蜜蝋仕上げのやさしい質感。「cogu(コグ)」の木の器とカトラリー
~cotogoto(コトゴト)より vol.20~
思い返してみれば、無垢とか蜜蝋やオイル仕上げの木の器やカトラリーって、それまでは使ったことがなかったんです。
ウレタン仕上げの木製ボウルや漆器のお椀などは、幼い頃から身近にありましたが、「cogu」の蜜蝋仕上げが施された木の器とカトラリーを使いはじめて、今までの暮らしの中にはなかった感覚に、ハッとしました。
確実に違うのです。陶磁器・ガラスとはもちろん、ウレタン仕上げの木の器とも、漆塗りの器とも。なんと表現したらいいのか。とても“柔らかい”んです。
触っただけではわかりにくいのですが、使うとわかります。「cogu」の木の器に金属のカトラリーがあたれば、わずかにカトラリーが沈み込むような感覚。「cogu」の木のカトラリーを使って陶器の器に入った食べ物をすくえば、いつもの金属製のカトラリーなら、カチンという冷たい音を立てて器と触れ合うところが、静かでやさしい、ふわりとした感覚。
「大きいスプーン」は、毎朝使っています。私は朝ご飯にヨーグルトを食べるのですが、この木のスプーンに慣れてしまってからは、金属のスプーンが使えなくなりました。起き抜けのヤワな感覚の中で、金属のカトラリーは強すぎる感じがするのです。
思うのですが、お箸は木製のものが多いのに、スプーンやフォークは金属のものばかりなのはどうしてなんでしょうね。お箸に慣れている私たち日本人にとって、きっとカトラリーも木のほうが馴染むんじゃないかと思うのです。
そして、器はカク皿の大を使っているのですが、これがなんとも料理映えすること! 四角形なので、料理を盛りつけたときに自然と余白が生まれることもあってか、何てことないパスタもおかずも、なんだかすごくカッコよく、オシャレに、なにより美味しそうに見えるんです。
カトラリーにしても器にしても、特に好きなのは「cogu」の作り手・中島さんのつけた「手の跡」です。ひとつひとつ小さな刀を使って器やカトラリーを掘り出していく作業を、以前、間近で見せてもらいました。
中島さんは、元は内装家具の職人さんだったそうです。木の特性を知り尽くした職人が小さな小刀を使ってひとつひとつ、時間をかけて丁寧に削り出した、小さな道具。ひとつとして同じ彫り跡のない凹凸は、見れば見るほど愛おしく感じるのです。
もうひとつ、好きなことがあります。お手入れです。
無垢や蜜蝋やオイルで仕上げた木工製品は、使って洗うを繰り返すと、表面が乾き、白っぽくなってしまいます。ですので、定期的にお手入れをしてあげることが必要なのです。
基本的に面倒くさがりの私ですが、木の道具のお手入れだけは、なんだか好きなんです。時間がない時は、えごま油をうすーく塗ります。少し時間があるときは、くるみの油を塗るんです。くるみ油は、「cogu」さんに教えてもらったやり方なのですが、くるみの実を薄い布で包み、金づちなどで叩くと、くるみの油が出てきます。その油を木の表面に塗り込みます。するとそれまではすっかり乾いていた表面に、しっとりと上品な艶がよみがえってくるのです。
しょっちゅうやるわけではありません。1ヶ月に1回やるかやらないかくらいでしょうか。毎日使って、毎日洗い、乾いて、表面がカサカサになったら、また時間をかけて丁寧にお手入れをする。それをひたすら繰り返す、日常の中のルーティンワーク。でも、その一連の流れを踏むことで、何かがリセットされるというか、バタバタと忙しい日常に句読点を打つような、そんな感覚があるのです。たくさんの「、」を打ちながら、歩んでいく日常。
何十年も経てば、器の色は黒ずみ、表面の手跡の凹凸も減っていくに違いありません。けれど繰り返しの日々が積み重なったその姿は、ひどく愛おしいものになっていくのではないかと思うのです。
ひとつお知らせです。
来月の9月10日(土)と11日(日)、「cotogoto」にて「coguの小さな道具の販売会とワークショップ」を行います。北海道より中島さんにお越しいただき、一緒に木のスプーンを作るワークショップです。
人気がありすぎてすぐに完売してしまい、なかなか店頭に並べることのできない「cogu」の商品もわずかではありますが、並びます。よろしければ、ぜひお越しくださいね。詳しくはこちらから。
木の器(cogu)
マル皿:4,600円~(税抜)
カク皿:5,300円~(税抜)
オーバル皿:3,500円~(税抜)
木のカトラリー(cogu)
大きいスプーン・大きいフォーク:各2,800円(税抜)
ミニスプーン・ミニフォーク:各1,800円(税抜)
大きい丸スプーン:2,800円(税抜)
コーヒーメジャー:3,000円(税抜)
「cogu」の工房を訪ねたときの様子はこちらにまとめています。ぜひご覧になってください。
炊事や洗濯、掃除といった家事の道具が並ぶお店。日本の素材を使い、四季のある風土や暮らしの中で使いやすいよう丁寧に作られたアイテムをラインナップ。「今日のひとしな」のコラム執筆は、店主の涌井玲子さん。
東京都杉並区高円寺南4-27-17-2F
TEL:03-3318-0313
11:00~20:00 無休
http://www.cotogoto.jp
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