「てぶくろのおかげ」~おしゃれ暦vol.47睦月
『ナチュリラ』本誌でも、季節ごとのリアルクローズとそのおしゃれな着こなし方を提案してくださっている人気セレクトショップ「アナベル」。店主の伊佐さんによる、季節のおしゃれエッセイ・第47回目です。新しい年がスタートしたばかりで、なんとなく気持ちもフレッシュなこの時季。どんな装いでどんな年にしたいと思いますか?
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photo:川本浩太 text:伊佐洋平 model:伊佐奈々
「この手袋はさ、ほら、あれに似てるね」
なに?
「ほら、子供が小さい時たくさん読んだやつ」
妻が抱えて持ってきたのは、確かに何度も読んで聞かせた、
「てぶくろ」というロシアの絵本だ。
ウクライナの民話で、どうやら世界的に有名な絵本のようなので、
ご存知の方も多いかもしれません。
工夫に満ちた内容で、読んでいる大人もまた、立ち止まって
考えさせられるような、哲学書のようなものにも感じるのです。
少し変わった形の極太パンツにベルベットのコートをさらりとはおる。
中に着た、信じられないほど暖かいカシミアのセーターのおかげもあって、
駅の中などに入ったら、コートの前は開けているくらいでちょうどいい。
ファッションやメイクを楽しんできれいでいたいと思うことが、
一部の人たちの趣味ということにとどまらないことは、
普段はまったくおしゃれに構う余裕などなかった、
ご高齢のおばあちゃま世代が、
しゃれた洋服を着てきれいにお化粧を施し、鏡をのぞいて、
満面の笑みとともに涙を流しているテレビのワンシーンなどを見ると、
それはより明白なのだと感じるのです。
だから、自分なりの楽しみ方をぜひ発見していただきたいのです。
「そうか、ベルベットのコートが着てみたかったから、参考にしよう」
「私は、ベルベットは無理かな、、でもシルエットやバランスは好き」
正解の無いことの楽しみ方は、実は絵本を通してたくさん学んでいる気がするのです。
このとてつもなく暖かいムートンのミトンがそれをもう一度教えてくれた気がします。
お気に入りのコートに合わせてみれば、袖口から現れるボアボアが、
何とも言えず可愛らしく、そして何より温かく手を包み込んでくれるのです。
黒のベルベットには、黒やグレーや白の小物を選びたくなるところ、
あえて茶系の小物を選んでみると、白のボアボアがいい具合の
アクセントになっていると、後からですが気がつくのです。
「ワイドパンツにロングコート、やってみたかった!」
「私だったら、細身パンツにハンドバッグが好みかな」
自身のおしゃれを磨く種は、意外と興味を超えたところに
何食わぬ顔で転がっていたりするのです。
食わず嫌いはいけませんね。
「白いパンツに赤い靴下がとてもいい感じ!」
「赤い靴下もいいけれど、黄色いモヘアソックスなんかも履いてみたい」
スタイリングを考えるとき一番気にかけていることは、
「普通で納まらない何かを加えたい」
今回のスタイリングでは、手袋がその役目を果たしているのです。
「てぶくろ」のおかげで、いろいろと考えつつ、良い幕開けを迎えられそうです。
コート:Honette ¥45,000+tax
タートルセーター:ITOI collection by YURI PARK ¥38,000+tax
パンツ:HARVESTY サーカスパンツ ¥15,800+tax
シューズ:R.U. Anon ¥46,000+tax
カバン:sono ¥16,000+tax
手袋:ラナスハンドスカ ¥24,000+tax
靴下:私物
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