【大人の新宿おひとりさま外食】伊勢丹の重力を楽しむ。買い物の合間のおいしいもの
この春、大好評だったサカキシンイチロウさんによる【大人のおひとりさま外食】特集がかえってきました! 今回、取り上げるのは、日本一の乗降客数を誇る〈新宿駅〉です。
人混みをすり抜けた先に待っている、ちょっとホッとする自分だけの居場所。どうぞ、のぞいてみてくださいね。
*****
かつての宿場町・新宿三丁目界隈
世界一の乗降客数を誇る世界一の駅が新宿駅。そこから歩いて5分かからぬ新宿三丁目の交差点には、売上高世界一の百貨店、伊勢丹新宿店があります。

伊勢丹は新宿三丁目を中心に回る惑星のような存在。引力があります。それも世界一の売上高という引力です。人を惹きつけ、世界中から上等なものや流行を引き付ける、圧倒的な重力を持った場所。それが伊勢丹新宿店。伊勢丹が引き寄せる人たちで周囲の店は潤い、新しい店も、その引力に引き付けられるように集まってくる。
そもそも新宿は甲州街道、最初の宿場町。その中心は新宿二丁目から三丁目にかけてのエリアで、つまり伊勢丹が今ある界隈。古くから栄えた町で老舗が多い。
「追分だんご本舗」なんてまさに宿場町新宿の歴史と深い縁があるお店です。元禄時代、宿場町として栄えたこの地に茶屋があり、そこで提供されていた「追分だんご」を復活したのが、この店の成り立ち。奥に喫茶室があって、そこで団子を食べて当時の旅人の気持ちになるのも乙なもの。ここの餅は伸びが良く、風味も豊かで汁粉もうまい。夏のかき氷は新宿三丁目の風物詩といってもいいほど人気があります。

撮影:有馬貴子
「船橋屋」という天ぷらの専門店も老舗のひとつ。創業明治19年。おひとりさまにやさしいお店でもあるのがうれしい。ランチタイムは手軽な値段の天丼から、天ぷらコースまでメニューは多彩。カウンターに座れば、天ぷらが目の前で揚がる様子を楽しめます。揚げたての天ぷらが湯気と一緒に運ばれてきて、熱々のサクサクをすかさず味わう。カウンターの外にもお店の人がひかえて、快適に食べることができるように気配りをしてくれる。思わず背筋がシャンと伸びます。油を使う店なのに空気はキレイ。油を使った料理なのにお腹を重たくしない軽さがありがたい。


撮影:サカキシンイチロウ
伊勢丹が今の秋葉原から新宿三丁目に引っ越してきたのが1933年。昭和8年のこと。それから伊勢丹のにぎわいに呼応するように魅力的な店が次々開業します。そしてそれらの多くが、おひとりさまにやさしい工夫をしてくれる。銀座という街もそうだけれど、買い物を目的に人が集まる街は、おひとりさまにやさしいお店の街になるんです。
「長春館」という焼肉屋さんが新宿御苑のちょっと手前にあるのだけれど、ここは創業昭和29年。炭焼き焼肉を東京で最初にはじめたお店だといわれる名店。水を張った深皿に炭を入れた鉢をのせ、網で肉を焼き上げる。煙を吸い込むダクトがしっかり完備したカウンター席に座れば、ひとりひと鉢。網を独り占めして焼けるんです。おひとりさま用の弁当箱に肉や野菜がおさまった定食メニューが充実していて、ハーフサイズの追加のお肉があったりもする。なにより冷麺がおいしいの! 肉のお弁当一人前を焼きながらハーフサイズの冷麺を食べてお腹いっぱいにするのがボクの楽しみ方。

撮影:サカキシンイチロウ
買い物の余韻にひたる贅沢ランチ
買い物の合間においしいものでほどよくお腹を満たしたい。そんな気持ちに応えるお店がいくつもあって、中でも「ル・ブラン」というカフェレストランがボクは好き。テーブルクロスが敷いてあるんです。椅子がゆったりしているのもいい。ベンチチェアが多くて、そこに座れば、ショッピングバッグをかたわらに置いて、ゆったり食事を楽しめます。シーフードドリアが有名で、しかもおいしい。注文するときにはぜひ「よく焼いてくださいませ」って注文してみて。カリカリに焼けたチーズが香ばしく、ベシャメルソースのなめらかさと、バターライスのホツホツ転がる食感を心置きなく楽しめるから。スープやサラダも付いていて、それをコースのように提供してくれるのも贅沢気分を盛り上げる。

撮影:サカキシンイチロウ
伊勢丹の中にもおいしいお店がたくさんあって、レストラン街はいつも盛況。中国料理の「銀座アスター」が一番人気でいつも行列。伊勢丹の近くにも銀座アスターの別のお店があって、そちらは待たずに入れるのに、なぜか伊勢丹のお店を選ぶ人が多いのネ。伊勢丹の中にあるから安心……、という人も多くて、まさに伊勢丹という重力がかける魔法のようなもの。

撮影:有馬貴子
ボクは「西櫻亭」という洋食レストランが一番のオキニイリ。丁寧な仕事が生み出す上等な料理の数々。ビーフシチューやタンシチュー。メンチカツにクリームコロッケ、エビフライ、あるいはグラタン。洋食屋さんにあってほしい料理がもれなく揃っていて、しかもどれを食べても間違いがない。何種類もの野菜を使ったサラダまでもが入念に手間をかけて整えられていて、それらすべてを一度に楽しむことができる洋食弁当がなにより楽しい。料理の前に供されるコーンポタージュがおいしくてネ。おひとりさまで食事をして、「さみしいなぁ……」と感じるのが、いろんな種類の料理を食べることができない不都合。そんなさみしさを感じなくてすむここのお弁当は、この上もなきオゴチソウ。
\【おひとりさま】にやさしいお店をご紹介しています!/

著者:サカキシンイチロウ
撮影:黒川ひろみ・有馬貴子
デザイン:天池聖
マップ製作:重志保
協力:森有貴子
校閲:文字工房燦光
主婦と生活社刊
Profile
サカキシンイチロウ
1960年愛媛県松山市生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、店と客をつなぐコンサルタントとして1000社にものぼる地域一番飲食店を育成。語学力と行動力と豊富な知識で戦略を展開する。飲食店の経営のみならず、食全般に関するプロデュース、アドバイスを主な業務として活躍中。著書に『おいしい店とのつきあい方。』(角川文庫)などがある。毎日更新しているnoteでも発信中。
肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。

























