調布編 vol.4 満月と新月にあらわれる店「m.Room(エムルーム)」
「m.Room(エム ルーム)」小林 昭子さん
*****************
photo:森 有未 Sagë 小林 昭子 text:小林 昭子
調布編第4回めは、面映いのですが、私の店「m.Room(エムルーム)」を紹介いたします。
2017年の春、「m.Room(エムルーム)」は生まれました。大正時代の邸宅で応接間に使われていた扉が入り口です。
初めは、お店はたった五畳の土間だけでした。取扱う作家も少なかったので、壁に「余白」という文字を貼っていました(笑)。それを見て興味を持ってくださる作家の方に、お一人ずつ声をかけていったのです。私の周りにはなぜか、豊かな才能を持つ方が多くて、いつの間にか素敵な作家さんたちが作品を置いてくださるようになりました。
看板商品のそばがら枕は、以前から私がずっと作り続けているものです。きっかけは義母からプレゼントされたことでした。あまりにも安眠できるので手放せなくなって、自分でも作り始めたのです。今もひとつずつ手作りで縫っています。枕カバーにはヴィンテージクロスやこだわりのリネン生地を用いて、美しさも寝心地も叶えました。有難いことにお客様のご紹介などで広がって、今ではとても人気の枕です。
もう一つの看板商品は「SAGË(セージ)」の服です。企画から縫製まですべてSagëさんひとりの手によって作られています。彼の人柄やセンスに共鳴し、ブランドの立ち上げから関わってきました。肌にやさしく沿う優美なラインを持ち、たいへん丁寧な縫製で、一生物を思わせます。想像の世界へはばたけるような美しい世界観が特徴です。
ここには、初めて目にするもの、まだ見ぬ作家など、新鮮な出逢いがきっとあると思います。訪れてくださる方が、あっと小さく声を出して宝物を発見される、そんな瞬間が好きです。
お店の奥の部屋や、2階の特別室では、ときどきイベントを開催しています。カードリーディング、ヒーリング、お茶会など、私自身が信頼している先生をお招きしています。お客様が心を開いてお話をしてくださったりすることも多く、いつも温かい雰囲気です。
私はもともとは専業主婦でした。身の回りのものを自分の目で探したり、使い心地を確かめたり、整頓したりするのが好きで、暮らしのなかでいつもそれを考えていたのです。「伊藤寛アトリエ(いとうひろしアトリエ)」によるこの自宅の建築の美しさにも満たされながら暮らしてきました。
夫が急逝したあと、暮らしを楽しむ心を忘れてしまい、人生に迷っていました。そんな時に、Sagë(セージ)さんに出逢ったのです。「この素敵な家を生かして仕事をしていったら」と勧められ、協力するからと言ってくださったのです。1人だと難しくても2人ならできるかもしれない。そう思ったとき、目のまえに新しい景色が見えてきたのでした。
満月と新月のあたりに店はあらわれます。住まいと店の明確な境目はなく、ふだん使っている台所もそのまま、玄関とダイニングがお店に変わります。月を見て、思い出したらぜひいらしてください。みなさまのご来店をこころよりお待ちしています。
←連載「地元おしゃれさんが 案内する 小さな旅」はこちらから
肩の力を抜いた自然体な暮らしや着こなし、ちょっぴり気分が上がるお店や場所、ナチュラルでオーガニックな食やボディケアなど、日々、心地よく暮らすための話をお届けします。このサイトは『ナチュリラ』『大人になったら着たい服』『暮らしのおへそ』の雑誌、ムックを制作する編集部が運営しています。