〜乾燥に備える「乾燥季」の献立〜 茂田正和さんの食べる美容 料理教室レポートvol.3レポート【前編】

食べる美容 料理教室
2024.10.04

健やかで美しい肌を保つライフスタイルをデザインする、化粧品『OSAJI』のブランドディレクター 茂田正和さんは、プロの料理人も思わず唸るほどの料理の腕前の持ち主。著書『食べる美容』(主婦と生活社)では、季節ごとの肌悩みをケアする美容養生食を提案し、レシピ作成から調理まで担当。そんな茂田さんが自ら講師を務める料理教室が合羽橋の『釜浅商店』イベントスペースでスタート!耳寄り情報満載のレクチャーの様子を、不定期連載にてお届けします。


 

化粧品開発者として沢山のコスメを手がけるうちに、健やかで美しい肌を末永く保つには、“外からのケア”だけでは限界があると感じ、栄養学や薬膳を取り入れた美容のためになる“内からのケア”を追求、養生食レシピを考案するにいたった茂田正和さん。

第3回目の料理教室は、肌トラブルや老化を助長する根源ともいえる乾燥にフォーカス!

ラインナップは、茂田さんの著書『食べる美容』の中でも人気の高いココナッツ香るはらこ飯が主食で、肌のうるおい保持に必要な栄養をしっかり補える焼かない豚生姜焼きが主菜。一汁はかぶの豆乳スープで、副菜は豊かな香りが食欲をいっそうそそる、秋の旬を使った木の子といちじくのマリネです。


「リピーターの方はすでにご存知と思いますが、この料理教室は美容のための食のマメ知識が得られて、しかもお酒の味も楽しみながら調理できるという、ちょっとした背徳感も味わえちゃいます」と茂田さん。


今回は、近日中に訪ねる予定という土田酒造(群馬県)の旨みの強いお酒を、ドリンクオーダーのブースで紹介。この日本酒は、旨みの素であるアミノ酸、そして乳酸も含んでおり、日々適量をいただくことは美肌づくりに大いに役立つのだそう。

 

焼かないしょうが焼き


調理スタート1品目は、焼かないしょうが焼き。塩を刷り込んだ豚肉をジップロックに入れたら、おろした生姜に調味料を合わせた漬けダレを軽く揉み込み、教室の低温調理器に入れます。

そしてじっくりと熱を入れる数十分の間に、おかず、スープ、ご飯を仕込むという段取り。栄養面はもちろんですが、今回はとくにタイムパフォーマンスも秀逸なレシピでした。


時間が来たら豚肉を先に取り出して薄く切り、肉の旨みが移ったジップロックの中の漬けダレを回しかけ、千切りにしておいた生姜、ネギの小口切りをのせて盛り付け完成。

「豚肉は、タンパク質だけでなくビタミンB群も豊富。中でも糖質を代謝して疲労を回復してくれるビタミンB1の含有量はトップクラス。脂質代謝をサポートするビタミンB2、タンパク質の代謝をサポートするビタミンB6もしっかり摂れます」


低温調理は、風味や旨みを逃さすことなく、レストランのように柔らかくジューシーに仕上げられる調理法。しかも、食材の酸化やビタミン類の破壊を小さく抑さえられるという栄養面での魅力も。専用の低温調理器がない場合には、家の炊飯器や鍋での代用が可能。茂田さんがポイントを教えてくれました。

「炊飯器に60〜70℃のお湯をいれて、豚肉が入ったジップロックを沈めて保温ボタンをオン。あとは1〜2時間置いて置くだけでOKです。炊飯器の保温機能はだいたい65〜70℃で、これは豚肉の低温調理にちょうど良い温度帯。炊飯器以外なら、熱ムラが起こらないようにできるだけ大きな鍋に沸騰しきらないお湯をたっぷりめに用意してください。お肉が入ったジップロックを沈めたら蓋をして30分を目安に取り出してください」

