【おひとりさま外食①】カウンターで楽しむしゃぶしゃぶ。みんなおひとりさまの店

おひとりさま外食
2026.01.05

2026年最初の特集は【おひとりさま外食】をテーマにお届けします。

ひと口に【おひとりさま外食】といっても、状況はさまざま。誰かを誘う時間はないけれど、サクッとおいしいものを食べたいとき、のんびり自分時間を楽しみたいとき、はたまたちょっといいお店でご褒美外食を味わいたいとき……。

「自分の気持ちにフィットするお店を選ぶと、ひとり時間が充実します」と話すのは、飲食コンサルタントのサカキシンイチロウさん。この特集では、サカキさんの著書『大人の東京おひとりさま外食』(主婦と生活社刊)から、【おひとりさま】にやさしいお店を、4つのシチュエーションにわけてご紹介します。



この特集のナビゲーター・飲食コンサルタントのサカキシンイチロウさん。プライベートでも、朝昼お茶と1日2回以上、年間1000回もの外食をする“食いしん坊”さん。


【situation1_テキパキ外食】
おいしいものをテキパキ食べて、
お腹いっぱいになる
しゃぶせん銀座店

 

ひとり鍋。ひとりしゃぶしゃぶ。最近、そういうお店が増えています。増えた理由はいくつかあります。たいして親しくない人と同じ鍋をつつきたくない。みんなのペースに合わせて食べなきゃいけないのは面倒くさい。ほかの人に気をつかいながら食べるのは窮屈だからと、日本料理店でも「ひとりひと鍋」で提供することが多くなりました。あら、旅館の朝ごはんみたいで上等じゃないの……、ってよろこぶ人も多くて、飲食店では大きな鍋の出番が少なくなっています。


鍋には、ほかの料理にはない楽しさがあります。
いつもはのんびりしている人が、突然、鍋奉行になってみんなに指示を出したりしてネ。ひたすら食べることに没頭する人。タレをどっぷりつける人。具材を入れる順番にこだわる人とか、いつもと違った人となりが垣間見えたりするのが楽しい。食べ続けると鍋の中は育っていきます。アクをそのままにして食べ続けたり、具材を煮込みっぱなしにすると〆がおいしくなくなっちゃうから、おいしい鍋に育てることは共同作業。自然と鍋を囲むみんなの距離を縮めてくれるんですネ。


そう。鍋は「囲む」料理なんです。


「今日は鍋にしようか」っていうより「今日は鍋を囲もうよ」っていう方がずっと楽しくおいしく感じる。鍋から湯気がわきあがり、クツクツ沸騰していく様子を見るのは、まるで焚き火をみんなで見ているようなあたたかさ。ひとりで鍋を食べると味わうことができない鍋の醍醐味が「囲む」感覚。
ひとりで行っても囲む感覚を味わえる鍋のお店が銀座にあります。

 

おひとりさまにやさしいカウンター

「しゃぶせん」という一人ひと鍋の専門店。1971年に銀座で開業。経営しているのは関東ではじめてしゃぶしゃぶという料理の提供をはじめたといわれる「ざくろグループ」。上等なしゃぶしゃぶや、すき焼きを気軽に楽しむことができるというので人気のお店です。2023年に再開発のため、今の場所に引っ越してきました。だからお店は真新しくて、それでいてお店の設え、ムードは以前のお店を思い出させる。時を超える歴史を感じて背すじがシュッと伸びます。

カウンターだけ、65席。隣が気にならない間隔で、座り心地のよい椅子が並べられています。一席に鍋がひとつ。カウンターに、鍋がすっぽり入る穴が開けられていて、そこに鍋が収められているのが独特。そしてやさしいんです。首を伸ばさなくても鍋を上から見おろすことができる高さなんですね。具材が鍋の手前に張り付いてほったらかされて、かわいそうな状態になってしまうことがありません。

