太くつながっているからこそ、大切な「もの」は、年齢や生活習慣の変化とともに、更新されていくはず。大人になった「いま」だからこそ、しっくりきているものはなんですか? 憧れの先輩に聞きました。
text:鈴木麻子 photo:大森忠明
山本ふみ子さんは、洗濯したての手ぬぐいみたいに、さっぱり気持ちのいい人。おおらかな思いを、キリリと美しい言葉にのせて、読者に投げかける随筆家です。その語り口はいつも、「こうであるべき」ではなく、「こんなでもいいんじゃない?」というスタンス。ときに、うじうじグズグズしてしまいがちな私たちの背中を、ポンポンッと元気よく叩いてくれる存在です。そんな山本さんの人生のテーマは「毎日を、機嫌よく暮らす」こと。
「自分の機嫌は自分でしかとってあげられないので、そのためにいろいろと試行錯誤しています」。くさくさと過ごしても、にこにこ過ごしても、時間の長さは一緒。ならば、その時間は少しでも愛おしく、幸せなものでありたい。日々の暮らしの中に、小さな楽しいことを散りばめて、ご機嫌に過ごせるよう工夫を重ねてきました。
「ご機嫌」と「はつらつさ」を身にまとっている山本さんですが、そう見えるように、自分なりに工夫していることがあるといいます。それは、とっても簡単。いつでも腕まくり、裾まくりで「手首と足首を出すこと」です。
「手首と足首を出すと、ちょっと元気な感じに見えませんか。お洒落を気にしてというわけではなく、ただ元気なふうに見せたいだけなんですけれど。ゴージャスなアクセサリーをつけるより、キュッと細い手首足首をしっかり見せるほうが魅力的だって思っていて……」
手首、足首へのこだわりは昔から強かったけれど、60歳を手前にして、ますますその思いは強くなったといいます。年をうんととって、おばあさんになっても手首、足首を出して颯爽としていたい、そんな思いがあります。
「人の手首、足首は綺麗だなって思う。だから隠していたらもったいない。冬でも、パンツの裾はまくって、靴下を見せるようにしています。だから、丈をお直ししたり折り上げたりしながら、鏡の前でジャストな見え方をいつも模索しているんです」
身体のなかで一番華奢な部分を露わにして、メリハリを出す。それは、「すっきり着こなし」の常套手段ですが、山本さんの場合、それはテクニックではなく、元気に見えるおまじないみたいなもの。夏でも冬でも一年中、今日もくるりと腕をまくって、鏡の前で自分にハッパをかけているのでした。
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Profile
山本ふみ子
随筆家。東京都武蔵野市教育委員。特技は、何気ない毎日に面白みを見つけること。『家のしごと』(ミシマ社)、『台所から子どもたちへ』(オレンジページ)、『忘れてはいけないことを、書きつけました。』(清流出版)など著書多数。ブログ「ふみ虫、泣き虫、本の虫」では、暮らしを楽しむ山本さんの様子がうかがえる。
http://fumimushi.cocolog-nifty.com/
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