高岡（富山）編vol.1　地元に愛された出汁と店舗を引き継いだ「おでん百福」・姉妹店「floraison」

こんにちは。「Atelier ANORM（アトリエアノーム）」の西淵吏英です。いよいよ今年もあと1ヶ月になりました。12月はクリスマスとお正月が控えているので小さな花屋もちょっとだけ気忙しいです。

今回は富山県第2の都市と言われている高岡市にスポットを当てておすすめのお店をご紹介したいと思います。市内には国宝瑞龍寺、高岡城の跡地には古城公園、高岡大仏（日本三代仏とも言われますが諸説あり）などがあり、伝統工芸の高岡銅器をはじめとする鋳物の生産も盛んなものづくりの町です。

さて、寒くなったこの季節にぴったりなお店「おでん百福（ももふく）」をご紹介します。

高岡駅から徒歩11分、ハッシュタグ（#）の提灯が目印です。実は以前この場所には「福家」というおでん屋がありました。老若男女から愛されていましたが、50年以上お一人で切り盛りされていたお母さんがご高齢になりお店を畳む事に。その話を聞いて、このおでん屋を高岡から無くしてはならない！と思った炭谷恵子さんは翌日お母さんを訪ねます。熱い想いを伝えた結果お出汁と店舗を引き継ぐ事になり、『福』の一文字をいただいて「百福」と名前を新たにスタートさせたのが2020年。
さらに経緯を聞くと、お店の看板は以前あったデザインをオマージュしていて『福』はトレースして採用し、その『福』にぴったりな『百』を探してカスタマイズしたのだそうです。また、提灯のハッシュタグ（#）も看板から来ているそうです。先代のお店を今の空気感にブラッシュアップされ、年中無休で営業しています。

オープンと同時にアルマイト鍋を持った作業着の男性がやって来ました。恵子さんが年季の入った木の蓋を開けると鍋から湯気が上がり、出汁に浸るおでんたちがお目見え。百福では常時30種類のメニューを揃えていて、富山らしいメニューはお豆腐にとろろ昆布のせ、赤いぐるぐる巻きのかまぼこです。お客さんが全国各地で食べたご当地おでんメニューを教えてくれるので、姫路ではじゃがいもにバターのせ、大阪ではネギ巾着があったと聞いて新メニューに採用するなどいろんな具材を取り入れているそうです。

毎日継ぎ足しながらずっと続いている出汁は昆布だしで甘め。ついつい欲張ってお皿いっぱいに頼んだおでんと瓶ビールが進みます。程よくお腹がふくれたところで、恵子さんの姉妹店であるワインカフェ「floraison(フロレゾン)」へ移動しました。

フロレゾンは2010年にオープンしました。当時市内にはナチュラルワインと日本のワインを取り扱うワインバーはなく、フロレゾンが高岡でナチュールと国産ワインの魅力を広めてくれたと言っても過言ではないほど。　ワインの知識豊富なソムリエがカウンターにいてくれるということで、ワイン好きで会話を楽しみたい人、お酒が入っているからできる相談や聞いてほしい話をささやく人もいたりして（私もそんな時もあったかも）、　話し上手・聞き上手の恵子さんに会いに来るファンが男女問わずたくさんいます。このカウンターには様々な物語があるだろうなぁと想像してしまいます。

ちょうど県内のワイナリーで働く女性と居合わせ、富山の風土にあった生産方法でブドウを育てていることを教えてくれました。富山県内にはセイズファームやホーライサンワイナリーなど４つのワイナリーがあるので、富山の気に入ったワインに出会えたらぜひぶどう畑も見学してみてください。より特別なワインになるとともに旅の思い出にもなるはずです。

そして、先月フロレゾンは15年目に突入しました。恵子さんがオープンした当時20代だった私には自立した女性像がとても眩しく、その姿に刺激を受けたように思います。14年の間におでん屋を引き継ぎ、2店舗を行ったり来たりしながら高岡の街を盛り上げている今の姿も（自分もお店を持つと改めて尊敬の気持ちになり）かっこいいなぁと思った夜でした。

ゆっくりと高岡の夜を楽しみに、２軒はしごして欲しいです。