ふわふわのバナナケーキを作ろう。アレンジレシピつき
お菓子研究家・高石紀子さんに聞く
“初めてでも失敗しないお菓子の作り方” 第3回
吹く風が急に秋めいてきて、お菓子を作ったり食べたりするのが楽しい季節になりました。今回は新刊『365日のクッキー』(主婦と生活社)を上梓したばかりのお菓子研究家・高石紀子さんに、初めてでも失敗しないお菓子作りのこつを伺います。第3回のテーマは、お菓子作り入門に最適な「バナナケーキ」です。
高石紀子さん
菓子研究家。甲南大学卒。ル・コルドン・ブルー神戸校でディプロムを取得したのちに渡仏。リッツ・エスコフィエで学び、ホテル・リッツ、ブレ・シュクレなどの人気店でスタージュを経験。帰国後はフランス菓子の料理教室、アパレルブランド向けのケータリング、通信販売などを手がける。くだもの使いが巧みなケークやサブレを得意とし、素朴ながら飽きの来ない、エバーグリーンなおいしいお菓子を追究する。著書に『やさしい甘さのバナナケーキ、食事にもなるキャロットケーキ』『365日のクッキー』(ともに主婦と生活社)。
http://norikotakaishi.com
お菓子を作るには特別な道具が少々必要です。たとえば型。はじめに揃えるなら15cm丸型と18cmパウンド型がおすすめです。丸型があればスポンジケーキやチーズケーキ、パウンド型があればパウンドケーキやケークサレ、そして今回ご紹介するバナナケーキなどが作れます。高石さんの著書『やさしい甘さのバナナケーキ、食事にもなるキャロットケーキ』のレシピを使って、お菓子作りのポイントを解説してもらいましょう。
「焼き菓子の主な材料は薄力粉、卵、バター、砂糖の4つです。バナナケーキの場合、ここにバナナを加えることで、独特の甘み、風味、食感を生み出しています」(高石さん)
「お菓子のレシピではそれぞれの材料が自然に、効率良く混ざり、食感よく仕上がるよう計算されています。全部いっぺんに入れて混ぜちゃえばいいじゃないか、と思う方もいらっしゃるかもしれませんが(笑)、そういうわけでもないんですよ」
ポイント1 バターに空気を含ませる
「まずはボウルにバターと砂糖を入れて、ゴムべらで押しつけてなじませます。このあとハンドミキサーで混ぜるのですが、その際に砂糖が飛び散らないよう、あらかじめバターと一体化させておきます」
このときバターはあらかじめ冷蔵庫から出しておき、ある程度やわからくしておくことが大前提です。目安としては「押すと指がすっと入る」程度。急ぐ場合はラップをして電子レンジで10~15秒加熱しても構いません。ただしあまり加熱しすぎると風味が飛んでしまいますので要注意。バターを溶かさないようにも注意してください。
「ハンドミキサーのスイッチを入れたら、ボウルの中で円を描くように動かして、全体をまんべんなく混ぜるようにしてください。バターに空気が入って、だんだんと白くなっていくはずです。これが生地をよくふくらませて、ふわふわに仕上げる秘訣です」
これでOK。動画の0:15あたりも参考にしてみてください。ハンドミキサーがない場合は泡立て器でもできますが、けっこう大変です。
ポイント2 バナナの下処理にひと工夫
続いて卵を加え混ぜたら、次はいよいよバナナです。バナナは2回に分けて加えますが、これは高石さんのレシピの独自のポイント。ここで混ぜるバナナと、最後に混ぜるバナナは、下処理が異なるのです。
「バナナはフォークの背で潰しておくのですが、上の写真を見比べてもわかるとおり、ほとんどピュレ状にしたもの(上)と、少しかたまりが残っているもの(下)、2種類を用意しておきます。前者は生地になじませてバナナの甘さを全体に行き渡らせ、後者は最後にざっと混ぜて、食感に変化を出すためです」
口に含んだ瞬間、生地の中にフレッシュなバナナが感じられて、より自然に風味と甘さを感じることができます。
ポイント3 薄力粉は効率よく混ぜる
「薄力粉をふるう」という表現をお菓子のレシピではよく見ると思いますが、薄力粉はあらかじめ万能こし器などでふるっておきます。
下にオーブン用シートなどを広げ、薄力粉を入れた万能こし器をとんとんと軽く叩いて、粉を落としていきます。粉の中に手を入れて回し、粉を落としていっても構いません(動画の0:11あたり参照)。こうすることで粉のきめが整い、だま(粉と水のかたまりの粒)ができづらくなって、食感がよくなります。さて、いよいよ薄力粉を加えます。