この方法での低温調理は、豚肉のほかに鶏肉やメカジキの切り身などにも向いているそうです。

 

木の子といちじくのマリネ


「木の子は、薬膳の世界だと体にうるおいを与える食材と言われています。栄養素を調べてみても、うるおいの素と言われるアミノ酸が豊富。アミノ酸はタンパク質の構成要素であり、肌の天然保湿因子(NMF)の主成分なので、ちゃんと皮膚科学的にも肌のうるおいを高める食材と言えるんです」

今回使った木の子の中でも、舞茸は豚肉同様にビタミンB群が豊富。とくに肌や粘膜、髪や爪を健やかに保つ働きのあるビタミンB2、血流を高めて肌のターンオーバーを促してくれるナイアシン(ビタミンB3)をしっかり摂れるのが嬉しい食材です。


木の子に和えるマリネ液を準備する時には、茂田さんならではの面白いお話が。

「僕の本業は化粧品屋さんなので、こういうマリネ液のレシピを考える時は香水の香りの組み立て方を当てはめたりします。香水のノートって、トップノート、ミドルノート、ベースノートという構成で成り立っていて。大まかに、トップノートには柑橘系などの爽やかな香り、ミドルノートには花とか実の芳しくジューシィな香り、ベースノートにはスパイスや樹脂の奥深い香りが属します。これをマリネ液やソース作りに応用すると、より風味豊かに美味しく仕上げられます」

今回のマリネ液は、大白ごま油に塩糀やはちみつで塩味や旨味、甘味をつけてから、レモンをトップ、粒マスタードをミドル、シナモンをベースに見立てて、香りのバランスを整えたそうです。


このマリネ液に漬けた木の子に、「熟れるとシナモンのニュアンスが出てくる」とよく言われる、いちじくを合わせます。いちじくは、香水のミドルノートに設定されることもある果実なので、仕上がりの香りの豊かさがさらに倍増。

食べる直前までは冷蔵庫へ。フルーツを取り入れた冷製の食材は、ちょっぴりデザート感覚で献立の満足度が高まります。


「簡単なのに、調理している時から香りだけでうっとりするような美味しさを体感できるひと皿です。木の子はほぐし過ぎず、炒める時に軽くつまみ塩をしながら水分を出し、オイルをさっと軽く纏わせるように炒めるとベチャッとせず食感良く仕上げられますよ」


後編では、鮭といくらを使ったココナッツ香るはらこ飯、かぶの豆乳スープをご紹介!

こ飯を炊くのに使うのは、釜浅商店オリジナルのごはん釜。鉄器の釜とさわら材の釜蓋、いずれもこだわりが詰まった人気商品。土曜日の時間帯に参加した方は、プロ仕様の料理道具を体験後にサイズ感などをあらためてお店でチェック、手入れの仕方も質問してお買い物をされている方もいました。

→【後編】へ続きます

photo:小松原英介 text:石塚久美子

 

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『食べる美容』


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Profile

茂田正和

Masakazu Shigeta

音楽業界での技術職を経て、2002年より化粧品開発者の道へ。皮膚科学研究者であった叔父に師事し、肌にやさしい化粧品づくりを追究する中で、健やかな美しさにとっては五感からのアプローチも重要と実感。2017年、スキンケアライフスタイルを提案するブランド『OSAJI』を創立、ブランドディレクターに就任。2022年には、香りや食から心身を調律するOSAJIとレストランの複合ショップ『enso』(鎌倉・小町通り)を手がけ話題に。同年9月、初の著書『42歳になったらやめる美容、はじめる美容』(宝島社)を出版。2023年は、日東電化工業のめっき技術を活かした器ブランド『HEGE』のプロデュース、そして日東電化工業より分社化された株式会社OSAJIの代表取締役に就任と、自身にとって大きなターニングポイントの年となった。

Instagram : @masakazushigeta
https://shigetanoreizouko.com/

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