器に合わせた、休日贅沢ブランチ

器店主の朝ごはん
2025.08.23

「nokaze -うつわと物語の家-」中藤さんご夫妻 vol.4


こんにちは。京都・岡崎の器ギャラリー「nokaze -うつわと物語の家-」を営んでいる中藤夫婦です。全4回でお届けしてきたこの連載も、とうとう最終回になりました。
これまで、特別ではない「ふつうの朝ごはん」が、器ひとつでこんなにも気持ちの上がる時間になるんだ、ということをお伝えしたくて、vol.1からvol.4まで綴ってきました。
ただ今日は、これまでの“ふつうの朝”とは少し違います。

「どうしてもこの器を使いたい」

お気に入りの器をどうしても使いたくて、器に合わせて作った、休日のブランチをご紹介します。天気が悪い日だったので、光が入らず、ライトをつけておりますこと、ご承知おきください(笑)。



休日の朝、信楽焼の器に導かれるようにキッチンへ

どうしても今回の連載で使いたかった、その器は、信楽焼で作陶される山本勝則さんのどんぶり。信楽焼ならではの、ざらっとした土味。数を数えるとおそらく1,000近くはありそうな、一つ一つが手で彫られた力強くも美しい「しのぎ」紋様。重厚感があるのに、軽くて使いやすい。そんな、我が家の超お気に入りのどんぶりです。このどんぶり、蓋付きで、ここまで使いやすいどんぶりはなかなか見たことがありません。
「この器に、たっぷり具材を盛り込んだブランチ丼をつくりたい。」
いつものように“食事を器に盛る”のではなく、“器が食事を呼んだ”朝でした。



信楽焼のどんぶりが彩る、そぼろと炒り卵の二色丼

山本さんのどんぶりを最大に活かして、でも朝ならではの簡単に作れて、食べやすい丼にしたい。そのような気持ちで選んだメニューは、そぼろと炒り卵の二色丼。ほかほかの白ごはんの上に、甘辛く炊いたそぼろと、ほんのり甘い炒り卵をたっぷりと。仕上げに元気の源、栄養満点の「ブロッコリースプラウト」をアクセントとして添えました。
この“ざっくり、でも少し丁寧なごはん”が、山本さんの器に驚くほどよく馴染むのです。風格、模様から力強い印象のどんぶりなのに、不思議と優しさがあって、素朴な料理を温かく包み込んでくれるような包容力があります。
山本勝則さんの「しのぎ」模様は、全て手で掘られているからこそ、世界に一つのどんぶりであり、何度使っても、食事中に「しのぎ」模様を眺めてしまう。楽しみを倍増させてくれる器です。



副菜を引き立てる、花しのぎのお皿

おかずを添える小鉢にも、どんぶりと合わせて、山本勝則さんの「花しのぎ 小」を使いました。小ぶりながら、ひと目でわかる存在感。信楽の土のあたたかみの中に、きりっとした鎬(しのぎ)のラインが凛と映えます。
どんぶりががっつり飯だったので、副菜はフルーツで。キウイをただ切って載せても、外側に広がる花柄の紋様がキウイを引き立て、華やかにしてくれました。
忙しくて、朝はフルーツやヨーグルトだけ食べるという方も、フルーツも器が変われば、見た目も全然変わるので、フルーツに合わせた器を探すこともおすすめです!



信楽焼で統一感を!藤原 純さんのゴブレットでコーヒーを

そして、今日はとことん信楽焼にこだわります笑
ドリンクにも、信楽焼。藤原純さんのゴブレット(グレンケアン)でアイスコーヒーをいただきました。
藤原純さんのゴブレット(グレンケアン)は、信楽焼では珍しい形状ですが、ワイングラスとも違う、独特のフォルムが魅力。
アイスコーヒーを入れてもよし、お酒を飲んでもよし。いろんなドリンクにあうゴブレットです。ちなみにグレンケアンとは、ウイスキーのテイスティンググラスとして有名なグラス。そのグラスと近いフォルムの作品になっています!そのため、私は、夜はこのゴブレット(グレンケアン)でよくハイボールをいただいています。
休日の朝、素敵な器で飲むコーヒーは本当に味が違います。ほんの少しだけのご褒美です。

