若桜町(鳥取)編vol.3 店主がセレクトした美味しいお茶と甘味が味わえる「URUWASHI JAPANESETEA」
鳥取県といえば砂丘を思い浮かべる方が多いではないでしょうか。他にも日本海の荒波によって作られたダイナミックな景観と透き通った美しい海の「浦富(うらどめ)海岸」や中国地方最高峰の「大山(だいせん)」など自然の数々が楽しめます。
そんな鳥取県の東南端に位置し、岡山県と兵庫県の県境に接する若桜町(わかさちょう)。イラストレーターでもあり若桜町で「ギャラリーカフェふく」を営むひやまちさとさんに素敵な旅のコースを考えていただきました。是非旅行の計画を立ててみてくださいね。
鳥取県若桜町でギャラリーカフェふくを運営する、イラストレーターのひやまちさとです。鳥取県は海と山に囲まれた日本で一番人口の少ない県ですが、自然や食材の豊かさ、静かな環境など、ここだからこそ生まれるお店や場所があります。3回目は私が暮らす鳥取県の東部エリアにある若桜町の日本茶専門店とタイムスリップしたような宿場町の様子をご紹介します。
ギャラリーカフェふくがある若桜駅前には、ローカル線として人気の若桜鉄道若桜駅があります。木造の駅舎は地域からも大切にされ、近年には風情を残した形で改修されました。また鉄道のデザインも4両それぞれ個性があり、車内のシートの色や意匠もぜひ見比べて欲しいです。駅を背に本通りに向かって歩くと、最初に蔵通りがあります。石畳の小道には駅側にお寺が並び、反対側には蔵が立ち並んでいます。そして木材や宿場町として栄えた名残から、格子戸など風情ある町並みが続く本通りに日本茶を専門に扱うスタンド「URUWASHI JAPANESETEA」があります。
若桜の建物は、間口が狭く奥に細長い造りになっています。その造りを活かした、カウンター6席、テーブル1席のこじんまりとした店内には、カウンター越しに店主の丹松雄さんが迎えてくれる心地よい空間があります。お茶の香りとともに、お醤油にこだわったみたらし団子の香ばしいタレの香りがします。店主がお勧めする日本茶のほか台湾茶や抹茶のメニューも豊富にあり、目移りしてしまいます。また、季節限定の和菓子や夏季に始まるカキ氷も人気があります。若桜町でみそこうじを作る「藤原みそこうじ店」の白みそを使った冬限定のあぶり餅は店主もイチオシです。
URUWASHI JAPANESETEAを営む丹松雄さんは、若桜町の出身で幼い頃から野球が大好きだったそうです。高校卒業後はスポーツジムのお仕事やレストランのサービス業を経て、レストランで出会った「日本茶」の奥深さに魅了され、地元の若桜町で日本茶の専門店を創業されました。店内には、産地や特徴について書かれた文章を読むのも楽しい店主がセレクトした日本茶や、茶器、若桜鉄道ともコラボした懐かしのお茶ボトルなども並んでいます。お茶へのこだわりはもちろん、地元の食材を使ったコラボレーションにも力を入れています。その取り組みの根っこにある「若桜愛」はとても熱くて清々しいものです。私はお茶をいただきながら、丹松さんとこの街の未来の話をすることが、この上ない楽しみです。
ギャラリーカフェふくやURUWASHI JAPANESETEAのある本通りは、2021年に伝統的建造物群保存地区に指定されました。17世紀に鬼ヶ城の城下町として整備された後、旧街道は宿場として、また近郊への物資の拠点として栄えた大きな商家の建物が残っています。明治18年の大火の後に建てられた伝統的な町屋のカリヤと呼ばれる特徴的な作りや、土蔵郡やお寺の特徴的な配置、八東川から取り込まれた水路が町中に張り巡らされ、歴史を伝える街並みが今も残っています。
本通りには、若桜の山奥にある吉川という地区で育った豚を扱った名店「とんかつ新」や、大人も子どもも楽しい駄菓子屋「昭和おもちゃ館」、全国から集まった土鈴が飾られている「若桜民工芸館」など、街並みを散策しながらいろんなお店にも出会えます。私が営む「泊まれるギャラリーはち」も、暮らすように、このエリアを歩いて楽しんでほしい。そんな思いで立ち上げました。静かな山々に抱かれたこの小さな谷間の町には、いつも心地よい水音が聞こえています。
この原稿を書きながら若桜駅の待合室にいると、駅員さんが切符鋏をパチンと鳴らす音がします。90歳を超える先輩たちが、珈琲を飲んでいます。窓から見える山の緑が昨日とは少し違う気がしました。「できるだけ早く効率よく」が常識になっている現代で、この場所には驚くほどスロウな時間が流れています。列車を待つ時間、お酒や味噌が熟成される時間、山にしんしんと降り積もった雪が、春になって雪解け水となり川へ流れ田畑を巡っていく。そんな時間の中で生活していると自然の恵みによって生かされていることへの気づきが私の人生を大きく変えてくれました。時より、SLの汽笛や、町内放送、お昼や夕方のチャイムなどがこだまします。コンビニやチェーン店がおよそない、オリジナルなままでいる地方は今や珍しいのではないでしょうか。ここにはきっと、とっておきの時間がありますよ。
鳥取県八頭郡若桜町若桜379
TEL:070-2361-0369
営業時間:平日11:00〜17:00 /土日祝 10:00〜17:00
Instagram:@uruwashi_japanesetea
MAP:C
日本、〒680-0701 鳥取県八頭郡若桜町若桜396
日本、〒680-0728 鳥取県八頭郡若桜町舂米635−219
日本、〒680-0701 鳥取県八頭郡若桜町若桜379
日本、〒689-1433 鳥取県八頭郡智頭町埴師655
日本、〒689-1463 鳥取県八頭郡智頭町新見180
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