〜寒さに備える「厳冬」の献立〜 茂田正和さんの食べる美容 料理教室レポートvol.4レポート【前編】

食べる美容 料理教室
2024.12.27

健やかで美しい肌を保つライフスタイルをデザインする、化粧品『OSAJI』のブランドディレクター 茂田正和さんは、プロの料理人も思わず唸るほどの料理の腕前の持ち主。著書『食べる美容』(主婦と生活社)では、季節ごとの肌悩みをケアする美容養生食を提案し、レシピ作成から調理まで担当。そんな茂田さんが自ら講師を務める料理教室が合羽橋の『釜浅商店』イベントスペースでスタート!耳寄り情報満載のレクチャーの様子を、不定期連載にてお届けします。


 

安定感のある美肌を育むための食の工夫が詰まった、著書『食べる美容』のレシピを実践しながらより高い解像度で学べる、茂田正和さんの料理教室。回を追うごとにリピート参加者も増え、第4回目は初の鍋物がメインということでいっそう和やかな雰囲気の回となりました。

今回のラインナップは、乾燥はもちろん、寒さによる代謝の低下、血行不良のケアにフォーカスしたレシピです。主菜と一汁を兼ねた牛とろろ鍋、主食は塩麹生姜飯、副菜はほうれん草と八丁味噌のサラダ、牡蠣と栗のアヒージョの全4品を作りました。


「真冬の健康と美容を考えた時、まずは体を冷やさないこと、つまり食からのアプローチでしっかり温めてあげることが大事です。体が冷えてくると、汗をかかなくなりますよね。汗がそんなに重要なの?と思う方もいるかもしれませんが、例えばイランとかサウジアラビアのような中東の地域って、化粧水が日本ほど売れないんです。なぜかというと、日本の冬よりも湿度が低いのにも関わらず、気温が高いために汗をかき、それが保湿の役に立っているんです。皮膚科学的なメカニズムは後ほど説明しますが、要は、汗は肌を内から保湿する大切な要素で、冬でもじんわりと汗をかくには体を温める必要がある、ということです」

というわけで、今回のレシピは体を温めてうるおいを巡らせる素材選び、調味料も重要な役割を果たす内容になっています。

 

牛とろろ鍋

牛肉の鍋の上に、食べる直前に淡雪のようなとろろをのせて仕上げています。牛すじ、長葱、牛蒡、舞茸など、良い出汁の出る具がたっぷり入った、スープまで美味しくいただける栄養満点な一品です。



まずは、水を張った鍋に牛すじ肉を入れて強火で沸騰させてアクを抜くことから。アクが取れたら、長葱の青い部分と生姜を入れて中火で煮込みます。最短で10分、時間がある場合は30分ほど煮込んでから葱の青い部分と生姜を取り出して。そのまま白味噌、味醂、日本酒、醤油、砂糖で味付けをしたら、火を止めて気になるアクを引きます。



牛肉のほか鍋に入れる具は、3cm程度に切った長葱の白い部分、笹がきにした牛蒡、食べやすい大きさにほぐした舞茸、そして芹です。

「牛肉や舞茸には、ナイアシン(ビタミンB3)が豊富に含まれています。ナイアシンは、最近はサプリメントでも人気のビタミンで体の代謝を上げて血流を良くしてくれる働きがあります。冬場、体が冷えて血流が悪くなってくると肌のターンオーバーが停滞しやすくなり肌がくすみやすくなります。ナイアシンを少し意識して摂ることは、肌のターンオーバーを順調にするのに役立つので、今日はこのナイアシンだけでも覚えて帰ってください!冬の食材選びに悩んだ時は“ナイアシンが豊富な食べもの”で検索するとほかにもいろいろ出てきますよ」



あらためて鍋に火をつけ、具材を牛蒡→舞茸→芹→長葱の白い部分→芹→牛バラ肉の順で入れて弱火で煮込みます。煮込んでいる間に山芋をおろし、味付けをして食べる直前にとろろをかけてすぐに火を止めます。とろろが沈まないよう、鍋を覆うように牛バラ肉を並べることと、とろろをそっと流して決して混ぜないことがポイント!

