〜老化リスクの高い夏に基本のタンパク質をしっかり摂る“鶏肉の献立”〜 茂田正和さんの食べる美容 料理教室レポートvol.8レポート【前編】
健やかで美しい肌を保つライフスタイルをデザインする、化粧品『OSAJI』のブランドディレクター 茂田正和さんは、プロの料理人も思わず唸るほどの料理の腕前の持ち主。著書『食べる美容』(主婦と生活社)では、季節ごとの肌悩みをケアする美容養生食を提案し、レシピ作成から調理まで担当。そんな茂田さんが自ら講師を務める料理教室が合羽橋の『釜浅商店』イベントスペースでスタート! 耳寄り情報満載のレクチャーの様子を、不定期連載にてお届けします。
化粧品開発者を本業とする茂田正和さんの知見に紐づいた、「何をどう調理して食べると、どんな風に肌に良いことがあるのか?」という解説のわかりやすさ抜群。「食べる美容」料理教室には、老若男女を問わず、ナチュラルにいきいきと日々を過ごしたいと願う皆さんが幾度となく訪れています。
好評につき5月より始まった2クール目では、季節ごとの肌悩みに合わせた1つの食材を、さまざまにアレンジして美味しく食べる献立を展開。今回のテーマは、タンパク質の宝庫である「鶏肉」です。
ラインナップは、柚子胡椒香るタッカンマリ、鶏皮ネギ冷や奴、鶏出汁生姜飯、鶏ひき肉と茄子の黒酢マリネ。調理の仕方や調味料の組み合わせで味わい豊かに仕上げ、猛暑でバテ気味の体を活気づけてくれる4品です。
「 “美容食養生”の考え方で鶏肉と食材を合わせた今回の4品は、僕なりの韓国料理という感じでレシピを組み立てました」と茂田さん。まずは、なぜ夏の肌にとって鶏肉が有効なのかをわかりやすく解説してくれました。
夏の強い紫外線を浴びることで心配なのは、UVケアで日焼けは防げたとしても、防ぎきれない光線の一部が肌の奥、真皮層まで浸透してハリや弾力を保ってくれているコラーゲンが破壊されること。その修復には細胞の材料となるタンパク質が必要で、不足すれば肌が萎んでシワやたるみが起こりやすくなります。また、タンパク質の不足は角層のターンオーバーを停滞させ、本来は排出されるはずのメラニンが残りやすくなるので、シミの生じやすさにも繋がるそう。
「この料理教室ではほぼ毎回、タンパク質の重要性をお話していまして。人間の体にとって1日に必要なタンパク質量は、その人の体重の1/1000g。つまり体重が40kgの人なら40gは1日の食事で摂取する必要があります。しかし、これを例えば木綿豆腐だけで賄おうとすると、豆腐は水分が多いので木綿豆腐2丁(600g)も食べないと満たせないんです」
この計算を鶏むね肉に当てはめると、約160gで40gほどのタンパク質を賄えるため、鶏肉は1日の必要タンパク質量を効率良く満たすのに最適と言える食材。もちろん、鶏肉とお豆腐を合わせた料理を取り入れれば尚良し、とのことで今回の献立には鶏皮ネギ冷や奴も入っています。
柚子胡椒香るタッカンマリ
主菜のタッカンマリは、鶏手羽、ナツメ、山芋に香味野菜や塩麹を合わせた、滋養溢れる一品。
水を張った鍋に鶏手羽を入れて強火にかけ、沸騰したらアクを引いて長ネギの青い部分と生姜、小さじ2ほどの米を入れて中火で10分煮込む。米はスープを乳化させ白濁させることに役立ちます。
「鶏手羽はあらかじめ関節部分に庖丁を入れておくことをおすすめします。このひと手間だけで身のほぐれが良くなりますし、骨から出汁が出やすくなっていっそう美味しく仕上がるんです」
10分経ったら長ネギと生姜を取り出して山芋とナツメを入れ、塩麹も加えて沸騰しないギリギリの火加減でさらに5分煮込む。
「タッカンマリはスープも楽しむ料理なので、ここで水分が減り過ぎて鶏手羽がのぞいているようであれば、少し水を追加してひたひたにしてから再度火を入れてくださいね」
