三重編vol.2 気持ちがリセットできる穏やかな空間「喫茶tayu-tau(タユタウ)」
日本のほぼ真ん中に位置する三重県。三重県といえば世界遺産の熊野古道や2000年以上の歴史を誇る伊勢神宮を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。「一生に一度はお伊勢参り」と江戸時代にはお伊勢参りが大流行しましたが、現代でも多くの方が参拝に訪れます。
産業都市でありながら豊かな自然を有する四日市にある複合施設「おやまだ文化の森」代表の林 謙助さんに執筆していただきました。フォトグラファーでもある林さんのセンスの光る写真と共に近隣のおすすめショップもご紹介いただきましたのでドライブがてら是非立ち寄ってみてくださいね。
おやまだ文化の森から、南へ車で約一時間。三重県津市のJR一身田(いしんでん)駅の目の前にひっそりと佇むカフェが「喫茶tayu-tau(タユタウ)」さんです。
その昔、運送会社の事務所だったという古い建物。ご夫婦二人で2012年にスタートされ、旧店舗の時代を含めると12年の歴史があるtayu-tauさん。お店に入ると、古道具の家具や作家物のオブジェなど、手作りの温かさを感じるもので溢れていて、店内はどこか時間の流れがとても穏やかに感じられる。
私の周りだけでも「三重で美味しいご飯屋さんは?」と聞けばtayu-tauさんの名前が挙がることがとても多い。ついこの前も、鳥取から来た友人の帰り道にtayu-tauさんでの食事をお勧めしたら、とても満足してくれていた。屋号についた〝喫茶〟という言葉は勿体無いほどに料理が素晴らしく、でも洋食屋やレストランよりは柔らかい店内の居心地。私がいつも注文するのは、定番のハンバーグプレート。
挽肉がぎゅっと詰まったハンバーグは、いつ何度食べても飽きない味。そして彩り豊かに添えられた野菜たちがとても美しい。このtayu-tau特製ハンバーグは、店主の飯島慎さんが手作りするお店の看板メニュー。10年以上味と盛り付けがずっと変わらない一品だそうだ。「料理の味や盛り付けには、楽しみや、ちょっとした驚きを感じてもらえたら」と話す慎さん。
調理場の前に陳列された、友人に作ってもらったと話す数々の和食器たち。「素朴で、どこか田舎臭さを感じる食器を使いたかったんです」。その背景には、過去に飯島さんご夫婦がそれぞれのお店で修行した経験の影響が大きいという。そこで得たものは料理だけでなく、家具などを自分たちの手で手作りするということ。
「無いものは作る」という修行先のお店のスタンスに、自然と自分たちも身に付いていったという。実際にtayu-tauの店内で使用されている家具や什器は慎さんがDIYしたものや、温かみがある厳選された古道具たちが店内の空間を作っている。
「二人で将来の展望を考えた時、お店をやるか、農業をやるか迷っていた時がありました。その時、〝自給自足〟っていう本に出会って、そこに載っている飲食店で働く人たちがとても輝いていたんです。思いきって、その本に実際に掲載されたお店に履歴書を持って行きました」。そう話すのは、奥様の寿代さん。寿代さんは主にデザートや焼き菓子を担当している。
オープン当初から作り続けている焼き菓子は、修行時代に行ったフランス旅の影響が強く、今もなおその経験は活き続けている。「フランスの焼き菓子って、ずっと変わらないものが多くて。美味しいものだからこそ、今もなお多くの人に愛され残り続けてる。だから私が作るレシピも、基本に忠実で、ずっと変えていないんです」。
レジカウンターのガラスケースには、今日も寿代さんが手作りした焼き菓子が一つ一つ丁寧に、断面が正面を向くよう美しくレイアウトされている。
「お客さんから教えてもらうことが多いから、そこを感じ取りながらお店を少しずつ変えていく。何が喜んでもらえるだろうか?半分は自分たちがやりたいこと、半分はお客さんが求めてくれていること。それが長くお店を続ける上で大切だなと思っています」と慎さんは話す。
「料理や空間全てにおいて、来てくれた人の記憶のどこかに引っかかってくれたら嬉しい。例え今は分からなくてもいいから、10年20年後に、またふと戻って来てくれたらいいなと思います。来た時と帰る時で、なんだか気持ちがリセットできているような、そんなお店でありたいですね」
その言葉を聞いた時に、〝喫茶〟という言葉がとてもしっくりきたのだった。
ぜひ一度、「喫茶tayu-tau」へ足を運んでみてほしい。
三重県津市大里窪田町863-3
TEL:059-253-7817
営業時間:11:00〜16:00
定休日:日・月 ※臨時休業あり
Instagram:@tayu_tau__
日本、〒512-1111 三重県四日市市山田町1901−1
日本、〒514-0125 三重県津市大里窪田町863−3 喫茶tayu-tau
日本、〒513-0814 三重県鈴鹿市東玉垣町2850−23
日本、〒510-1233 三重県三重郡菰野町菰野5062
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