器の力

器店主の朝ごはん
2024.10.26

「ムーシュリーク」福井さん vol.4

器店主の朝ごはん・10月担当のムーシュリークの福井崇之です。今回がラストになりますが、よろしくお願いします。


今回はほぼ昨晩の残りモノで作った、おにぎり朝ごはんです。

 


風見窯・ 7寸深皿
メインの器は、福岡の八女市で作陶されてます風見窯・杉田貴亮さんの7寸深皿です。鮭と明太子のおにぎりと卵焼きを。
風見窯の杉田さんは若くして研究熱心で、デザインを勉強してたこともあり工業デザインのような使うことを考えられた細かな作り、また古作の陶磁器の造形や釉薬の知識も深く、どこか新しさを感じるステキな器を作られています。この深皿も中心は真っ平ですが、適度な深さの縁があるので、今回のようにおにぎりと卵焼きを並べてワンプレート風に盛り付けたり、パスタやカレー、また煮魚などにも使えるとても万能な器です。

 


中田窯・上絵5寸リム皿
中田窯・中田正隆さんの上絵の5寸リム皿には、昨晩の残りモノの焼き豚と漬物を。青い呉須、赤い辰砂、モスグリーンの鉄は、釉薬の下(下絵)で発色した色で、焼成後に上絵の具で緑と黄色と黒で絵付けされています。下絵は少しボヤけていますが、上絵はクッキリとしていて、絵に奥行きがあり、また重ね焼きの時に見られる中心のオレンジ色の蛇の目など、それぞれが合わさり何とも言えないおもしろい雰囲気があります。

 


湯呑みは中田窯・そば猪口の大です。古作に見られる柳文様の絵付けですが、呉須の青では無く、モスグリーンの鉄の絵付けです。絵が少しぼやけて流れるような釉薬を掛け、より古い雰囲気が出てます。

 


太田哲三窯・中飛びカンナ小鉢
2回目登場の小石原焼 太田哲三窯・中飛びカンナの小鉢には前回はヨーグルトでしたが、今回は残りモノの小松菜のお浸しを。小鉢のフチの緑と小松菜の緑が合いさわやかですね。

 


斉藤幸代・花芯 花皿
イチジクを盛り付けた器には、淡路島で作陶されてます斉藤幸代さんの花皿を。
草花などの植物や縁起の良い幾何学文様などをモチーフにデザインし、昔からある型打ち※と呼ばれる技法で作陶されています。花皿は、縁が立ち上がって一枚が一輪の花のようにデザインされています。
縁が輪花だったり先程の中田窯さんの器のようにリムに文様があると、中心にちょこっと盛り付けるだけで驚くほど華やかになりますね。

※型打ちとは、、、まず器の形と細かな文様をデザインし、それを元に石膏などに形や文様を彫って型を作ります。そしてロクロなどで造形したまだやわらかい器を型に被せ、バンバン!と叩いて陰刻文様、またロクロだけでは出せない形を作ることが出来る技法です。時間や手間がかかりますが、その分、凝った美しい器を生み出せます。

 


まゆみ窯・掛け分けポット
緑茶を淹れたのは、まゆみ窯・眞弓亮司さんの掛け分ポットです。
どこかかわいらしい丸みや膨らみ、取手や口も、威張らない雰囲気が良いですね。お茶だけで無く、コーヒーもたまに淹れます。蓋を外してドリッパーを上に置いてドリップするのですが、ポットから注ぐコーヒーもまた美味しそうなのです。

 


太田秀世家具工房・フォーク 
岡山の工房で、ネジや釘などを使わない昔からの木組みの家具や小物を作られている太田 秀世さんと奥さんの久美子さん。小物類は主に久美子さんが作られてます。樹種の木目の違いが文様になって違いが分かって来ると楽しいです。木のカトラリーは、果物など口当たりがやさしくて良いですね。 

 


いついろ・やたら絣織のコースター
いついろ・山下絵里さんは、倉敷本染手織研究所で学んだ後、宮古上布の仲宗根みちこさんに師事し地元淡路島に戻り、主に手紡ぎ木綿や手積みの麻糸を草木染めした絣の着物や帯を織られてる作り手さんです。普段はあまり作られない、このコースターは、藍染と地元に自生するヤシャブシとの絣糸のやたら織りです。草木染めのやさしい色味に、手仕事の織の風合いの贅沢なコースターになってます。



山内染色工房・型染めの手ぬぐい
おしぼりとして使ってるのは、浜松にある山内染色工房・山内武志さんの型染めの手ぬぐいです。芹沢銈介さんのお弟子さんでもある山内さんも86歳になります。
古さを感じないプリミティブで普遍的な文様と色使いは、一つ一つ手で彫った型紙に防染糊を使った昔からある引き染めの技法で染め上げられています。また生地も特岡と言われる高級晒し生地で、使っていくうちにやわらかくなり、やさしい肌触りになってきます。タペストリー、カゴなどの目隠し、またハンカチ代わりにと重宝してます。

 

おにぎりや卵焼き、残りモノの焼き豚やお浸しなど、素朴な朝食ですが、ちゃんと器に盛るだけで、美味しそうになり朝から気分良く今日もがんばろー!という気持ちになります。 

お店をしてると「こんなキレイな器に合う料理作れないわ」という会話をよく耳にします。「いつもの家ご飯がより美味しくなるんですよ」と会話に入るタイミングがあれば、お話させてもらいますが、なかなか押し売りみたいな接客になるような気がしてあまり言えません。
でも時々、「いつものご飯が器のおかげで美味しくなりました、作るのが楽しくなりました!」とそんな風に言って貰えることもあり、器を使う楽しさを共有出来たことに嬉しくなります。確かに高級感漂う洋食器に肉じゃがを盛っても大丈夫かなと考えてしまうかもしれませんが、最近の器屋さんで取り扱う窯元さんや作家さんの器は家ご飯を問題無く美味しそうに盛ることが出来ると思います。
その地域の土など自然の材料を使い、手から生まれる器なので自然の食材で作る家庭料理が馴染むのは当然のことかもしれませんね。私もまた色々と楽しんでみたいと思います。

10月担当のムーシュリークの福井崇之でした。お付き合いいただき、ありがとうございました。

 

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ムーシュリーク

兵庫県洲本市本町5-3-1
TEL : 090-4498-9469
定休日 : 月・火・木 
https://mooshuleek.shop-pro.jp/
Instagram: @mooshuleek

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