滋賀編vol.3 滋賀の郷土料理・鮒寿し、老舗の味に舌鼓「湖里庵」
~「神保真珠商店」杉山知子さん~
photo&text:杉山 知子
滋賀の郷土料理といえば「鮒寿し」と答える方も多いと思います。
鮒寿しは、琵琶湖で獲れるニゴロブナの塩漬けを、炊いたご飯とともに漬けて発酵させた熟鮓の一種。初めて見る方は驚かれるかもしれません。
今回ご紹介するのは、鮒寿しの老舗「魚治」の料亭「湖里庵(こりあん)」です。
JR京都駅から滋賀へ向かう路線は、琵琶湖の東側を走る琵琶湖線と、西側を走る湖西線があります。「湖里庵」があるマキノ駅は、湖西線で約1時間。車窓から見える琵琶湖は、北へ行くにつれどんどん広く穏やかになっていきます。
マキノ駅から琵琶湖沿いの道を進むと1784年創業の鮒寿しの名店「魚治」が見えてきます。
店の向かいにある料亭「湖里庵」は、魚治を贔屓にしていた作家・遠藤周作が名付けてくれたそう。とても歴史があるお店なので、少し緊張して扉を開けるのですが、いつもやさしく出迎えてくださり、すぐに心が緩みます。
通されたお部屋へ入ると、はっと息をのむような美しい琵琶湖の景色が広がり、毎回感動せずにはいられません。この景色を眺めながら美味しいお料理をいただくという贅沢。大人になって良かった、と思う瞬間です。
お料理は、鮒寿し懐石と近江懐石から選べます。今回いただいたのは近江懐石。
近江懐石は琵琶湖の湖魚と海の魚の両方をいただく事ができます。マキノは福井県の海にも近く、美味しい魚も手に入るそうです。鮒寿し好きには鮒寿し懐石がおすすめ。鮒寿しってこんな食べ方もあるんだ、と驚くこと間違いなしです。
お料理はどれも素晴らしく全部お見せしたいのですが、今回は少しだけご紹介を。
こちらは琵琶湖の若鮎のてんぷら。柔らかくて優しい味です。
お料理の最後に登場するのは鮒寿しのお茶漬け。鮒寿しの酸味がたまりません。
鮒寿しを初めて食べる方でも、美味しくいただけます。
デザートは滋賀の名酒「七本槍」の酒粕を使ったアイスクリーム。絶品です。
お料理の余韻を残し、静かな琵琶湖をぼんやりと眺めながら語らうひと時は、このまま時が止まればいいのにと本気で思ってしまうほど素敵な時間です。
今回訪れたのは、海津大崎の桜が散り、緑がむくむくと盛り上がる季節。七代目の店主・左嵜さんのおすすめは、雪が積もる2月頃だそう。
季節を変えて何度でも訪れたくなる湖里庵は、私にとって特別なお店です。
湖里庵でお料理をいただいた後は、魚治でお買い物を。
鮒寿しはもちろんのこと、ご自宅で湖里庵の味を楽しめる懐石茶漬けなど、お土産としてとても喜ばれるので、ついついたくさん買ってしまいます。私の滋賀のお土産の定番です。
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