「相棒」…おすすめ帖vol.4
『ナチュリラ』本誌でも、季節ごとのリアルクローズとそのおしゃれな着こなし方を提案してくださっている人気セレクトショップ「アナベル」。店主の伊佐さんによる「季節のおすすめ帖」連載コラムです。季節ごとのおすすめの品を月に2回、ご紹介。第四回目は、そろそろ今年も出番かな? と思う、あのコートのお話です。
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photo:川本浩太 text:伊佐洋平 model:伊佐奈々
説明しすぎると魅力が半減する。
もちろん、説明が重要になる類のこともたくさんあるが、
ファッションデザイナーにおいて、それはあまり必要とは思えない。
デザイナーが思い描く、今の時代の空気感や自身の中に芽生える感情を
どのように洋服という形あるものに落とし込むかが必要である以上、
具体的な説明より抽象的であっても、その瞬間の感情が伝わる言葉や
音のようなものを残すことのほうが重要なのだと思う。
「susuri(ススリ)」のデザイナー斎藤さんに展示会でお話を伺っていると、
そういった魅力を存分に感じさせる。
「ふわん」とか、「ポカン」とか、「シャキ」とか。
他のどのデザイナーより、そういった言葉をよく口にする印象だ。
今回は、魅力的な「susuri(ススリ)」のコレクションの中から、
こちらのコートをご紹介したいと思います。
今シーズンのテーマは“pietra”(石の質感)。
フェデリコ・フェリーニ監督の映画「道」から
インスピレーションを受けてのコレクション。
ふんわりとした大きなシルエットと長い着丈は、
映画の登場人物が纏った大きなコートをイメージして作られた。
ゼロからデザインしたかったというトラディショナルウェアの
代表格ともいえるステンカラーコートは、それにふさわしい
迫力を備えると同時に、斎藤さんならではの「らしさ」を
しっかりと感じさせてくれる。
小さな襟に対して、とても太い袖。
ふんわりと丸みを帯びながらもどこか凛としたシルエット。
その個性が、袖口のタブをキュッと締めることでより強調される。
一度完成されたともいえるステンカラーコートをゼロから作るということは、
トラディショナルへの挑戦であるし、可能性が広くなる分、時間もかかる。
2枚袖のラグランでAライン。
立体的な襟に比翼仕立て。
ポケットは口の大きな箱ポケット。
トラディショナルな基本的要素はしっかりとおさえながら、
その圧倒的な「らしさ」を生み出す原動力は、
作り始める前段階で、頭の中にはっきりと浮かんでいた
イメージがあってこそだと思う。
そして、そのこだわりのイメージは、
生地を織り上げるところから始まっている。
タテヨコの糸を双方オリジナルカラーで織り上げた綾織りは、
しなやかなスーピマコットンを用いた播州織。
もんでもシワになりにくい高級織物だ。
しかも色はトラディショナルなベージュ系の1色勝負。
すごくセンスのいいオリジナルカラーだ。
「susuri」 2019SS collection theme “pietra”
『モノクロ映像のパリパリとした質感から伝わる
長いこと変わらない素朴で穏やか、のんきで暖かい空気と
窒息しそうな閉塞感の中に偏るヒリヒリした空気』
質感や空気感を大切にした今季のコレクションで生まれ落ちた
ステンカラーコートは、ずっと手放せない相棒になりそうだ。
コート:susuri ファローコート ¥56,000+tax
パンツ:FIRMUM ¥21,000+tax
スカート:GASA* ¥54,000+tax
バッグ:sono ※3月初旬販売予定
くつ:R.U. Thea ¥38,000+tax
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