三重編vol.1 歴史ある建物を受け継いだ文化を発信する複合施設「おやまだ文化の森」

地元のおしゃれさんが 案内する 小さな旅
2024.11.02

日本のほぼ真ん中に位置する三重県。三重県といえば世界遺産の熊野古道や2000年以上の歴史を誇る伊勢神宮を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。「一生に一度はお伊勢参り」と江戸時代にはお伊勢参りが大流行しましたが、現代でも多くの方が参拝に訪れます。
産業都市でありながら豊かな自然を有する四日市にある複合施設「おやまだ文化の森」代表の林 謙助さんに執筆していただきました。フォトグラファーでもある林さんのセンスの光る写真と共に近隣のおすすめショップもご紹介いただきましたのでドライブがてら是非立ち寄ってみてくださいね。



 


三重県で一番人口の多い街、四日市市。その四日市の市街から鈴鹿山脈が見える方面へ、車で約30分ほどにある、のどかな田園風景が広がる小山田地区。かつて小学校、役場、美術館と、歴史を積み重ねた校舎の佇まいをした木造建物が、「おやまだ文化の森」という複合施設だ。


敷地へ入ると、外観の次に目に入るのは至るところにある丸い陶器たち。同地区の福祉施設が前所有主だった背景があり、前身の美術館だった当時、施設入居者の人たちが製作し、皆んなで貼ったそうだ。欠けてしまった箇所は多いものの、今もなお大切に残されている。


玄関を入ると、まず最初に迎え入れてくれるのがカフェ「DOA」。なんとも開放的で大きなガラス窓の建具が、お店の第一歩としてワクワクさせてくれる。
市内でもトップクラスに過疎化が進む小山田地区に一人でも多くの人が訪れ、お店の、町の入り口としての役割を担いたいという想いから、「DOA(ドア)」という名前に。


キッチンカウンターがあるモダンな空間と、開放感のあるホールが客席だ。ホール席には荒物と呼ばれるような生活道具や、手作りの温かさを感じる子ども服、地元の窯元の萬古焼などが並べられていて、食事を待っている間も飽きずに過ごすことができる。そしてお子さん連れのファミリーには嬉しいキッズスペースも。店内には授乳室も完備しており、お手洗いにはベビーベッドも用意されている。「日頃育児に忙しい家族の人たちも、ゆっくり美味しく食事を楽しんでほしい」と話す、代表の林謙助さん。子どもを遊ばせながら、テーブルでゆっくりと自分の時間を楽しむママさんやパパさんの風景が実際に多く見られる。


ランチは「DAITO CURRY」監修の和風出汁ベースのスパイスカレー。その時季に旬な野菜をふんだんに使用したヘルシーなカレーだ。お肉は三重県産を使用。ライスはインドのバスマティライスと日本米をブレンド。副菜が3種ほどトッピングされていて、1プレートでしっかり野菜を摂取できるのが嬉しい。和風出汁とあって辛さは控えめなので、老若男女幅広い年齢層の人が楽しめるランチとなっている。


デザートも豊富にラインナップ。店主こだわりの〝季節のチーズケーキ〟の他に、果肉が季節によって変わるメレンゲのデザート〝パブロワ〟も人気だ。他には〝自家製コーヒーゼリー〟や、〝今日のおやつ〟と題した季節限定デザートも。全24席の広々とした店内で、カフェタイムもゆっくりとくつろげる。また、朝9時〜11時の間はモーニングメニューも提供している。


「DOA」の店内奥へ進むと現れる、ひっそりと佇むショップ「here」。こちらは洋服屋で、シンプルで使い勝手の良いユニセックスアイテムを提案している。愛知県尾州でモノづくりを行うアパレルブランド〝nofu〟を中心に、エプロンやワークシャツなどが並ぶ。


また、アメリカのレザーシューズブランド〝dansko〟や、名古屋で職人が一点一点丁寧にハンドメイドするレザークラフト〝jacou〟の財布やベルトなどを取り扱う。「hereに置いているものは全て、長く使えば使うほど良さをきっと感じてもらえるはず。」と代表の林さんは話す。


続いて2階へ。とその前に、特徴的で気になる文化の森の床材。小学校だった頃の100年以上前から残っている床材だ。墨を塗られた木材で、墨には防腐や虫を寄せ付けない効果があるらしい。この頃の公共施設には決して珍しくなく、当時は生徒たちが素手で墨を使い床を磨いていたとか。こういったところに、昔ながらの手作りの風合いがしっかりと感じられる。歩くとギシギシときしむ音がなんとも心地良い。


階段を登ると、約20坪ほどの広々とした空間の展示室、こちらが「ギャラリーたね」だ。ここでは写真や絵画の展示を行ったり、マーケットなどのイベントスペースとして利用されている。「様々な人たちがこの場所でチャレンジし、種を蒔く場所になってほしい。」という想いを込めて〝たね〟と名付けたそうだ。

「ギャラリーってそもそも足を運ぶのが少しハードルが高い。うちみたいな、決して立地が良くない場所なら尚更です。でも1階にカフェがあることで、食事ついでにギャラリーも行ってみたいな、と思ってもらえたら嬉しい。1階を目掛けて来るお客さんがいて、2階の展示やイベントを目的に来るお客さんもいる。最初の目的はバラバラでも、結果的にどちらも立ち寄って利用してもらえる。そんな風に館全体が混じり合い、賑わいを作っていくのが理想ですね。」と話す林さん。ギャラリー利用者は随時募集を行っているので、気になる方はぜひ問い合わせてみてほしい。


また、文化の森の同敷地の別館には、大正時代から残る日本家屋がある。こちらはレンタルスタジオ「haname」という名で、定期でヨガ教室を行ったり、写真家でもある代表林さんがこの場所で家族写真など記念撮影を行っている。他にも講演会で貸切利用があったり、宴会などコミュニティの集い(終日¥5,000)などの需要も増えており、どなたでも場所貸しで利用が可能だ。


多くの人と文化に出会う場所。

「元々公共施設だったこの場所は、町の人たちも含め、きっと多くの人の親しみがあったことで長い年月を生き抜いてきたのだと思います。そう考えたら、やっぱりこの先も様々な世代に愛され、残されるべきだと思っています。カフェ「DOA」のメニューも、そういったお店の背景やコンセプトから考案しています。『格好良いお店』と言われるよりも、『いいお店だね』と言ってもらいたい。そう感じてもらう為には、人に喜んでもらうにはどうすればよいだろう?と日々模索しています。来てくれたお客さんと、そこで働くスタッフも、皆んなが最良の一日を過ごすこと。それが私が想う、良いお店のかたちです。」


春になると、敷地のソメイヨシノ桜が満開になる。四日市市に来られた際は、一度「おやまだ文化の森」へ立ち寄ってほしい。

 

 

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おやまだ文化の森

三重県四日市市山田町1901-1
TEL: 059-315-4443
OPEN:月火金土日 9:00-17:00
CLOSE:水木 
Instagram:@oyamadabunkanomori

 

「1Fカフェ DOA」 
モーニング / 9:00-11:00
ランチ / 11:00-14:00
カフェ / 9:00-17:00 (LO16:30)
・お席の予約は11:00のみ可能。※1日3枠限定
Instagram:@doa_oyamada
 

日本、〒514-0125 三重県津市大里窪田町863−3 喫茶tayu-tau

日本、〒512-1111 三重県四日市市山田町1901−1

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