若桜町（鳥取）編vol.1　表情豊かな山々に囲まれたここにしかない空間「ギャラリーカフェふく」

鳥取県といえば砂丘を思い浮かべる方が多いではないでしょうか。他にも日本海の荒波によって作られたダイナミックな景観と透き通った美しい海の「浦富（うらどめ）海岸」や中国地方最高峰の「大山（だいせん）」など自然の数々が楽しめます。
そんな鳥取県の東南端に位置し、岡山県と兵庫県の県境に接する若桜町（わかさちょう）。イラストレーターでもあり若桜町で「ギャラリーカフェふく」を営むひやまちさとさんに素敵な旅のコースを考えていただきました。是非旅行の計画を立ててみてくださいね。
 

鳥取県若桜町で「ギャラリーカフェふく」を運営する、イラストレーターのひやまちさとです。鳥取県は海と山に囲まれた、日本で一番人口の少ない県ですが、ここにしかない環境や食材だからこそ、生まれるお店や場所があります。ひとり旅や親しい間柄の人との、静かで穏やかな旅に鳥取はおすすめです。今回は私が暮らす鳥取県の東部エリアにある若桜町を中心にご紹介します。

「ギャラリーカフェふく」は、鳥取県の八頭郡若桜町というところにあります。若桜鉄道という小さな鉄道沿線「若桜駅」から徒歩２分のところにあります。若桜駅には１両ずつ名前のついたユニークなデザインの車両があり、可愛くてレトロな車内と車窓からの風景は心癒されます。木造の趣ある駅舎の待合室は私も大好きな場所です。週末やイベントの時にはSLが汽笛を鳴らしたり、タイムスリップしたような時間が流れています。

私が営む「ギャラリーカフェふく」は、2019年にオープンした小さなお店です。昔はスーパーだったという空き店舗を改修して作りました。企画展を中心としたギャラリーをメインにカフェが併設され、雑貨やお洋服、焼き菓子なども取り扱っています。

ギャラリーでは２ヶ月ごとに企画展を開催しています。絵画や陶芸、ファッションや写真、短歌など表現方法は様々ですが、表現することを生業とするアーティストをメインに展示販売を行っています。可能な限りアーティストは一度、若桜町に遊びに来てこの町の空気や時間の流れを感じてもらい、作品の制作に取りかかっていただくこともあります。

カフェでは、若桜町で焙煎をする「ETSUKO MURAO」のスペシャリティコーヒーに合わせて、同じ町内にある「藤原みそこうじ店」の麦味噌を使用した焼き菓子や、豆乳とおから白みそを使用したドーナツ。そして、若桜町の山々を元気に駆け巡った鹿を使った軽食をご用意しています。

私は普段、フリーランスでイラストやデザインをメインに仕事をしています。ギャラリーカフェを始めたきっかけは私が８年前に移住した時。この町でおばあちゃんになっても暮らすことを想像しました。美味しい水、みそこうじ、米、お酒、お饅頭屋さん、充実した図書館があるから大丈夫。でも私にはアートや表現に触れる時間が欠かせないと思い、自分で作ることにしました。「ギャラリーカフェふく」がある若桜町は山間の町で人口が約2,700人。その多くが高齢者です。といってもみんな元気！家のことをして、畑をして、山に山菜を採りに行ったり、大忙しです。それでも、ふとしたスキマ時間に友達とおしゃべりしたり、ちょっと覗きに来たわよ、なんて言って当店に立ち寄ってくださいます。手にはお土産だと言って畑で育った季節の花や、秘密の山で採れた山菜だったり。こうしてお裾分けをいただくことも多く、本当にありがたい限りです。

そんな「ギャラリーカフェふく」という場所をはじめて、7年目の2025年2月。新しく「泊まれるギャラリーはち」という場所を作りました。はちは築120年の空き家を改装した１棟貸の民泊施設です。薪ストーブのあるリビングとキッチン、寝室、シャワーブースや洗面のある小さなお家といった感じ。室内には「ギャラリーカフェふく」での企画展に合わせた作品の展示販売、常設作家の作品が飾られています。アートを暮らしに取り入れていただくことが、より身近になりますようにと店主が想いを込めた場所です。朝の鳥のさえずりや、絶え間なく聞こえる水音、満点の星空、森の中にいるような静けさなど、若桜町で暮らす中で気がついたことを、はちを通していろんな方にお伝えしたいなと思いました。

はちに滞在することで若桜の食材に触れてもらう機会になればと思い、小さなキッチンをつけました。100年以上続く「太田酒造場」の日本酒、藤原みそこうじ店のみそこうじ、山間でのびのび育つ吉川豚、清流を泳ぐ鮎、季節の野菜や果物、山菜やジビエ、深煎りの珈琲、日本茶、季節の和菓子などなど、私たちが普段から食べているものです。リクエストいただけたらオリジナルのレシピをもとに一緒にお料理をすることもできます。

私がやっている場所は、どちらもこじんまりとしています。それは、お客様との出会いを大切に「ようこそ」がいつか「おかえり」になることを願っているから。この山の中の小さな町にある秘密を、私の小さな旅を、あなたにそっとお伝えしますね。

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