カウンターの中に大きな肉切り用のスライサーが置かれています。そこで肉が削られる。薄く削った肉をお皿にふわっとのせる。肉の塊が魔法をかけられたように、花びらみたいにお皿57をおおっていくさまに、思わずうっとり。あれがボクのところにやってくるのかしら……、って思いながら待つのは楽しい。

おひとりさまがかなりいらっしゃるんじゃないかなぁ……。もっともカウンターですから、何人で来てもズラッと横並び。ぱっと見だけではおひとりさまかどうかわからぬところが、心地よい。そしてみんなが肉を削ってるお店の人の手元を見ています。まるで大きな鍋を囲んだときに、みんなの目が鍋に集中するように、ここでは肉を削るお店の人に視線が集まる。ひとつの鍋を囲むかわりに、お店の人を囲んでいる。それで不思議な一体感を感じて、さみしくならないのがこの店独特。おひとりさまとしてありがたい。

肉と野菜が別のお皿でやってきます。どちらも盛り付けはうつくしく、お行儀よく丁寧に食べなくちゃ……、って気合いが入ります。白菜やネギのように火が通りにくいものをまず鍋に入れ、肉は一枚一枚。牛肉は2つに畳んでスープにそっと沈めて決して動かさず、表面の色が変わったところで引き上げいただきます。スープの中でひらひらさせるとおいしい肉汁がスープに溶け出してしまいます。アクも散らかり、せっかくの肉のおいしさを堪能できない。だからそっと沈めて食べる。豚肉は野菜の上に置くようにしてしばらくそのまま。熱がしっかり入ったところで引き上げるとよい。

育てた鍋のスープで〆

お店の人がここぞというときにやってきます。例えばスープが減ったとき。例えば豆腐が取り上げられず難儀しているときに「お取りしましょう」と取り上げ、タレの入ったとんすいに入れてくれたりするのです。スープの温度が上がりすぎたり、下がったりすると温度調節もしてくれて、アクまですくってくれたりするの。ひとりで鍋をつついているわけではないのですネ。お店の人との共同作業で鍋を育てる感じがうれしい。育てた鍋のスープをカップに注いで、味を調えてくれたりもします。残った鍋のスープで中華麺を作って〆にするのも悪くない。ご飯のおかずとして、しゃぶしゃぶを食べるのもよし。

ボクはここのあずきが好き。小豆を入れてぽってり炊いたお粥に、砂糖を好みで入れて食べるのだけど、甘いお粥と塩の風味の〆のスープの組み合わせが不思議とおいしい。デザートも充実していて、中でもくずきりは食べておきたい甘味のひとつ。人気の店で時間にかかわらず待ちの行列ができているから、チュルッと食べたら次のお客さまに席を譲るのが粋というもの。ハシゴが楽しい銀座にあってくれてどうもありがとう。そう思いつつ、お店をあとにいたしましょう。

 

撮影:黒川ひろみ


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定価:1980円(税込)
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著者:サカキシンイチロウ
撮影:黒川ひろみ・有馬貴子
デザイン:天池聖
マップ製作:重志保
協力:森有貴子
校閲:文字工房燦光
主婦と生活社刊

しゃぶせん銀座店
東京都中央区銀座5‐7‐10 イグジットメルサ8F

電話◉03-3572-3806
営業◉月~金:昼11 時~16時30分(LO15時30分)、夜17時~ 22 時(LO21時)土日祝:昼11時~15時、夜15時~22時(LO21時)
定休日◉ 年末年始、休館日(2月・8月の第3月曜)
国産牛リブロース・国産豚ロース 4180円
◎おひとりさま ◎ふたりで △大勢で

 

Profile

サカキシンイチロウ

Shinichiro Sakaki

1960年愛媛県松山市生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、店と客をつなぐコンサルタントとして1000社にものぼる地域一番飲食店を育成。語学力と行動力と豊富な知識で戦略を展開する。飲食店の経営のみならず、食全般に関するプロデュース、アドバイスを主な業務として活躍中。著書に『おいしい店とのつきあい方。』(角川文庫)などがある。毎日更新しているブログ「サカキノホトンブ」やnoteでも発信中。

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