弘前編 vol.2 りんご畑の中にたたずむシードル工房「kimori(キモリ)」 ~「yourwear」佐藤孔代さん~

地元のおしゃれさんが 案内する 小さな旅
2016.07.09

地方在住のおしゃれさんに、地元のとっておきの場所を案内していただく人気連載「地元のおしゃれさんが案内する小さな旅」。今月、青森・弘前編を担当してくださっているのは、ニットブランド「yourwear(ユアウェア)」の佐藤孔代さんです。
歴史ある城下町・弘前には、おしゃれなお店がたくさん並んでいるわけではないけれど、じつは知る人ぞ知る素敵なお店やスポットがけっこう潜んでいるんです。今月の連載では、佐藤さんのアンテナにビビビとヒットしたスポットを紹介していただきます。この連載に登場する穴場スポットはもちろん、弘前には桜が有名な弘前城や、津軽富士とも呼ばれる岩木山の雄大な姿、ル・コルビジェの弟子・前川國男によるモダニズム建築などなど見どころがいっぱい。1泊のんびり旅に、絶対おすすめですよ~!

vol.1 はこちらから

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「木守(キモリ)」とは、今年の収穫に感謝を捧げるとともに、新たな年の豊作を願い、数個の果実を樹に残す、古くからの風習。

そんな、りんごへの深い愛情を感じさせるような名前のシードル工房がオープンしたのは2年前。場所は弘前市郊外の「りんご公園」という公園内の一角。りんご畑の中にぽつり、雪のように真っ白い、三角屋根の建物。ここが「kimori」のシードル醸造所です。

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薪ストーブが置かれた穏やかな雰囲気の部屋では、ガラス張りの奥で実際にシードルを作る様子を見ることができます。ウッドデッキの向こうに一面に広がるりんごの木々を眺めながら、出来上がるシードルを想像してうっとりとまどろんでしまうような空間です。醸造所とはいえ、公園に訪れた人は自由に出入り出来るオープンさ。音楽や食のイベントも頻繁に行われています。
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醸造所内には青森のりんごにまつわる古い写真も飾られています。これは「剪定会」の古い写真。もともと湿度の高い日本の気候では栽培が難しかったりんご。その気候のハンデを乗り越え、青森県を日本一のりんごの産地に押し上げたのが、りんご農家さん達が培ってきた独自の剪定技術。その技術をみんなで共有し、伝え合うために、こんな催しが開かれているのだそうです。ふむ、ふむ。

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この「kimori」は若手のりんご農家さんを中心に22名で立ち上げられました。その中心にいらっしゃるのが、高橋哲史さん。高橋さん自身も、りんご農家さんのご長男です。

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そうか、小さい頃からのりんごへの愛着でシードル工房を……と、思い込んでインタビューさせていただいたのですが、小さい頃は全く興味がなく、秋の収穫くらいしかお家の仕事を手伝わなかったとか。えええ??? と、高橋さんのお話に引き込まれる私。

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高橋さんは、りんご栽培の方法はもちろん、青森のりんごの歴史、りんごを取り巻く経済環境などなど、りんごのすべてに精通していて、りんごについてのどんな質問にも答えてくれます。まるで「りんご先生」。

そんな高橋さんが13年前に都内から青森に帰郷して、ご実家のりんご農家を継ぎ、さらにこのシードル工房を始めたきっかけ。それは、私の文章でお伝えできれば良いのですが、なんだか滋味深い味が薄まってしまうような、そんな勿体無い気がするほど心に響くお話。
だから、ぜひこの「kimori」の醸造所に出掛けて、りんご畑を眺めながら、高橋さんご本人から聞いていただきたい。きっと快く答えてくれます。そしてお話を聞いたその後は、いつものりんごの味がちょっと変わっちゃうはずです。

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現在、弘前のりんご農家さんは約5600軒。その中で後継者がいる農家さんはそのうちの2割だそう。きっと日本のどこの地方も様々な問題を抱えていて、こうしようか? どうしようか? と考えている今。でも、まずは出掛けて、知ることから始めてもよくて、そしてその入口がこんなにもオープンで、美しいのなら、その先はきっと明るいだろうと思うのは楽観的過ぎかな。

定番のシードルはドライとスイートの2種類あり、私がこの日買って帰って早速頂いたのは、黄色いラベルのスイート。「kimori」を立ち上げた若手りんご農家さん達の固く熱い決意とは裏腹に(?)、とろけるほど優美な甘みと香りのシードルなのでありました。
りんご最高!

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photo:船橋陽馬

 

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弘前シードル工房 kimori(キモリ)

MAP:
青森県弘前市清水富田寺沢52-3 弘前市りんご公園内
TEL:0172-88-8936
9:00~17:00
無休
http://www.kimori-cidre.com/

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