「ふたりの方程式」…おすすめ帖vol.8

おしゃれさんコーディネート
2019.04.27


『ナチュリラ』本誌でも、季節ごとのリアルクローズとそのおしゃれな着こなし方を提案してくださっている人気セレクトショップ「アナベル」。店主の伊佐さんによる「季節のおすすめ帖」連載コラムです。季節ごとのおすすめの品を月に2回、ご紹介しています。

 

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photo:川本浩太 text:伊佐洋平 model:伊佐奈々

 

個性があるとかないとかいうお話をすることもありますが、
個性はみなさん一人ひとりに必ず備わっているものだと思います。
ただ、それが生かされるかどうかは巡りあわせのようなところもあるでしょう。
さらには、個性がぶつかり合って良い方向に行くこともあるでしょう。
融合することもあるようです。
今回は、まだ皆さんがあまり聞いたことがないであろうブランドを
ご紹介したいと思います。

 

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「usual(ユージュアル)」というブランドです。
ナチュリラの春号で、わたくしの担当しているページを見ていただいた方は、
ピンときたかもしれません。

 

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2017年から始まった「usual(ユージュアル)」は、レディースを中心にした
ユニセックスブランドで、商品によっては、メンズも展開しています。
アナベルでは、2018年の春夏、ちょうど1年前からお取り扱いを開始しました。
そして、初めて展示会を訪れた際に、お取り扱いを決意した理由は、
このワンピースと、グルカパンツでした。

 

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展示会場は渋谷地区のひっそりとした場所にある小さな部屋でした。
この連載の「相棒」でご紹介した、「susuri(ススリ)」さんの展示会を5年前に
初めて見たのも同じ場所だっただけに、少し良い予感はしていました。
「気に入った感覚に出会えるかも」って。

 

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数少ないコレクションの中で、最も私の目を引いたのは、
このダブル釦のプルオーバーワンピースでした。

 

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素材はメンズ受けをする、高密度なタイプライタークロスで、
しかも表面にムラ感とシワがすごい。
我々は大好きだが、決してレディースで一般受けする素材感ではないでしょう。
硫化染色という技法で、わざとムラを作りながら染めたしわだらけのコットン。

 

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しかも、ダブル釦でマオカラー。
さらに、被りタイプのワンピース。
「いいね」って、心の中で素直に共感できました。
売れるかどうかより、明らかに「好き」を優先しているように感じたからです。

 

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そして、お取り扱いを決定づけたのは、その並びにかかっていた、
グルカパンツを見たからかもしれません。
「グルカパンツ、、売れないでしょう。」と聞くと、
ちょっと嬉しそうに苦笑いするデザイナー、小暮さんの顔が印象的でした。

 

グルカパンツは、わたくしも大好きです。
きっと洋服好きの男子はみんな好きかもしれません。
しかし同時に、「売れない」ものの代名詞にもなるくらい、皆さん買わない。
それは、サイドベルトをいちいち外さなくては脱ぎ履き出来ない構造上、
どうしても買うに至らないという事なのでしょう。
しかも凝ったディテールだけに、シンプルなパンツより、値段も高い。
そう、売れない条件を十分に満たしているのです。

 

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こんな特徴的で素敵なワンピースを作りながら、
まず売れないといわれるグルカパンツを一生懸命販売する不器用さ。
これはもうほっとくわけにはいきません。

 

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デザイナーの小暮さんは、某デザイナーズブランドの下で
3年ほどパターンナーとしての実務経験を経て、独立しています。
2011年のことです。「usual(ユージュアル)」にたどり着くまでずいぶんと時間がありますが、
ご想像通り、グルカパンツをつくるメンズブランドを行っていたため、
なかなか目が出ず、2017年を最後にメンズはあきらめ、現在に至ります。
私は、最後のメンズコレクションを実際に見て、試着をしましたが、、
かなり良かったことを今も覚えています。
着心地、デザインのバランス、素材感、どれをとっても素晴らしかった。
でも目が出なかったのは、グルカパンツと小暮さんの不器用さが原因でしょうか。

 

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ブラックもございます。

 

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その不器用さが全面に出た、ある出来事があります。
それは、我々がこれだけ気に入っていたこのワンピースが、
次の展示会に出ていなかったこと!
実は、「usual(ユージュアル)」のご紹介をまともにするのは、今回が初めてです。
それは、もったいぶっていたわけでも、やる気がなかったわけでもなく、
紹介する前に、店で完売を繰り返していたからなのです。

 

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こんな風にパンツを下に履いても素敵です。

 

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こんな素敵なワンピースがなくなっていたことに相当な違和感があった私は、
「どうしても欲しい」とわがままを言って別注で作ってもらいました。

 

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今回、あらためてこのワンピースのデザインについて聞いてみると、
実は奥さんが、「ダブル釦のワンピースが着たい」と言ったそうです。
そこから始まったセッションで、足したり引いたり。
なかなかアグレッシブなデザインブランドに所属していた小暮さんは、
どちらかというと足し算のタイプ。
洋服業界にどっぷりではないオシャレな奥様は引き算のタイプ。

 

そんなお二人の絶妙な融合により、素敵なバランス感覚で成り立っている。
「アナベルに声をかけろ」って言ったのも、実は奥様だったらしい。
不器用そうなご主人と、小さなお子さんを抱っこしてお手伝いする奥様。
そんな姿にも惹かれて、今があるのかもしれません。
とても人柄の現れた一品かと思います。
ぜひ、お試しを。

 

ダブル釦ワンピース:「usual(ユージュアル)」¥24,000+tax ※次回入荷分より¥26,000に変更

 

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アナベル

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℡:045-482-4026
営業時間:11:00~20:00 水曜定休
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