パンに導かれてパン屋に。 Vol.1 「kuboぱん」店主 久保輝美さん
暇な専業主婦だったから
パン作りを始めてみただけなんです。
何を成し遂げるかより、
そこで何を拾い上げるかが大事だと思っています
プレーン、フランボワーズチョコ、ゆずクリームチーズ。
「kuboぱん」がオープンの日には、
15種類ほどのベーグルが店頭に並びます。
もっちりした生地は、一度食べるときっとやみつきになるはず。
店主の久保さんは、週3日の営業日には、
夜中の3時ぐらいから、店内でパンを焼き始めます。
「パン屋さんになるつもりなんて、まったくなかったんです」
と大笑いする姿のおおらかなこと!
週に2〜3回のペースで、同じ店舗内でパン教室も開いています。
生徒さんはみな、パン作りを習いながらも、
久保さんの軽妙な話術に大笑いし、話しているうちに元気をもらい、
いつしか悩みがふっきれて、清々しい気持ちで帰るのだとか。
「kuboぱん」は、そんな不思議なパン屋さんなのです。
「私ね、以前はきままな専業主婦だったんです」と聞いて驚きました。
たまたま知り合いに誘われて、
「暇だから、ま、いいか」と通い始めたのがパン教室でした。
なんとなく講師の資格を取って家で教室を開くようになり、
そうこうしていたら、カフェを立ち上げた
友人のベーグル作りを頼まれたり、
2か月だけ空き店舗でパン屋をやってみない? と声をかけられたり。
「まわりが、なぜか私をパンのほうへ
パンのほうへと導いてくれたんです」。
しかも、作ったパンを販売すれば、
オープン前から長蛇の列が。久保さんは、
生まれながらにおいしいパンを焼く手を持っていたよう。
実は、38歳のときに離婚を経験。
ひとりの力で生きていかなければと、
会社で事務職の仕事に就いたことも。
「向いていないんですよね〜。
9時から5時までの
ルーティンワークっていうのが、苦手で」と明るく語ります。
そのうちに、なんと元ご主人と再婚することに!
この頃、正式なショップとしてオープンすることになりました。
店主になれば、スタッフのこと、
お客様のことなど気をもむ問題も出てくるものです。
「当時の私は、愚痴ばっかり言っていた気がします。
でも、そうするとお店や教室に集まるのが
愚痴を言う人ばかりになってきました。
それは全部自分がそんな気配を
発していたからなんです。
今ならわかります。
うまくいかない原因は自分自身にあるって」
Vol.2に続く
text:一田憲子 photo:馬場わかな
『暮らしのおへそVol.22』より
http://kubopan88.exblog.jp
Profile
久保輝美
自宅でパン教室を始め、知り合いのカフェのためにベーグルを焼き始める。その後カフェ勤務、2か月間だけ知り合いの店舗を借りてのパン屋オープンなどを経て、2014年から埼玉県浦和市でパン屋&教室「kuboパン」を営む。
肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。