信楽焼の作品は作家さんの“物語”と”個性”が詰まっている

今回使った3つの器は、すべて信楽焼。滋賀県・甲賀市信楽町で育まれてきた、1300年以上の歴史を持つ焼き物です。信楽焼という名前だけ聞くと、どこか素朴で、自然由来の力強さがある印象を勝手に感じます。
けれど、それだけではないと私は感じています。現代の信楽焼は、作家さんの個性が存分に発揮された“表現の焼き物”ではないかなと感じます。
同じ信楽でも、山本勝則さんの器は、シンプルな色の中の「しのぎ」の繊細さと華やかさが魅力的であり、藤原純さんの作品は、特徴的な藤原ブルーの色彩の豊かさとカッコ良いフォルムがアートのような魅力を放っており、作家さんごとに個性が異なり、作り手の物語がしっかりと込められています。第一回と第二回で紹介した古谷製陶所も信楽焼ですが、また山本勝則さん、藤原純さんの作品とは違う温かさが特徴的です。
そんな作品一つひとつの魅力から、この作家さんはこういう考えでこのデザイン、色、模様の作品を作っているんだと想像しながら楽しむのも器の魅力。
そして、そのような作家さんの背景を知ってもらえるように、私たちギャラリーも頑張らないといけないなと日々感じています!
そんな信楽焼ですが、「nokaze -うつわと物語の家-」には信楽焼の作品が、たくさん揃っています。
土の表情を感じたい方
日常に寄り添う器を探している方
作り手の想いを感じながら、個性的な器との出会いを楽しみたい方
そんな方に、ぜひお越しいただき、直接目で見て器と対話してみてもらいたいなと思っています。


今日使った器たち

山本勝則(信楽)しのぎ どんぶり(作家詳細はこちら
・信楽の土味と、しのぎの立体感が美しく共鳴する存在感のあるどんぶり
・土の表情と落ち着いた釉薬が、日常の料理を包み込むように引き立ててくれる
・力強さとやさしさを兼ね備えたフォルムで、たっぷりの丼ものにもぴったりな一品
山本勝則(信楽)花しのぎ 小(作品詳細はこちら
・花のような縁取りと繊細なしのぎ模様が特徴の小鉢
・副菜や和え物、果物などを盛るだけで、凛とした空気感をまとわせてくれる器
・素朴さと品の良さが調和し、毎日の食卓を美しく整えてくれる
藤原 純(信楽)/グレンケアン ゴブレット(作品詳細はこちら
・ウイスキーグラスを思わせるグレンケアン型を、土物で表現した稀有なゴブレット
・土の温かみとシャープな造形のバランスが絶妙で、冷たい飲み物に特別感を添える
・藤原さんならではの美意識が光る、信楽焼の新たな表現を感じられる一杯用の器






4回の連載を終えて

~読んでくださった皆さまへ~
全4回にわたって綴ってきた「器で叶える、マイカフェモーニング」。
第1回は、冷蔵庫にあるもので叶える、カフェモーニング
第2回は、パンとスープと、器の魔法
第3回は、ひんやり、夏の朝を彩るガラス風景
そして、最終回の今回は「器から始まったブランチ」でした。
毎回、特別な食材を使ったわけではありません。どれも非常に簡単に作れます。それでも、器を変えるだけで、こんなにも心が整い、日常が愛おしく感じられる。この連載が、みなさんの「今日、どの器にしようかな」というちいさな選択のヒントになっていたら、本当にうれしく思います。


最後に:器と物語に出会える場所


「nokaze -うつわと物語の家-」は、京都・岡崎にあるちいさなギャラリーです。ここには、全国の作家さんが手がけた器が集まっています。とくに、今回の信楽焼をはじめ、土の表情が豊かな器が多く並んでいます。
器とともに、作家の想いや背景、そして日々の食卓にそっと寄り添う物語を、これからも皆さまに届けていけたらと思っています。どうぞ、ふらりと立ち寄っていただけたら嬉しいです。

ご愛読、本当にありがとうございました。皆さまが、器と物語に出会える日を、心から応援しています。
— 中藤裕之とその妻より

 

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nokaze -うつわと物語の家-

京都府京都市左京区岡崎⻄天王町84-1
(京阪 神宮丸太町駅、地下鉄東西線 東山駅から徒歩10分)
TEL:075-203-4917
営業時間:12:00〜17:00
定休日:月〜水曜
https://shop.kyoto-nokaze.com
Instagram:@nokaze_ikustyle

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