人が集ったら木の器で愉しむ朝ごはん

器店主の朝ごはん
2024.04.27

「THE SHOP 十二ヵ月」柿沼ひとみさんvol.4

こんにちは。愛知県名古屋市「THE SHOP 十二ヵ月」の柿沼です。
4回目の最後は、大忙しな朝ごはんの日のお話しです。

昔から何かと人が集まる我が家。子供たちが小さい頃には、甥っ子や姪っ子たちが長期で度々住人に。高校や大学生になると、大勢を引き連れて帰ってきて、翌日は家から登校する合宿所のように。今では、十二ヵ月を通して遠くの親戚のようにお付き合いくださる皆さんが、自宅に泊まりに来てくれます。
元々は最大6人家族でしたが、10人以上になることなど度々で。こんな日には、簡単にボリュームを出せる朝ごはんが定番です。


この日のメニューは、大量のパン、自家製ベーコン、鶏のコンフィ、野菜の盛り合わせに定番の副菜を添えて。勝手に好きなだけ食べてくださいね(笑)のオープンサンドに。
作っておけば切って並べるだけ。後はお好みのドリンクで召し上がれ。かつては食べる側だった息子や娘も、今では進んで調理してくれるおもてなし側に。本当に助かるようになりました。


パン食の時の基本は、木の器です。パンは焼きたて以外リベイクしたい派なので、木のお皿が欠かせなくなりました。
十二ヵ月へのお客さまがお泊まりの日は、やっぱりコーヒーを美味しく淹れたいので、お店に移動してからの朝ごはんが多いですね。いつもカフェのメニューを盛っている器たちは、こんな感じに使用していますよ。


■icura /
 丸皿・大(ほりほり), 角皿・中(つるつる)
 カッティングボード, バターナイフ

焼きたてパンを美味しく食べるためには、オイル仕上げの木の器が最適だと思っています。木は呼吸をしてくれるので、蒸気を吸ってパンのカリッと感を持続させてくれますね。これは、揚げもの料理でも同じです。


呼吸をさせるためには、ラッカー塗装やウレタン塗装などで表面を固めてしまわないことが大切ですね。固めてしまう塗装は、いつか被膜が綻びて中に水分が染みてしまうことも。そうなると水分を放出してくれず、内部から傷んでいく原因にもなります。
経年でオイルが染み込んだ木の器は、深みが増していい風情です。そして、調味料なども更に染み込みにくくなるので、どんな料理にも愉しく使えます。


■野田里美 /
 銀彩カップソーサー
 銀彩ラテカップ&ソーサー(十二ヵ月オリジナル)

「育つ器」を唱えている野田さんの銀彩カップ。育てるか育てないか、どちらの選択もありですが、こうして並べてみると面白さがわかるかな。私はそれぞれの趣きを味わっています。

奥:新品の状態 (クールな銀色)
右:時々お手入れしながら使用 (シャンパンゴールドに変化)
左:10年弱育てながら使用 (堂々たる燻銀に変化)

モノへの理解も深まってきて、経年変化を愉しむ風潮が高まっていますが、銀については育てることに不安を感じる方が多いかもしれませんね。
アクセサリーと同じように、銀は硫化して色味が変化していきます。欧米では銀の食器はいつでもピカピカが当たり前ですが、度々のお手入れは少し負担に感じてしまうかも。変化を受け入れてゆるりと味わうと思えたら、器づかいの新しい愉しみに出会えます。


■谷口晃啓 / ココット, ピッチャー

日常への優しさを感じる谷口さんの器。厚みやフォルムも含めて、安心感があります。生成りのような表情には、使う側も自然体になります。毎日使うからこそ、シンプルな心地よさが一番だと改めて教えてくれますね。

谷口さんはお料理やお菓子作りも上手な方。いえ、暮らしのことを全般に何でも大切にこなせる方なのですよね。そんな作家がつくられる器は、作家ものとは思えない程に機能美を備えたアイテムが豊富です。今回はご紹介できず…ですが。
モノは作り手の内側から生まれてくるのですよね。やはりその人が表れます。


■早崎志保 / てんてん星銘々小鉢

どんな料理でも受け止めてくれる小鉢があったら…。そんな思いでお迎えしたガラスの小鉢です。

小鉢はいくつか揃えていますが、食材や盛る量、並ぶ器とのバランスを考えると、次々に買い足したくなってしまいます。そこで、全てを満たし量の調整が得意な器を、作家に相談して形にしていただきました。器好きは食器棚の中が直ぐに一杯になってしまいますから、万能な器は大助かりです。


■原口潔 / 真鍮ティースプーン

開業の際に揃えた真鍮のスプーンは、使い続けて28年が経ちました。

手しごとの器に似合うスプーンに出会うことが難しい時代でしたので、作っていただくしかないなと思い、生まれたモノです。
コーヒーを混ぜることが使用目的なので、匙は小さくマドラーのイメージで。当時はそんな考え方は珍しかったのでしょうね。驚かれる方が多かったのを思い出します。
真鍮も経年で色変化をしますが、毎日使っているお陰で特別なお手入れをしたことはありません。モノは使ってこそ生きる。このスプーンが体現してくれていますね。

 

《作品展情報》

◆野田里美 exhibition
 2024年5月18 (土) − 26日 (日)

◆icura/筒井則行 exhibition & workshop
 2024年6月15 (土) − 23日 (日)

 

ひと月の間、拙いコラムをご清覧いただき、ありがとうございました。
一つ一つへの思いを書き留めていくと、改めて言葉を紡ぐことの大切さが身に染みます。私と十二ヵ月の暮らしの中から、どなたかの心に届くものがありましたら幸いです。
ここでお伝えし切れなかったことは、ぜひお店で。いつでも愉しいお喋りをしにいらしてください。

 

→「THE SHOP 十二ヵ月」の記事はこちらから
→その他の『器店主の朝ごはん』はこちらから

THE SHOP 十二ヵ月

愛知県名古屋市中区上前津1-3-2-1F
TEL:052-321-1717
営業時間:10:00-18:00
定休日:火曜 (年末年始・お盆・連休は変則の場合あり)
Official site:https://www.jyunikagetsu.com
Online shop:https://online.jyunikagetsu.com
Instagram:@jyunikagetsu

肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。

ページトップ