【金子敦子さん連載】vol.6 紅葉の那須岳にのぼろう!【後編】

金子敦子さんの大人のソトアソビ。
2021.11.10

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後編は、登山歴16年のライター増田とともに那須岳へ。10月上旬の那須岳は紅葉シーズン真っ盛り。絶景の中、山歩きをした後は、秘湯中の秘湯と呼ばれる三斗小屋温泉を目指します。

那須岳(茶臼岳 標高1915m)
難易度☆☆★★★

   〔本日の工程〕
   6:46 上野駅
      ↓新幹線
   7:49 那須塩原駅
     
   8:05 那須塩原駅
      ↓バス
   9:25 山麓駅
           ↓ロープウェイ
   9:30 山頂駅
       ↓
      牛ヶ首
       ↓
      姥ヶ平
       ↓
   14:00 三斗小屋温泉「煙草屋旅館」


今回、那須岳に行くことになったのは、一枚の写真がきっかけでした。「暮らしとおしゃれ登山隊」で打ち合わせ中、「今回はどこに登ろう?」「紅葉が見たいね」と紅葉で知られる山をいくつかピックアップしていたときのこと。編集部の木村さんが、今年7月、フォトグラファー・枦木功さんの写真展で購入したという那須岳の写真を見せてくれました。もともと候補のひとつではありましたが、雄大で美しいその姿を目にした瞬間、「那須岳に行こう!」と満場一致で決定〜!

那須岳は栃木県と福島県にまたがる山塊(塊になっている山地)の総称で、関東を代表する活火山である主峰、茶臼岳(ちゃうすだけ)をはじめ、朝日岳、三本槍岳、南月山(みなみがっさん)、黒尾谷岳で構成されています。ロープウェイで茶臼岳の山頂付近まで行きますが、今回は紅葉が目的なので、山頂は目指さないことに。




集合は上野駅。東北新幹線やまびこ203号で那須塩原駅へ。駅からはバスでロープウェイ山麓駅に向かいます。駅は曇り空で天気が心配でしたが、バスを降りると何と、晴れてる! 「やった~! 今日も元気に行ってきます!」幸先がよさそうで思わずテンションが上がり、大人げなくはしゃいでいるふたり。(笑)
標高差300mの山頂駅までは約5分。ゴンドラ内からは紅葉に染まる朝日岳や三本槍岳方面が見渡せます。「この景色を見られただけでも、来てよかった!」と金子さんもうれしそう。


あっという間に山頂駅、9合目に到着。登山道を歩き始めると、上には青い空、左下には広々とした那須高原が広がっています。
「青い空と岩の稜線が作るコントラストがきれい! 今まで登ってきた樹林帯の山とは違って、さえぎるもののない景色もいいね〜」。小石まじりの道を30分ほど歩くと、牛ヶ首(うしがくび)が見えてきました。



牛ヶ首で少し休憩。さすが紅葉の名所、人でにぎわっていました。本格的な装備がなくても、ここまでなら気軽に来ることができます。
見下ろすと赤やオレンジ、山吹色に少し緑がまじり、まるで絵画のよう。景色に見とれていると、素敵なおじさまが登場。「よく来るんだけど、やっぱりいいね。今がピークだよ」との言葉に喜ぶ一同。那須岳の景色がきれいなスポットやこれまでに登った山の話を終え、「じゃ、楽しんで!」とさっそうと歩き出す後ろ姿がかっこよかった! 山での出会いはいいものです。

次に目指すは「那須岳の紅葉といえばここ」といわれる姥(うば)ヶ(が)平(だいら)。下りだからと甘く見ていたら、これが結構きつかった……! ここから先は、体力に自信のない方は気合いが必要です。さっきまで少し進むたびに「きれい!」「こんな景色見たことない」とひたすら写真を撮っていた私たちも、どこまでも続く紅葉に目をやる余裕もなくなり、岩だらけの道を無心でひたすら歩く、歩く。



40分ほど歩いて、ようやく姥ヶ平に到着! ようやくお昼です。ここはひらけていて、テーブルといすも置いてあるので休憩にぴったり。ランチは、朝ねぼけまなこで握ってきたおにぎりをパクり。そして今日のメインは秋生まれの金子さんと連載担当の編集木村さんのお誕生日のお祝いです。お湯を沸かしてコーヒーを入れたら、ケーキに差したろうそくの火をフーッ。「紅葉の茶臼岳を眺めながら、ろうそくの火を吹き消すこの晴れがましい気持ち。山で食べるケーキっておいしさが倍増するから不思議~。59歳の誕生日と那須岳バンザイ!」と金子さん。