「利き腕にゴムべらを持ち、もう一方の手でボウルを手前に回すのと同時に、ゴムべらをボウルの奥から手前へ、生地を底からすくうようにして返します。へらは寝かさずに、面でしっかり生地をとらえるようにしてください。この動きをリズミカルにくり返します」
前出の動画の0:18あたりも参考にしてみてください。この混ぜ方は前回までにクッキー作りで使った混ぜ方と同じものです。「切るようにしてさっくりと混ぜる」などと表現することもあります。
「薄力粉を加えてから力任せに練るようにして混ぜてしまうと、生地がどんどん硬くなって、あまりふくらまず、仕上がりの食感が悪くなってしまうんです。この方法がいちばん効率よく、よい食感に仕上がります」
「あとは生地を型に流し入れて、オーブンで焼けば完成。この3つのポイントさえ守っておけば、必ず上手に焼き上がります。ぜひ挑戦してみてくださいね」
高石さんの著書『やさしい甘さのバナナケーキ、食事にもなるキャロットケーキ』では、さまざまなバナナケーキを紹介しています。今回は本書より「ミックスベリーとピスタチオのバナナケーキ」のレシピを大公開! ピスタチオはなくてもおいしく仕上がりますので、上記のポイントを押さえつつ、楽しく作ってください。
ミックスベリーとピスタチオのバナナケーキ
【材料(18㎝パウンド型1台分)】
バター(食塩不使用) 70g
グラニュー糖 60g
卵 L1個(60g)
バナナ 40g
ミックスベリー(冷凍) 40g
A
|薄力粉 80g
|ベーキングパウダー 小さじ1/2
ピスタチオ(ロースト済み) 10g
【下準備】
・ミックスベリーはペーパータオルで表面の氷を軽く拭き取り、食べやすい大きさに切って 、冷凍室に入れておく。
・バターは常温(約25℃)にもどす。
・卵は常温(約25℃)にもどし、フォークなどで溶きほぐす。
・ピスタチオは粗く刻む。
・バナナはフォークの背でつぶし、ピュレ状にする。
・Aは合わせてふるう。
・型にオーブン用シートを敷く。
・オーブンはほどよいタイミングで200℃に予熱する。
【作り方】
1 ボウルにバターとグラニュー糖を入れ、ゴムべらでグラニュー糖が完全になじむまですり混ぜる。
2 ハンドミキサーの高速で全体に空気を含ませるようにしながら3分ほど混ぜる。
3 卵を5回ほどに分けて加え、そのつどハンドミキサーの低速で10秒ほど混ぜてから高速にしてさらに混ぜ、全体になじむまでしっかりと混ぜ合わせる。
4 バナナを加え、ゴムべらで軽く混ぜてなじませる。
5 小さめのボウルにミックスベリーを入れ、Aの大さじ1を取り分けて加え、スプーンなどでさっと混ぜ合わせる。
6 4のボウルに残りのAを加え、片手でボウルを回しながら、ゴムべらで底から大きくすくい返すようにして全体を20回ほど混ぜる。少し粉けが残るくらいでOK。
7 5のミックスベリーとピスタチオを加え、同様に5回ほど混ぜる。粉けがなくなり、表面につやが出たらOK。
8 型に7を入れ、底を台に2~3回打ちつけて生地の表面を平らにならす。予熱完了後に180℃に下げたオーブンで35分ほど焼く。
9 裂け目に軽く焼き色がつき、竹串を刺してもなにもついてこなければできあがり。オーブン用シートごと型からはずし、網に上げて冷ます。
撮影:三木麻奈
スタイリング:西﨑弥沙
素朴で家庭的なお菓子であるバナナケーキとキャロットケーキ。シンプルでナチュラルなおいしさが、今や世界中の人を虜にしています。本書ではバナナやにんじんを「具材」と言うよりも「糖分の一部」として考え、チョコレートやキャラメル、フルーツなど、さまざまな食材と組み合わせたました。フランス菓子の洗練された華やかさと、アメリカ菓子の親しみやすさを兼ね備えた、最新版バナナケーキとキャロットケーキのレシピ集です。
高石紀子『365日のクッキー』(主婦と生活社刊)定価:本体1400円+税
春、夏、秋、冬。9種類の基本の生地から展開したたっぷり74ものレシピを季節別に紹介します。焼き菓子のハイシーズンである秋や冬だけでなく、春や夏にもクッキー作りが楽しめる、クッキー本の決定版。きっとあなたが作りたくなるレシピがあるはずです。
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