目指したのは、パリの街角にある花屋さん「la France（ラ・フランス）」

【5日間特集】「アナベル」伊佐さんの、たまプラーザお店リレーvol.5

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今週の5日間特集でご紹介しているのは、本Web連載「おすすめ帖」でおなじみの「アナベル」伊佐洋平さんによる、ご近所で親交のある素敵なショップのご紹介。緊急事態宣言を受けて短縮営業をしているお店ばかりですが、オンラインショップなどの営業でも頑張っておられます。そこで「コロナに負けるな！」の気持ちを込めて５つのお店をWebを通して応援するこのコラム、ぜひご覧ください。

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photo：川本浩太　text：伊佐洋平

普段からたまプラーザで仲良くしている5件のお店をあらためて訪問し、オーナーさんたちにいろいろとお話を伺った今回の特集。最終日の今日は、アナベル店内のお花をいつも買っている「la France（ラ・フランス）」のご紹介です。

4年ほど前から月に1～2回のペースで行くようになった「ラ・フランス」さんは、看板らしきものは目に入らず、この花と緑に囲まれたナチュラルな空間全体が目印と言ってもよい。アナベルからは徒歩で10分ほどありますが、それでも行きたくなるお花屋さんです。

季節の花に誘われ、店内に入ってみれば、枝モノも充実する少し個性的な雰囲気を放つお花屋さん。オーナー・田中さんの佇まいも最高に素敵です。

5月でオープンから20年と2か月を迎えるというこちらは、田中さんご夫婦と数人のスタッフで切り盛りしています。今回は、インタビューをご主人に、写真は奥様に登場していただきました。

大きな園芸店で働きながら独立を目指していたお二人は、雑誌で見て憧れ的な存在であったパリのお花屋さん数軒を訪れた際に、ちょっとした衝撃を受けたのだという。パリには、そのどこを見ても非常にこじんまりとした、決して大きいとはいえないコンパクトなお花屋さんが多かったそうです。そのかわり、きちんとそれぞれに個性があり、主張がある。品ぞろえの良いお花屋さんではなく、センスの良いお花屋さんだったと。

そこで得た感性を持ち帰り、日本のお花屋さんの内装では「ツルツルした質感」が目立った当時、「ラ・フランス」では「ザラザラした質感」でエイジングのある内装をイメージしてお店作りをしたといいます。奥様独自のセンスで選び抜いたお花が並ぶ姿を想像しながら。

ファッションの中心はその起源も加味してやはりパリだと思うのですが、お花はどうなのでしょう？という質問に、「やはりパリなのかな」というお答えが返ってきた。お花そのものだけでなく、ライフスタイル全般がパリのファッション業界の影響を強く受けているということを感じるそうだ。オランダには、世界的に見ても相当な大きさの市場があるそうで、流通面でみるとその規模は世界一といってもいいのかもしれないが、パリの魅力はその中から何を選び、何と合わせるか？という、その変幻自在なアーティスティックな表現が魅力なのだという。

パリのお花屋さんは、東京・大田市場の10倍はあろうかという巨大な市場でお花を選んだかと思うと、その周辺の小さな花農家のトラクターに積まれたお花までくまなく見てまわり、それぞれの感性でミックスされた表現がお店に反映されるのだそう。それはもう、見ていて楽しくて仕方ないと田中さんはいう。洋服業界にも通ずるようないいお話が聞けた。

お花屋さんになった理由を聞いてみると、お二人とも特に専門の学校などを出たわけではなく、堅苦しい恰好をせず、日に焼けても文句を言われずに働けそうだったからだという。興味のあるお花屋さんに毎日顔を出しては、言われてもいないのに手伝いをして、いろいろ質問をして、そのうち向こうも根気負けをして「働く？」って聞いてきたと言う。そうやって、現場ですべてを叩き込むことでお花屋さんとしての基礎を身に着けたと。おそらく、我々のような洋服の販売のお仕事も含め、昔はそうだったのかもしれません。とにかく興味が人を突き動かし、好きなことに努力を重ねる。それが一番身につくのでしょう。

今回は、初めて器を持参して、奥様のお任せで花をお願いしてみました。するとさすがです。ほんの数分で、アナベルの店内に合う私好みの花束が完成してしまいました。

「la France（ラ・フランス）」という店名の由来を聞くと「大したことないんだけど…青りんごって綺麗でしょ？でも洋ナシは不揃いだし、熟成して美味しくなるじゃない」と。均一性がなくて、時間の経過を伴って美しくなるものに興味があったから。それが、ここにしかないものに繋がるのかなという思いが名前にあるそうです。現在はコロナウィルス感染拡大防止のため、お客さまは店内には入らずに店先で御用聞きをし、「あれと…あれを入れて2000円くらいの花束を！」といった、ちょっと斬新な営業方針で頑張り中です。お近くにお越しの際は覗いてみてください。

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