タッカンマリの味わいは鶏の旨みと塩麹のマイルドな塩味のみなので、柚子胡椒やニラキムチを添えて味変しながらいただくと、飽きることなくペロリと完食できます。
「ニラキムチは、おろしニンニクに醤油、塩麹、粉唐辛子をよく混ぜたタレを、ボウルの中でニラと合わせ、味をなじませたら最後にごま油を垂らしてコーティングします。この時、油を先に入れてしまうと調味料をはじいちゃうので気をつけて。この簡単キムチは、ニラ以外にも軽く塩揉みして水切りした白菜や海藻で作ってみるのもおすすめです」
鶏皮ネギ冷や奴
鶏の旨みが凝縮されている鶏皮はコラーゲンを多く含んでおり、皮膚や粘膜の健康に役立つビタミンB群の一種であるナイアシンも豊富。ネギと合わせて冷や奴にのせればタンパク質チャージにぴったりな副菜に。
フライパンに鶏皮の皮目側をのせて、弱火〜中火でじっくり揚げ焼きに。カリカリになったらキッチンペーパーにのせて油を切ります。
「鶏皮は、冷たい状態から焼くと油がしっかり出るので、フライパンを少し傾けてその油に鶏皮が少し浸る状態で揚げ焼きにするとカリカリに仕上がります。フライパンを温めてから焼くのも間違いではないのですが、油の出方が少なくなるのでややカリカリに仕上げにくくなってはしまいます」
フライパンの火を止めて、鶏皮から出た油を拭き取らずに甜麺醤、醤油、みりんを合わせたタレを入れ、輪切りにした長ネギと鶏皮を加えて余熱で和えたら絹ごし豆腐の上に盛り付ける。
盛り付け後に白胡麻を散らして完成。つるんと喉ごしの良い淡白な絹ごし豆腐と、ネギの辛味や味噌のコクを纏ったカリカリの鶏皮のコントラストが絶妙! お酒のおつまみにもぴったりなひと皿でした。
お料理に合わせてチョイスされたドリンクバーには、千葉県にある酒造でコシヒカリを100%使って作られているという「華マッコリ」のほか、徳島にあるワイナリー Natan葡萄酒醸造所のロゼワイン「Margarites」、山形県産の発泡ワイン「Pump up オレンジ」、そのほか白ワインやシードルなどがずらり。
「マッコリは、今の時期ならビールと1:1で割るのも美味しいですし、僕のおすすめはトマトジュースで割って飲む“トマッコリ”。今日も美味しいトマトジュースを持ってきているので、気になった方はぜひ試してみてください」と、茂田さん。
ノンアルコールドリンクは、台湾烏龍茶にドライマンゴーをたっぷり漬け込んだフルーティなマンゴー烏龍茶や、発酵レモンシロップのソーダ割りなど、お家で再現してみたくなるようなフルーティな味わいのドリンクが並んでいました。
→【後編】へ続きます
photo:小松原英介 text:石塚久美子
Profile
茂田正和
音楽業界での技術職を経て、2002年より化粧品開発者の道へ。皮膚科学研究者であった叔父に師事し、肌にやさしい化粧品づくりを追究する中で、健やかな美しさにとっては五感からのアプローチも重要と実感。2017年、スキンケアライフスタイルを提案するブランド『OSAJI』を創立、ブランドディレクターに就任。2022年には、香りや食から心身を調律するOSAJIとレストランの複合ショップ『enso』(鎌倉・小町通り)を手がけ話題に。同年9月、初の著書『42歳になったらやめる美容、はじめる美容』(宝島社)を出版。2023年は、日東電化工業のめっき技術を活かした器ブランド『HEGE』のプロデュース、そして日東電化工業より分社化された株式会社OSAJIの代表取締役に就任と、自身にとって大きなターニングポイントの年となった。
Instagram : @masakazushigeta
https://shigetanoreizouko.com/
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