名古屋編vol.8~別格のセンスで彩られた隠れ家のような古道具店「Tisane infusion(ティザーヌ インフュージョン)」

地元のおしゃれさんが 案内する 小さな旅
2018.07.28

フリー編集者 こんどうみきさん

 

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photo&text:こんどうみき

 

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ここ10年ほどで名古屋にもセンスのいい古道具店がずいぶんと増えたましたが、別格といえるお店があります。はじめて訪ねたのは20年近く前。花屋さんの脇にある薄暗い通路を進み、エレベーターで7階へ。マンションとは思えない作り込まれたエントランスに胸を高鳴らせながら扉を開けると、未知の世界にタイムスリップしたような空間が広がって……感動のあまり立ち尽くしたのを覚えています。

 

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看板や目印が何もなく、知る人しか辿り着けない「Tisane infusion(ティザーヌ インフュージョン)」は、1997年に則武有里さんが始めた世界各国の古いものを扱うお店。その10年前から旦那さんが営んでいる花屋さん「Flower noritake(フラワー ノリタケ)」で働いていた頃に、花を花瓶でなく古い器に生けたくなり、異国の蚤の市などで花器を探すようになったのがはじまりだとか。昨年、改装を済ませて以前よりスッキリとした雰囲気に。看板犬のマロンちゃんも出迎えてくれます。

 

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5月に企画展を終えた「kitta(キッタ)」の草木染めのワンピースがお似合いの有里さん。訪れるたびにうっとりするのは、古道具の美しさを際立たせている緑がかった独特の壁の色。20年前に色を混ぜた漆喰を塗ったきりだそうで、すぐには真似できそうにない年季の入った魅力を感じます。

 

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フランス、イギリス、アメリカ、韓国など、あちこちから集められた古道具はずっと前からそこが定位置だったかのように佇んでいて、遠い時代の遠い国のお宅を覗かせてもらっている錯覚に陥ります。

 

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「看板も出さず宣伝もせず、来てくださったお客さまが誰かに教えたくなるような店づくりをずっと心掛けてきました」と有里さん。たしかに、街中に潜むこの素敵な空間を見つけられたのが嬉しくて、大切な人にこっそりと教えたくなります。ちなみに店内にあるものほぼすべてが商品だそうで、家具も例外ではありません。

 

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ハンガリーやフランスで買い付けたというデッドストックのリネンは100年ほど前のもので、手織りならではの風合いが魅力です。藍染めによって生まれ変わった生地も素敵。ハンドメイド好きのお客さんに人気があるそう。

 

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アンティークビーズを使ったマチ針は作家さんによるもの、レースの付け襟はフランスの古いもの。さりげないのに物語を感じるディスプレイに心がときめきます。

 

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昨年の改装時に設けたという日本の古い窓枠は、下半分をクリアガラスに。その向こうにはビルが立ち並んでいるとは思えない静謐な雰囲気で、都心のオアシスのよう。最近は日本の古道具も増やしているそうで、1800年代の古伊万里の器も空間にしっくり溶け込んでいました。

 

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1階に花屋さんがあるからこそのディスプレイも見もの。この日はアンティークのベビーバスに紫陽花と山帰来がこんもりと。改装によって広げられたこのスペースでは1~2ヵ月に一度のペースで企画展が催され、8月にはアクササリー作家「OGiSO(オギソ)」の展示を予定しているそう。

 

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「Flower noritake(フラワー ノリタケ)」を始めた30年前は野花を扱うことがまだ世間に受け入れられなかったり、「Tisane infusion(ティザーヌ インフュージョン)」を始めた20年前はマンションの一室で古道具を売ることを不思議がられたりもしたとか。でも、野花を使ったアレンジも隠れ家のようなお店も趣のある古道具も、その数年後にブームとなって定着して、多くの人々から好まれるものとなりました。まさに先見の明のあるご夫婦! おしゃれな花屋さんと古道具店の先駆けとして、これからもずっと名古屋で営み続けてほしいお店です。

 

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Tisane infusion(ティザーヌ インフュージョン)

MAP:
名古屋市東区東桜1-10-3 7F
TEL:052-951-7117
営業時間/11:00~18:30 木・日曜、祝日定休
http://www.flower-noritake.com

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