〜ストレス不調をやわらげる「新生活」の献立〜 茂田正和さんの食べる美容 料理教室レポートvol.6レポート【前編】
健やかで美しい肌を保つライフスタイルをデザインする、化粧品『OSAJI』のブランドディレクター 茂田正和さんは、プロの料理人も思わず唸るほどの料理の腕前の持ち主。著書『食べる美容』(主婦と生活社)では、季節ごとの肌悩みをケアする美容養生食を提案し、レシピ作成から調理まで担当。そんな茂田さんが自ら講師を務める料理教室が合羽橋の『釜浅商店』イベントスペースでスタート! 耳寄り情報満載のレクチャーの様子を、不定期連載にてお届けします。
化粧品開発者として得てきた美容と健康に関する知見が、得意とする料理のレシピ考案にふんだんに盛り込まれた茂田正和さんの料理教室。肌をより健やかに美しく保つための栄養の組み合わせや調味料使いと、美味しく仕上げるための調理のコツや味つけの工夫がクロスオーバーする、他に類を見ないオンリーワンな内容が好評です。
1年を2ヶ月ごとに区切った、6つの時節に起こりがちな肌悩みに合わせて展開されてきた献立は、今回の「新生活の献立」で1クール目の最終回となります。そして、この「食べる美容 料理教室」は、好評につき次回より2クール目が始まります!(詳細は後編に告知があります)
今回、第6回目のラインナップは、主菜&主食として鰹の香味寿司、副菜がワカメのナムル、一汁に酒粕豚汁、そしてこの料理教室で初のデザート! きな粉バナナ豆花の4品です。
鰹の香味寿司
鰹の香味寿司は、書籍『食べる美容』の中でも茂田さんが気に入っているレシピの一つで、とくに春が旬の初鰹を使うと脂が少なくさっぱりと食べられるそう。体をつくる重要な材料であるタンパク質を摂れることはもちろん、女性にとって重要な鉄分や、ストレス不調を抱えやすいこの時期にきちんと補っておきたいもう1つの栄養素ビタミンB6も充実している食材です。
「鰹の赤身に含まれるビタミンB6は、皮脂の代謝や皮膚のターンオーバーを促してくれます。新生活が始まってストレスがかかると、女性ホルモンのバランスが乱れ、男性ホルモンの影響が強まるなど、ニキビや吹き出物に悩まされる方が増えるので、肌荒れ予防のためにも日頃からビタミンB6は食事からしっかり摂っておきたい栄養素です」
すし飯の仕込みは、茂田さんがプロデュースした直火可能なテーブルウェアHEGEを使って。この鍋は、アルミに特殊な表面加工をすることで熱伝導の早い調理鍋として使うことができ、しかも軽量かつスタイリッシュな見た目でそのまま器として食卓にも出せてしまう優れもの。
茂田さん曰く、すし飯をプロのように仕上げるコツはお米を炊く段階にあるとのこと。
「お米が炊き上がってからすし酢を加えるので、そこで水分量が増えてべちゃっとしてしまわないよう、まずお米をぱらっと炊き上げておくと良いわけです。そうなるとぴったりなのが、熱伝導の早いアルミの鍋。インドのバスマティ米やタイ米などをぱらぱらに炊きたい時にも良いですよ」
HEGEでお米を炊いている間に、米酢、砂糖、塩を混ぜてすし酢を準備しておきます。ご飯が炊き上がり、蒸らしが終わったらすし酢を入れてさっと切るように混ぜ、表面をならしたら濡れ布巾をかぶせて粗熱を取ります。
「HEGEは熱しやすく冷めやすいという特徴があるので、お櫃に移さなくてもすし飯がほどよく冷めます。このまま30分ほど置いたら、あとは盛り付けるだけです」
鰹は、小葱、大葉、生姜をまな板で叩いてから、塩麹とナンプラーを加えたタレで味を付けます。鰹の切り身とタレを混ぜ合わせて5分くらい置いて漬けにすると味が染みて美味しさアップ。このひと手間で、余分な水が出て鰹がねっとりとコクのある食感になるのです。
冷ましたすし飯に漬けにしておいた鰹を敷き詰め、上からミントの葉をのせて完成。鰹を漬けにするタレには大葉が使われていて、ミントの葉も実はシソ科なので食べると思いのほか好相性!後味がとっても爽やかです。まさに、日常の小さなストレスをリフレッシュしてくれそうな美味しさ。
