「天窓を見つめながら」~おしゃれ暦vol.41神無月
『ナチュリラ』本誌でも、季節ごとのリアルクローズとそのおしゃれな着こなし方を提案してくださっている人気セレクトショップ「アナベル」。店主の伊佐さんによる、季節のおしゃれエッセイ、第41回目です。秋らしい爽やかなお天気に誘われて、お出かけが楽しい季節になりました。暑くもなく、寒くもないこの時期は、おしゃれを存分に楽しめるときかもしれません。これまで思っていた“自分らしさ”をちょっと見直して、新しいものに挑戦するのにもいいときですね。
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photo:川本浩太 text:伊佐洋平 model:伊佐奈々
先日、青梅のアンティークショップ「MANSIKKA(マンシッカ)」で
催されたストアライブに赴いた。
お店の前に立つと、山の緑と川のせせらぎが、東京都であることを
忘れさせる最高のロケーションだ。
ライブは、天窓から注がれる自然光が夕暮れとともに暗闇に包まれ、
ろうそくの灯と音楽が鳴り響く、素晴らしいセッションだった。
入り口も開け放たれた状態で進行したライブ中、
暑かった日中では考えられない冷えた風が注ぎ込んできた。
緊張感のある演奏の中、寒いと感じながら持っていたウールの
シャツジャケットを羽織った。
もう、羽織る季節がやってきたのです。
あの見覚えのあるタートルネックのようなシャツに、
ジャケットのような、カーディガンのような、
あいまいなことが素敵でもある羽織物を羽織る。
ボトムスは個性のある裾ゴムのバルーンパンツを。
個性とは、自己主張のようなもの。
奇抜なものが個性とは限らない。
たまたま僕の個性が少しだけ変わっているだけだ。
興味のある扉は、どんどん開けてみればいい。
違うと思ったら扉を閉めて引き返すだけだ。
そのためにお店はあって、試着ができる。
丈の長いものを秋から羽織るのも今年らしくて感じがいい。
ひざ丈を基準にしておけば、間違いない。
どんな時代を迎えても、ひるまずに着ていけることだろう。
普通であることがアダになるスタイリングを何度も
自分自身や妻を通して若いころから経験してきたことが、
今の仕事に繋がっているのだと感じることがある。
普通であるということは、安心感にもつながるのだが、
一方で、何も感じられない自己主張のない装いにも繋がりかねない。
きっとその狭間のような場所を探すことができたなら、
とても居心地がいいのかもしれません。
自分では安心感のある「いつもの装い」が、
他人には、「ハッとする装い」に見える狭間。
それを推し量るには、一度攻めてみる必要があるのかもしれない。
いや、もしかするとずっとそれを繰り返すことがおしゃれの近道なのかもしれない。
素敵な音楽を聴きながら、だんだんと日暮れを迎えようとする天窓を見つめ、
そんなことを考えた秋の夕暮れ。
シャツ:susuri チンカラーシャツ ¥24,000+tax(全スタイリング共通)
ジャケット:ARTEPOVERA ¥19,000+tax
パンツ:NO CONTROL AIR ¥21,000+tax(全スタイリング共通)
シューズ:VIELLE ヌッフ ¥26,000+tax
コート:annabelle オリジナル ETTO COAT ¥59,000+tax
カーディガン:vie ¥20,000+tax
ストール:s.v. oversea ¥8,500+tax
パテントシューズ:catworth ¥21,000+tax
バッグ:私物
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