普通に見えて…計算された履き心地 「無印良品」の撥水オーガニックコットンスニーカー
名作と呼ばれる映画には、必ずといっていいほど実力派の脇役が存在するもの。それは、おしゃれも一緒です。一見何げないのに、実は丹念にこだわって作られたアイテムたちは、主役を引き立てるための十分な腕前を持ち合わせています。この連載では、そんな“おしゃれの名脇役”にスポットライトを当て、王道のものから隠れた逸品まで、幅広くリポートしていきます。
photo : 花田 梢 text : 三宅桃子
「『無印良品』の衣料品・服飾雑貨の売り上げランキングで上位を占めるのは、圧倒的にウエア類が多いのですが、そんな中でTシャツやデニムを抜き、一週間の販売数で1位になった週もあるのが“撥水オーガニックコットンスニーカー”でした」と語るのは宣伝販促室の関根純子さん。そういえば、去年の春頃に取材班が購入しようといくつかの店舗を回るも売り切れていて、人気の高さを目の当たりにしたことも。そんなエース的存在のスニーカーがこちら。
「無印良品」撥水オーガニックコットンスニーカー (左から)黒、オフ白、ネイビー 各¥2,980
※黒は、オール黒からバイカラーにリニューアル。
※以下、商品の価格は2016年6月現在のもので、表示は税抜きです。
ん、一見なんてことないスニーカーがそんなにヒットしたの? と思われがちですが、この潔すぎるシンプルなスニーカーって、意外と少ないと思いませんか?
「服を選ばず、気軽に履けるのがいいという声をよく聞きます」とは衣服・雑貨部の川上真由子さん。確かに、20代の男性がさらっと履いていても、40代の女性がナチュラルな服に合わせていても、60代の女性がワンピースとコーディネートしていても、どれも想像がつきます。
そして、履いた人にしかわからない「おお!」という感激が詰まったカップインソールが、とにかくすごいんです。
スニーカーから取り出し、目視で確認できるのは3Dマップのような独特な凹凸。「ロングセラーとして愛されていたコットンスニーカーを『無印良品の定番』だと自信をもっていえるように、2013年に改良したのがインソール。疲れにくく、歩きやすいという感覚的な部分をクリアするために、人間工学の専門家の先生と一緒に作ることになりました」(川上さん)
足入れしてまず感知できるのが、土踏まずの凸部分。
モリッと上がっていて、アーチが支えられている! と実感できます。
また、歩いて感じられるのが親指の付け根の凹み部分。
母指球(親指の 付け根のふくらみ)が接地、屈曲したときに、グリップ力が発揮されているのがわかります。
この凹凸は、疲れにくい歩行方法として理想的な“あおり歩行”がしやすくなるためのものなのです。
カップインソールだけではありません。
ホールド感が高まる芯が入ったかかと部分や、
かかとのすり減りを軽減するために厚みをもたせたアウトソール、歩行時の衝撃吸収性を高める足裏の工夫など、機能を語るにはスペースが足りません……。
素材は、環境や作り手に配慮したオーガニックコットン。泥はねや汚れがつきにくい撥水加工が施されているのに、キャンバスの風合いはそのままというのが嬉しいところです。
コンフォートシューズを作っているかのようなレベルで実験を繰り返し、疲れにくくて歩きやすい理由を数値化して形となったのが、このスニーカー。パッと見は飄々とした佇まいですが、企画者、開発者、生産者など、多くの人の知恵と思いが、快適な履き心地となって伝わってくるはずです。
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