「人間の味覚は、8割くらいは香りに支配されていると言われています。例えば、お水にシナモンをほんのひと振りして、鼻をつまんで飲むと無味無臭のお水としか思えないのに、鼻を開放して香りを感じながら飲むと甘みがふわっと広がります。面白いですよね。今回の香味寿司では、血合いの多い鰹の重めの香りに、生姜や小葱や大葉といった香味野菜やナンプラーの中間的な風味を重ね、最後はミントの清涼感が軽やかに鼻から抜けていくという香りの組み立てにすることで、味わいに奥行きを出しています。漬けのタレに入れている塩麹とミントの組み合わせもまた、味わいのコクが増すのでおすすめです」
食材の組み合わせがいつも同じになりがちなら、香りの相性が合いそうなもので組み換えてみると上手くいきやすいというアドバイスは、明日からも実践できそうです。
第3回〜乾燥に備える「乾燥季」の献立〜【前編】では、茂田さんが化粧品開発者として香水の調香をする際の、香りの組み立て方を解説されているので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
すし飯を冷ましている時間は、今回のテーマである“ストレス不調をやわらげる”ための美容食養生についてのレクチャータイム。寒い冬から暖かい春へと移り変わる気候、そして新生活の始まりと、急激な環境変化に晒されるシーズンに、ぜひ覚えておいて欲しい言葉があります、と茂田さん。
「 “脳腸相関”という言葉を、ぜひ今日は持ち帰って欲しいです。人類が誕生するよりも遥か昔、生命の起源とも言える細長い魚のような多細胞生物は、基本的に腸という臓器だけで生きているんです。進化の過程でやがて腸のまわりに神経系ができ、その後に脳ができたので、脳と腸はすごく密接な関係にあります。例えば、お腹の調子が悪いとすごく不安な気持ちになるし、逆にストレスがかかるとお腹を壊したり頑固な便秘になったりというのは、皆さん経験があると思います。とくに女性の場合は、ストレスが強くなるとホルモンバランスにも影響が及んで、月経時の辛さや月経不順などに繋がりやすいのでそうなる前のケアが肝心です」
「精神的にストレスを感じた時は趣味とかで発散することも大切ですが、一方で食べものによって腸を日頃から労ってあげると、腸内環境の安定によって自律神経のリズムが整いやすくなり、そうして心身ともに健やかに過ごせるようになると、ホルモンバランスの乱れも穏やかに改善されていく。こういった関連性を覚えておいていただけたらと思います」
脳と腸の双方向の関係性を示した言葉 “脳腸相関” をひも解くと、ストレスは早めにケアしたほうが良いこと、そして食の大切さがより解像度高く理解できました。つまるところ、日々の食事がリフレッシュやリラックスの時間になったら、最高ですよね。
後編で紹介するのは、腸内環境を良くしたい時にふさわしい発酵食品や食物繊維を摂れる3品。クリーミーな味わいに参加者さんが感嘆の声をあげた一汁の酒粕豚汁、さっと作れる副菜のワカメのナムル、そして蒸篭を使ったきな粉バナナ豆花の調理の様子です。お楽しみに!
→【後編】へ続きます
photo:小松原英介 text:石塚久美子
Profile
茂田正和
音楽業界での技術職を経て、2002年より化粧品開発者の道へ。皮膚科学研究者であった叔父に師事し、肌にやさしい化粧品づくりを追究する中で、健やかな美しさにとっては五感からのアプローチも重要と実感。2017年、スキンケアライフスタイルを提案するブランド『OSAJI』を創立、ブランドディレクターに就任。2022年には、香りや食から心身を調律するOSAJIとレストランの複合ショップ『enso』(鎌倉・小町通り)を手がけ話題に。同年9月、初の著書『42歳になったらやめる美容、はじめる美容』(宝島社)を出版。2023年は、日東電化工業のめっき技術を活かした器ブランド『HEGE』のプロデュース、そして日東電化工業より分社化された株式会社OSAJIの代表取締役に就任と、自身にとって大きなターニングポイントの年となった。
Instagram : @masakazushigeta
https://shigetanoreizouko.com/
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