すっかり復活して、もうひとつの紅葉スポット、ひょうたん池へ。木道を歩いたその先には、何とも美しい風景が広がっていました。紅葉には見慣れたはずが、思わず息を飲むほど。「ここまでの道はなかなかハードですが、来る価値ありです!」




さて、ここからは紅葉に続く第二の目的、那須の秘湯「三斗小屋温泉」まで歩きます。今日は初の宿泊登山。うれしくて、つい足どりが軽くなります。途中、川を渡ったり、再び紅葉に目を奪われたり。のんびり歩いて、1時間半ほどで「煙草屋旅館」につきました。


三斗小屋温泉は康治元年、1142年に発見された那須七湯のひとつ。「煙草屋旅館」は山並みを眺めながらお湯につかれる野天風呂が名物です。「山奥の、自分の足で歩いてしか行けないひなびた温泉宿。よくもまあ、ここまで歩いたもんだね」と金子さん。宿につくなり野天風呂に向かいます。
野天風呂は建物から外に出て、少し歩いた高台にあるのですが、目隠し用の柵がなく、抜群の開放感! 晴れていれば、遠く福島県の会津駒ケ岳を望むことができます。そしてここでも山の猛者の方々との出会いが。「かっこいい人生の先輩たちに山や温泉の話を聞きながら、山々を見て、ゆったりとお湯につかる。何て贅沢な時間! 登り始めて20年、30年という彼女たちのような生き方をしたいな〜と思いました」。私たちも目指せ、30年! ですね。


17時過ぎ、太鼓の音が聞こえたら夕食です。山の上とは思えないほど豪華! できるだけ栃木県産の食材を使用しているそう。食材はほぼ宿の方々が担いで運んでいるので、感謝しながら味わっていただきます。特にお米は新米で、おいしかった! 
食後は再び野天風呂へ。満天の星空の下、静かに温泉につかっていると、お湯が疲れた体にしみわたり、心までほぐれていくよう。山の夜は早く、21時には就寝です。


翌朝、6時に起きると、窓の外は大雨。肌寒いし、昨日の晴れがまるでうそのよう。山の天気は変わりやすいといいますが、本当に油断は禁物です。天気予報の晴れマークを信じてザックのレインカバーを忘れた私たちが途方に暮れていると、見かねた宿の方がビニール袋とひもでザックの上部を包んでくださいました。これが本当にありがたかった! 気を取り直して出発です。




一時はどうなることかと思いましたが、荷物も濡れることなく、何とか無事に下山することができました。ホッ。「登山では、天気予報が100%晴れでも雨の準備が必要」と痛感させられました。



下山したらお天気は回復。那須塩原駅に向かう途中、黒磯の街に少しだけ寄り道しました。長年、この街で愛されるカフェ「1988 Cafe Shozo」の並びには、「LUNETTES(リュネッツ)+山道具屋」が。金子さんも愛用する「山と道」をはじめ、ザックやウエア、テントなどさまざまなアイテムが揃います。
ほかにも古道具店や食料品店など、楽しいお店が並んでいるので、帰り道も楽しめるはず。

「帰ってきてからも興奮冷めやらず、愛読書である鈴木さんの本(「山登りはじめました めざせ!富士山編」)を読み返して次なる山を探しています。私の心は今も遥かなる山並みを歩いているいます。いざ、次なる山へ!!」

※那須岳の紅葉ピークはすでに終了しています。
※山道のコンディションによって思ったより時間がかかることがあります。これからのシーズンは日が落ちるのが早いので、日帰りの場合は特に時間に余裕をもって、正しい装備で安全に登山を楽しんで下さい。


煙草屋旅館
https://tabakoyaryokan.com
今シーズンは11〜15時まで日帰り入浴もやっています。
(営業は4月中旬〜11月下旬。最新情報はホームページで必ず確認をお願いします)

LUNETTES+山道具屋
栃木県那須塩原市豊町8-37
https://www.lunettes-yamanodouguya.com


text:増田綾子


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Profile

金子敦子

Atsuko Kaneko

主婦。夫と娘との3人暮らし。看護師を経て日々の着こなしを自撮りで紹介するブログ『命短し恋せよ乙女★50代の毎日コーデ』をスタート。「あっこたん」の愛称で親しまれる人気ブロガーに。著書に『新 大人の普段着』(主婦と生活社)『お母さん、その服なんとかしよ!毒舌ムスメのファッションチェック』(飛鳥新社)がある。
Instagram:@55akotan

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