「とろろの味付けは、粉鰹、味醂、白醤油で。もう少し塩気が欲しいと思ったら塩を一つまみ加えます。とろろ汁は出汁割りが一般的ですが、粉鰹と旨味の強い白醤油を使えば簡単です。通常出汁をとって捨ててしまう鰹の栄養も、粉鰹を使えば余すことなく摂れます」

 

塩麹生姜飯

主菜、副菜との相性を考えて決めたという炊き込みご飯は、体を温める生姜、乳酸菌を含み腸内細菌の活性化をしてくれる塩麹を使って。良い出汁が出る干し貝柱も入れることで、より奥行きのある味わいに仕上がります。

塩麹の活用など、食べもので腸内細菌の働きを善玉菌優勢にする“菌活”については、茂田さんから補足の説明が。

「腸内細菌と皮膚常在菌は相関していて、お腹の菌バランスが良いと肌にも良い影響があります。塩麹を始め、発酵食品を積極的に摂って腸活をしたいという時、非加熱で摂らないと意味がないと思っている方がまだ多いのですが、加熱されて死んだ菌もちゃんと腸内の善玉菌のエサになるので大丈夫。生きた菌を食べても大方は胃酸で死んでしまうので、加熱・非加熱の差異はさほどないんです。麹は食物繊維を多く含み、食物繊維もまた善玉菌を餌になるので、いろんな形で調理に取り入れたいですね」


研いだ米をご飯釜に入れて1.2倍の水、味醂、塩麹を加えて軽くかき混ぜ、さらにほぐした干し貝柱、千切りにした生姜、太白ごま油を加え蓋をして中火で炊きます。沸騰したら弱火でさらに10分炊き、火を止めて余熱で10分蒸らせば完成です。


「ほたての干し貝柱はとても良い出汁が出ますが、もう少しお手ごろでおすすめなのはおつまみ売場などで手に入るエイヒレです。また、今回は太白ごま油も加えて炊いているのですが、味わいにコクが出るだけでなく、食べものは水溶性だと消化が早く、油溶性になると消化に時間がかかるので、長く燃え続けて日中の体を温めるための仕掛けともいえます」

油分をまとったご飯は腹持ち抜群、お昼に食べればお夕飯の食べ過ぎ予防にも良いそう。一方で風邪や病み上がりの時には、油分を使わない水分たっぷりのお粥などにすると消化の負担が軽いので、自分の体調に合わせて使い分けがベストだそう。


後編では、ホームパーティなどにもぴったり、さっと用意できる副菜2品の調理の様子をご紹介します。

 

→【後編】へ続きます

photo:小松原英介 text:石塚久美子

 

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『食べる美容』


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Profile

茂田正和

Masakazu Shigeta

音楽業界での技術職を経て、2002年より化粧品開発者の道へ。皮膚科学研究者であった叔父に師事し、肌にやさしい化粧品づくりを追究する中で、健やかな美しさにとっては五感からのアプローチも重要と実感。2017年、スキンケアライフスタイルを提案するブランド『OSAJI』を創立、ブランドディレクターに就任。2022年には、香りや食から心身を調律するOSAJIとレストランの複合ショップ『enso』(鎌倉・小町通り)を手がけ話題に。同年9月、初の著書『42歳になったらやめる美容、はじめる美容』(宝島社)を出版。2023年は、日東電化工業のめっき技術を活かした器ブランド『HEGE』のプロデュース、そして日東電化工業より分社化された株式会社OSAJIの代表取締役に就任と、自身にとって大きなターニングポイントの年となった。

Instagram : @masakazushigeta
https://shigetanoreizouko.com/

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