伊勢〜大紀町(三重)編vol.1 はじまりの地「伊勢河崎の町並み」
三重県の中南部に位置する大紀町(たいきちょう)は海、山、川の美しい自然に囲まれた地域です。
そんな大紀町に2015年にギャラリーを併設したブックカフェ「CAFEめがね書房」をオープンされた染川卓摩さん。美味しいコーヒーとスイーツが味わえる居心地の良い空間が評判となっています。
染川さんに伊勢神宮近くの伊勢河崎から近隣の多気町・大台町を通って最後に「CAFEめがね書房」に到着する車で周りやすいとっておきのコースを教えていただきました。
街並みや自然を楽しみながらゆったりとした旅を楽しんでみてくださいね。
三重県へ旅行に行くと考えた時、伊勢神宮を思い浮かべる人は多いはず。「一生に一度はお伊勢まいり」という言葉もあるぐらいなので全国的に有名ではないだろうか。しかし、今回の目的地は伊勢神宮やいつも観光客で賑わいをみせているおかげ横丁ではなく、伊勢の河崎地区から静かで小さな旅を始めてみよう。
伊勢の河崎地区は“伊勢の台所”と呼ばれていた。16世紀の頃、伊勢神宮門前町の山田・宇治へ物資を運ぶために河崎を流れる勢田川を利用した水上輸送と、物資を荷揚げし人馬での陸上輸送を仲介する川の港として東国と西国を多くの人が行き来するターミナル的な商業都市であった。伊勢の台所と言われる所以は、江戸時代に「おかげまいり」の参宮客に物資を供給する問屋街として成長し、伊勢神宮周辺地域の米と魚の卸売り専売権を認められたからと言われている。
河崎地区を流れる勢田川に平行に走る通り沿いには町屋や蔵が並び、河川の家は裏口から荷物の積み下ろしができるようになっていた。今でもその名残を見ることができる。江戸末期から明治初期にかけての陶器や錦絵のコレクションなどが並ぶ和具商店では、昔に使われていたトロッコレールやその奥にある築300年の倉庫が見学でき、まちかど博物館としての役割も果たしている。
古い街並みに古い建物を見ながら歩いていると、なんともノスタルジックな気分に浸れる。今ではその古い建物や石蔵を利用して、飲食店や雑貨屋さんなどのお店が軒を連ねている。江戸時代に創業された酒問屋を修復整備した施設『伊勢河崎商人館』で伊勢河崎の歴史や文化を知ることができる。
実はここ河崎は僕がお店をオープンする前の会社員時代に足繁く通った町なのです。この地で受けた感動と出会えた人たちは、間違いなく後の自分の人生に影響しているだろう。
この河崎に来た際に特によく立ち寄った場所がいくつかあります。『中谷武司協会』は数年前までは『モナリザ』という名前でカフェとして営業していて、よくそこで本を読んで過ごしていました。今ではカフェの営業は終了し名前を変えてオリジナル商品を販売するショップとして営業しており、神様のお供物であるご神饌をモチーフとした「サトナカクッキー」を中心に、伊勢の鬼才・中谷武司さんデザインのアイテムを販売している。
すぐ隣には『月の魚』という雑貨屋さんがあります。少し暗めの照明に照らされた店内には昭和レトロな小物や雑貨、店主さんのオリジナル雑貨が並んでおり、眺めているだけでも心揺さぶられます。街で見かけた野良猫を追いかけていたらいつの間にか知らぬ街に迷い込んでそこでたまたま見つけた...といった物語に出てきそうなお店です。今では本当に看板猫のテコちゃんが出迎えてくれるので猫好きにはたまりません。店主さんに会う度に「のはら子ちゃん元気〜?」と僕のお店で飼っている猫を気にかけてくれて、お互いの飼い猫話に花を咲かせるのです。
猫と言えば『古本屋ぽらん』。こちらもタイミングが良ければ店内で数匹の看板猫に遭遇できます。僕がずっと通っているお店の中で40年以上続く三重県内で唯一昔ながらの雰囲気を醸し出している貴重な老舗の古本屋さんである。ここで古書なるものの魅力に取り憑かれたのは間違いないのです。あと猫と。
今では二代目である息子さんと一緒に三重県にある古本屋さんに声をかけ「三重県まちの古本屋さん協会」を立ち上げ、毎年三重県最大のブックイベント「ホンツヅキ三重」を開催するまでの関係になった。
伊勢河崎の人々と出会っていなければ今とはまた違った未来になっていただろう。
あの頃、気が付けば河崎の町をふらふらと歩いていた。何か変わる気がして。この場所で本の海を泳ぎ、猫のしっぽを追いかけて、過去と未来を想像していた。その頃から僕の新しい人生の旅は始まっていたのではないかと最近になってふと思う。
三重県伊勢市河崎
MAP:A
日本、〒516-0009 三重県伊勢市河崎
日本、〒519-2170 三重県多気郡多気町ヴィソン672 番1 サンセバスチャン通り 12
日本、〒519-2423 三重県多気郡大台町新田31
日本、〒519-2731 三重県度会郡大紀町野原576−2
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