調布編 vol.2 世界の手仕事をあつめた古書店「folklora(フォルクローラ)」
「m.Room(エム ルーム)」小林 昭子さん
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photo:森 有未 小林 昭子 text:小林 昭子
調布編の第二回は、手芸の本を数多く集めた古書店をご紹介したいと思います。その質と量にはびっくり。初めて訪れた時はそれはもう圧倒されました。手芸古書界というものがあるとすれば、そこでまちがいなくトップクラスでしょう。でも場所は、都心でもなく神保町でもなく、西調布なんです。しかも本当に小さな商店街の中にあるのです。
「手芸関係の古書店」と聞いただけで、手芸好きは心踊るのではないでしょうか。それがどの本も見たことのないものだったら……。ここには世界じゅうのさまざまな手芸古書があります。手芸のみならず、物作りに関する本が数多く存在するのです。工芸・アートに関する書籍もあります。作り手にとっては、インスピレーションを与えられたり、創作意欲の泉になることでしょう。
これらの本の多くは、店主の石井佐祐里さんが現地で買い付けていらしたものなのです。刺繍本の多く残るヨーロッパを中心に、バルト三国、北欧など、定期的に現地に赴いて、自分の目で見て確かめて、市場で交渉したり古書店を巡ったりして買い付けてこられるのです。
貴重な専門書も数多くあります。デンマークのフレメ刺繍で人気のGerda Bengtsson(ゲルダ・ベングトソン)さんの図案集や、DMCの手芸辞典ドイツ語版など、これらはほんの一例。宝物がたくさんありすぎてご紹介しきれないのが残念でなりません。後世に残していきたい歴史的資料の宝庫なのです。
手芸材料や手仕事の作品も並びます。これらは、古書を巡る旅のなかで、偶然に出会ったものたち。編み針や毛糸、刺繍糸などの手芸材料は、色や数も揃っていなかったり、もうひとつ同じものを、と思ってももう手に入りません。民族衣装もあります。時代を超えた傷、経年しないと生まれない風合いは、ふたつとない魅力です。
定期的に、手仕事の作家さんや画家さんによる展示もあります。見るだけでも本当に素敵ですが、作品を購入することも可能です。
手工芸を学びたい方のためのワークショップも開催されているんですよ。その内容は、一般的にはあまり知られていない珍しいものが多いです。
専門家や作家さんが、資料を求めて来店されることも多く、こちらで展示をしたり、ワークショップをされる講師の方は、もともとお客様だった方も多いそうです。
手作りでしか生み出せない温もりの、その文化・歴史が消えてしまわないよう残していきたい。そんな情熱が形になったこの場は、手芸の聖地と言えるのかもしれません。本来の手芸本は、見ても楽しいし、読んでも素晴らしいもの。物を作る方もそうでない方もきっとなにかを見つけることができる、そんな古書店です。
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